第12話 タイチユーリの正体を知る!!②
教室の大混乱を抜けた先は、静かな校舎裏。
けれど、そこで待っていたのは“軽口”ではなく――“本気の誘い”。
そして、ユーリの隠された一面が明かされる。
「に、二遊間……? それってショートとセカンドのコンビ!?」
オレは教科書を落とし、ユーリは完全フリーズ。
結局、騒ぎを避けて人気のない校舎裏へ移動した。
「女子に呼び出されるときって、だいたいこんな雰囲気なんだよね〜。ワクワクするよ」
ショート先輩は長い髪をくるくる。
……この人、ほんと天然タラシだ。
「先輩、からかわないでください! セカンドはもう――」
「いや、正式なセカンドはいないんだ」
声のトーンが変わった。
その瞬間、風が止まるような気がした。
「紅白戦で見てたんだ。君の守備、速かったよ。
外野の反応もセカンドの感覚もある。……君、いろんなポジションできるだろ?」
ドキリ。ユーリの肩が震えた。
「ユーティリティプレイヤー。――君はそれだよね?」
「え!?」「え!?」オレとヒロの声がハモる。
「なあタイチ、“ユーティリティ”って何?」
「複数ポジションをこなせる選手のことだ。……って、ユーリ!?」
「ご、ごめんよタイチー!! 家の事情でいろんなポジションやらされてて……でも捕手は無理だったんだぁ!!」
しおれたメンダコみたいに落ち込むユーリ。
怒る気も失せる。
「セカンドなんて、一番難しいポジションなんだよぉ!」
「そうなんだよ〜♡詳しいね、ユーリ君」
ショート先輩は微笑み、髪をくるくる。
その仕草ひとつで、空気が柔らかくなる。
「……ならこうしようか。君が俺に勝てたら誘わない。それでいい?」
「分かった!!」
即答。
だが隣から「カサリ」と袋の音。
「……ユーリ、勝負の内容を聞いてないのにいいの?」
三輪がプロテインバーをもぐもぐ。
「お、おい三輪! 真面目に言えよ!」
「真面目だよ? ……これチョコ味うまい」
「食うな、今!!」
「糖分、大事だろ」
「正論で返すな!!」
ヒロはマイペース。
でもその空気が、ちょっとだけ救いだった。
――あとがき――
笑いの中にも、確かに“本気”があった。
ショート先輩の言葉に隠された想い――それはチームを一つにする種火。
次回、ついに二遊間勝負が始まる!