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第8話 紅白戦② 拝啓、じいちゃん

初めてのマウンド。

憧れのキャッチャーと、夢のような舞台。

けれど、心の中ではーーずっと天国のじいちゃんに語りかけていた。







拝啓、じいちゃん。


天国から見えてますか?


オレはいま、高校のグラウンドでーー

人生で初めて、マウンドに立ってます。


白い息が空へ昇っていく。

春なのに、指先は冷たくて。

でも、胸の奥は燃えるみたいに熱い。



そしてキャッチャーは、ずっと「いつか捕ってもらいたい」と思ってた人。

煌桜学園野球部の主将ーー天王寺ヒカル先輩です。




まさか、こんなに早くその日が来るなんて。


……いや、早すぎるだろ!



理由は単純。

一年生チームに、キャッチャーがいないから。



だから紅白戦のあいだだけ、ヒカル先輩がオレのボールを受けてくれることになったんだ。


夢みたいな話だろ?



オレの心臓はもう、ドラムみたいに鳴ってる。


バクン、バクン、って。


鼓動の音で、風の音が聞こえなくなるくらいに。






「構えてるぞ、タイチ君」





マスク越しのヒカル先輩が、わずかに頷いた。


たったそれだけの仕草なのに、空気が変わる。


世界が、静かになる。


土の匂い。グラウンドのざらつき。


すべてが、たったひとつの“投げる場所”に収束していく。




オレは帽子のつばを握りしめた。

じいちゃんがよくやってた、あの仕草を。



(……見ててくれ。じいちゃん)





風が吹く。


ボールが手から離れた瞬間、


世界が一瞬、光った気がした。








タイチの最初の投球は、誰かに見せるためじゃなく、

“届けたい人”に向けたものだった。

それが、彼の野球の原点。

そしてこの一球が、彼に“風を掴む感覚”を教えてくれる。


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