カレーパンのおまけ
玉ねぎは、しっかりあめ色になるまで炒めたし、肉におじゃがににんじんも、ちゃんと炒めた。
「じゃー煮込むか!」
鍋に水を入れ、強火にかける。その間に、リンゴを上からすり下ろす。
「林檎って、このタイミングで入れるんだねぇ」
興味深そうに見ていた紺さんが、感心したように言う。
「林檎なんていつ入れてもいいんじゃ?」
瑠璃ちゃんが横から顔を出す。
「ちっちっち。あんな、ウチが今まで何十回とカレーを作って、その度にリンゴを入れてきた結果!こ のタイミングが一番美味しくできるんやって分かったんや!」
「へぇー。何でこのタイミング?」
「何故です?」
紺さんと瑠璃ちゃんが同じように聞いてくる。
「なんか、このタイミングやとリンゴの甘いのとか酸っぱいのが馴染む気がすんねん……知らんけど」
「出た。バリバリ関西圏のノリ」
紺さんが笑いながら言う。自分も関西人やないかーい!というのは置いておいて、確かによく知らん。ずっと作り続けていて、このタイミングが一番いいという事に気が付いたんや。スマホで調べればすぐ分かるんやろうけど、それは性に合わへん。
「美味しいからええねん! ウチのカレーは、奥様のお墨付きやでっ」
ビシッと奥様を指差すと、楽しそうに笑ってくれた。
「そうよ、くるみんのカレーは絶品ですからね。甘口で優しい味がするのよ」
「まぁ、確かに美味しいね」
「はい。胡桃さんのカレーはメチャウマです」
二人からもそう言ってもらえて、にんまり顔が緩む。
「そうそう、くるみん。いつも通り、うるちゃんにはパン生地を多めに作ってもらうよう言ってますからね。弟さんや妹さんの分も作っちゃいなさいな」
「すみません、いつもありがとうございます!」
奥様の心遣いに、胸があつぅなる。こんな女性になりたいもんや……。
「じゃあ私の分も……」
「あ、うちもお願いします」
「めっちゃ便乗してくるやんっ!」
うちに帰っても騒々しいけど、バ先でもこんなに騒々しいなんて。ウチはいつになったら「しゅくじょ」になれるんやろか。
……でも毎日めっちゃ楽しいから、まぁええか!
ほなっ、開店準備、始めるでー!