表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/41

第13話 原点(前) 取り残される焦燥

仲間が成長していく中で、ただ一人焦りを抱えるタイチ。

その胸の奥で、何かが静かに軋みはじめるーー。



---



新緑の風がグラウンドを抜ける頃、練習試合が目前に迫ったことで、

チーム全体の空気は一段と熱を帯びていた。


ユーリはつい先日、センターから正式にセカンドへと転向コンバートされた。

その発表に一番喜んでいたのはーー多分、ショート先輩だ。



最初こそ「一年がいきなりレギュラーなんて」と反対の声もあった。

だが、先輩とユーリが見せた実戦さながらの連携プレーに、誰も何も言えなくなった。



三輪も負けてはいない。体格はさらに厚みを増し、守備も打撃も見違えるほどだ。

主将に褒められた時なんてーー


「三輪、最近動きがいいね」



「……本当ですか? じゃあご褒美に、今夜ご飯二倍で」



「いや、そういう意味じゃない!」


食堂が笑いに包まれた。

そんな仲間たちの成長が、誇らしい。


だけど、焦りもあった。

オレだけ、取り残されていく。



風が止まったような、そんな感覚でいた。



毎日遅くまで投げ込み、走り込み、変化球の練習にも挑戦している。

球速も上げたい。


だけど焦るあまり、どこか噛み合っていない。

身につかない感覚だけが、指先に残る。



「……くそっ」



オレは帽子のつばをぎゅっと握った。

じいちゃん譲りの癖。

昔から、悔しいときはいつもこうだった。


このままじゃ、練習試合のメンバーに選ばれない。

心の中で警鐘が鳴りっぱなしだった。







仲間の輝きと、自分だけが足踏みしているような感覚。

その痛みこそ、タイチの“再起”の第一歩。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ