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「◎すいたい」衰退しちゃった高校野球。堕ちた名門野球部を甲子園まで  作者: 末次 緋夏
紅白戦編

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第8話 紅白戦 挑め先輩に①

紅白戦、開幕。

一年生・タイチはチームの先頭バッターとして、

地区準優勝チームのエース・リュウジ先輩と初対峙する。

それは、恐れと憧れのはざまで始まる“風の物語”の第一歩だった。



 久しぶりのバッターボックス。

 スパイクで踏みしめた土が、ずしりと足の裏に重たく伝わってくる。


 心臓がーードクン。

 息を吸うたびに、胸の奥が熱く膨らんでいく。


 マウンドには、地区準優勝チームのエースーー土門リュウジ先輩。

 その背中は太陽を遮るように大きく、どこまでも揺るぎなかった。


 キャッチャーミットを構えるのは、主将・天王寺ヒカル先輩。

 ゆるぎのない姿勢、獲物を狙うような眼差し。

 まるでプロの試合を見ているみたいな圧力が、グラウンド全体を包み込んでいた。


(……これが、“本物”の投手と捕手の迫力か)





 リュウジ先輩の右腕がしなやかにしなり、

 ボールが空気を切り裂く。


 ーーズバァンッ!!


 耳を裂く音。

 気づけば、ミットが鳴ったあとだった。


 目で追うことすらできない。

 視界に残ったのは、白い線の残像だけ。


 そして三球目――

 風を切るような軌道が、オレのバットを空振りのまま通り抜けた。


「ストライク、スリー!」


 三振。



「……はやっ」


 つい、声が漏れた。

 バットを下ろしたまま、オレは立ち尽くしていた。


 でもーー負けた気はしなかった。

 悔しさよりも先に、胸の奥で何かが“点いた”。


「やっぱ、すごい……」


 外から眺めるリュウジ先輩の投球は、一球ごとに“気迫”と“技術”が混ざり合っていた。

 そして何よりーーそのボールを正確に受け止めるヒカル先輩の捕球が、美しかった。


 投げる者と、受ける者。

 言葉はいらない。

 二人の間には、確かに“野球”が流れていた。


(……いつか、オレの球も、あの人に捕ってもらいたい)


 その想いが胸の奥で静かに芽を出した、その瞬間ーー



「一年生チーム、キャッチャーがいないらしい」


「じゃあ、僕が受けよう」


 軽く言いながら、ヒカル先輩が立ち上がった。

 その声だけで、ざわめいていたグラウンドがぴたりと静まる。



「え……ヒカル先輩が、オレの球を!?」



 胸の鼓動が跳ねる。

 まるで夢みたいなチャンスが、いきなり目の前に落ちてきた。



 マウンドに立つオレの足元で、土がきしむ。

 心臓の音が、リズムを刻むみたいに鳴っている。

 視線の先ーーキャッチャーマスク越しのヒカル先輩が、

 静かに手を構えた。


「……さあ、見せてもらおうか。タイチ君の“風”を」


 その言葉が、空気を震わせた。


 息を呑む。


 指先が熱い。


 掌の中のボールが、まるで生きているみたいに脈打っている。


(……見せてやる。オレの全力を)


 風が吹き抜けた。

 グラウンドの砂が舞い上がり、空へと弧を描く。


 この瞬間、オレの高校野球がーー本当にはじまった。





三振で終わった打席。

でも、タイチにとってそれは「始まりの三振」だった。

誰かに打ち砕かれることで、初めて見える景色がある。

そしてその先で出会う“本物”の仲間たちが、

彼に本当の風を見せてくれる。



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― 新着の感想 ―
10話まで読ませていただきました! 読みやすくて、リズムも良く、それぞれのキャラも想いもきちんと組み立てられていると感じました。 野球には詳しくありませんが、純粋に楽しく読むことが出来ました! 評価も…
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