中編
ピンポーン
「はーいあら、亮介君じゃない今日は鏡花と遊んでくれてありがとう。鏡花の姿が見えないけど、どうしたの?」
「はぐれてから見つかりませんでした」彼女の母親はその場で動かなくなってしまった。いや、母親が動かなくなったというよりこの場だけ時間が止まってしまったようだった。
その後警察への疾走届けやらなんやらかんやら大忙しになってしまった。翌日親と一緒に再度謝罪に行ったことは言うまでもないだろう。
1日目
この日は朝から晩まで警察の人と鏡花が居なくなった時のことを話した。
「だから電車が通り過ぎたら居なくなっていたんだって探してもどこにもいないし名前を呼んでも返事もないし全く分からないんだって」
「そうは言ってもその場には君しか居なかったんだから疑われてもしょうが無いでしょ?」何回このやり取りをしたのか分からないがその日は家に帰してくれた
(それにしてもどこにいてのだろうか?明日友達を呼んで一緒に探すとするか)
帰り道にそんなことを思っていたら前のほうをこの間見たおばあさんのような後姿が見えた。
あっ俺は急いで駆け付けたがすでにおばさんはいなくなっていた。この間も同じようなことがあったな。
家に着くころにはすっかり日も落ちてしまった。
2日目
この日は自分達も探すため友達を呼んだ。
「もしもし涼介だけど岡田今暇?」
「ちょうど暇だけどどしたん?」
今までに起こったことを岡田は興味ぶかそうに聞いている。岡田はオカルト麻雀登山部に所属しているという事で誘ってみたが結構食いついている。
「それじゃあ午後から俺の家で探すための作戦会議な」彼は二つ返事で応えて電話を切った。
昼飯を食べ終わった1時ごろ岡田は黒いボウシを被った情報屋と一緒に家にやってきた。
「人探しって言ったらコイツは外せないと思って連れてきたわ」
「そういうのは先に言っとけよ、まぁいいや先に俺の部屋に行って待っといて」「ヘイヘイ」
サプライズみたいな感じに連れてくるのは岡田の悪い所だ。にしても情報屋が動くなんて珍しいな。
「さて、これから鏡花を探すためにどうするか考えるかそういえば情報屋さんにはまだ言ってなかったな」「大丈夫、岡田から話しは聞いているそれよりなぜ俺が今回手伝うか気になっているんだろ?理由は簡単だ鏡花には借りがあるからなそれを返すという感じだ」
分からないことがない、神出鬼没などと色んなことを言われている情報屋に借りを作る鏡花は一体何をしたか分からないが飛んでもない奴だな。
「一応わかっているようだしどこから探す?」二人は持ってきたジュースを飲みながら顔を見合わせた。
「どこも何もいなくなったところから探すのが当たり前だろ?」岡田が不思議そうな貌をしていった。
「実際いなくなった日は周りを探しいただけなんだろう?なら近くの家の人にも聞いてみればいいじゃないか」確かに岡田や情報屋が言う通なのだが、俺は誰も知らないのではないかという俺の勘がいっているから他の探し方いいと思っているのは内緒だ。
「それじゃあ、そろそろ日も暮れてきたことだし明日から探しとするか」彼らに明日の朝に駅前に集合する約束をしてその日は解散とした。
3日目
今日は朝から鏡花がいなくなった日の道順をたどりながら駅に向かった。
夏の朝ということもあり汗が止まらない。暑い、暑いこんな思いをしているのかと思うとあの日の罪悪感が胸からこみあげてくる。熱中症になってないといいんだが。
駅前に着くころにはすっかり太陽も登り切っていた。
二人が先にアイスを食べながら待っていた。
「ごめん遅かった?」自分が遅くなったと思い謝罪する。がどうやら二人は俺を待っている間に見知らぬおばさんの手伝いをしたお礼に貰ったそうだ。
「悪いな俺たちだけで」岡田はニヤニヤしながら俺を見て言った。
そうこうしているうちに電車が来た。今日は休日の朝なのでいつもよりごみごみせずに行くことができた。
鏡花がいなくなった日の道順を負いながら二人で探し回った。やはり鏡花はいない。
「ホントにこの道でいなくなったのか?もっとほかのとこによったりしてそこで待っているんじゃないか?」
「そんなこと言っても今向かっている踏切のとこでいなくなったしそれにこれまで言ったとこ以外どこも行ってないし」
確かに他のところで鏡花が待っている可能性もあるが二人で行った場所で分かりやすいとこなんてあまりなかったから…
「俺のところも収穫なしだ」
「いつの間に!」俺と岡田とは別に情報屋には近くの家や店に寄ってもらい目撃情報を探してもらっていた。
どうしたもんか三人で悩みながら電車が通り過ぎるのを待っていた。
カンカンカン、踏切の音があの時のことを思い出させる。
電車が通り過ぎ向こう側に渡ろうとしたとき後ろから聞いたことのある声が聞こえた。
「そこの人達少しいいかねぇ」
ふと後ろを見たらあの時のおばあさんが立っていた。
「あの時の…」
「お、朝アイスくれたばあちゃんじゃんどうしたの?」疲れが飛んだような声で岡田が言った。
「おぬしたち何か探しているんだろう?それならワシ知ってるぞ」
この言葉で俺は泣きたくなった。
「その前に、もうそろそろ日も暮れてきたから今日はもう帰ってまた明日ここに来な」
「ここって言ってもこんな踏切で待つなんて俺は嫌だぞ」
岡田はおばあさんに向かって言う。それが正しい判断だ。
しかし、この時の俺はどうかしていたのだろう。
「明日じゃなくて今教えてくれ!」
「さすがにそれはばあさんに失礼だろう」情報屋が止めるように言う。
「そんなに知りたいなら家に来るか?来たら話してやってもいいぞ、なんせ今は人がいないから泊まることはできるからな」
「本当にお前の家に行ったら教えてくれるんだろうなだったら行く」
「ああ、約束するともウソは嫌いだからねヒッヒッヒ」
岡田と情報屋も俺だけでは不安というので三人で泊まりに行くことにした。
踏切から海とは反対の坂に向かって行った。日も落ちてあたりが暗くなり始めた。ばあさんにまだか、まだかと聞いてもまだまだと返ってくるだけで今どこにいるのかもわからなくなっていた。
「なあ、やっぱりやめておこうぜ」一向にばあさんの家につかないので岡田が不安になり始めた。
「情報屋あとどれくらいで着く?」
「このままだと着かないかな」
「!なぜわかる!」
その言葉におばあさんがこちらに振り向く。
「周りが暗くて少し霧が出てわかりにくいがここをさっきから同じところを回っているだろ?岡田は何で気づかないんだよあんた仮にもオカルト麻雀登山部だろ」情報屋があきれたように言う。
「ふん、合格だよ。これはあんたらが迷子にならないかのね。じゃあホントの帰路に行くとするかね」
言っていることが分からない。なぜそんなことしなくてはいけないのか。なぜ鏡花がいなくなった日に出会いそして消えたのか。なぜだ?
「着いたよ」
おばあさんが言うと目の前には少し古めの日本家屋が立っていた。
「さて、お腹もすいていることだろう。中に入ったらご飯の準備を手伝っておくれ。ちなみに今日はハンバーグだよ」
岡「よっしゃー!楽しみだな亮、情報屋!」
二人「そうだな」
浮かれている岡田を先に行かせ俺は親に連絡を入れた。
―――
「さて、できたよ。ご飯のお替りはあるよ」ハンバーグのいいにおいと畳のにおいが部屋の中に広がる。
三人は目を疑った。そこにはハンバーグというにはデカすぎる肉の塊があった。半分に割ると肉汁がジュワリと出てきた。肉だけではない添えられているタマネギはしっかりとあめ色になり肉の汁とデミグラスソースを吸っている。三人は我を忘れて肉にがめつくのだった。
それからほどなくして食事を終えた三人はおばあさんの話を聞くのであった。
「さて、そろそろお腹が落ち着いたころかな?簡単に言うと君たちが探していると言った女の子はこの世界にはいないよ。」
おばあさんの衝撃的な言葉で俺は一瞬頭が真っ白になってしまった。あとから二人に聞いたが魂が抜けたように顔色も悪かったらしい。
「い、いなくなったて言ってもあいつはそんな簡単に誰かに連れていかれるような奴じゃない。それに、俺は直前まで一緒にいたんだぞそんな短時間でいなくなったなんて考えられない」
「でも実際にはいなくなっただろ?」おばあさんが俺の顔を覗き込みながら言った。
確かに、あいつはいなくなった。だから今三人で探しているんだ。
「まあちょっと言い方が悪かったか。簡単に言うと生きているこの世界じゃないところでな。いなくなった場所になんか落ちていなかったか?」
ばあさんのその言葉に鏡花がいなくなった場所に彼女の手鏡画が落ちていることを思い出した。
「これが落ちていた」俺は、鏡花と会った時のために持っていた手鏡をおばあさんに見せた。
おばあさんは、鏡花の手鏡をじっくりと見まわして叫んだ。
「おい、起きろ何寝た振りしてんだ。起きないと叩き割るぞ!」
鬼の形相になったおばあさんは、手鏡を振り回した。
「おいやめろ。酔う。気持ち悪くなるやめてくれ頼む。もう無理。ホント無理」どこからか、少し甲高い声が聞こえる。俺たちが、周りを見渡しているとおばあさんが片手で手鏡を指さしている。
おばあさんが、手鏡を振りやめる。「おいマジでやめてくれ。う、気持ち悪い」
「あんたがさっさと出てこないのが悪いだぞ。ほら、自己紹介しな」おばあさんが手鏡をこちらに向けた。「どうも、雲外鏡です。この度はどうもすいませんでした。」
俺たちは、狐につままれた見たいな顔になった。
どういうことかと不思議と驚きをシャトルランしていると岡田がやれやれと言わんばかりの顔で説明しだした。
「雲外鏡っていうのはな、魔物の正体を暴く伝説の鏡と言われたり鏡の妖怪って言われているものだぞ。でも、なんでこんな奴が鏡花の手鏡に住み着いてんだ?付喪神って考えてもそんなに長く使ってないはずだからおかしいと思うし。」さすがオカルト麻雀登山部と言っておくべきだろう。
「どうも俺の紹介ありがとうね。けど、君が言った説明は少し足りない。まず俺の能力は三つある。
一つ目は、物の鑑定だ。さっき彼が言ったように正体を暴くってのがこれだな。
二つ目は、物の転送だ。これは鏡を使って物と物を移動させることができるっていうやつだ。
三つ目は、鏡の世界に転送することだ今回の場合はこれだな、ということで説明していきたいと思います。」流ちょうに手鏡がしゃべりだす。最初の謝罪が嘘のように明るいが、この後締め上げるのは俺の中で決まっていた。
「簡単に言うと俺がこのばあさんとお前たちが探している奴を間違えて飛ばしちまったんだ。このあたりではいつも俺とこのばあさんで踏切を渡った瞬間神隠しをして近隣の人たちを驚かせていたんだ。それをこの間俺が寝ぼけていて、ばあさんを飛ばしたと思ったら電車の窓に俺が移ってしまって慌てて逃げ込んでばあさんを飛ばしたつもりがこの手鏡の持ち主を飛ばしてしたまったということさ。すぐに、戻そうとしたんだがその時にはもうお嬢ちゃんがいなくなってしまっていてどうしようもなくなっちまたんだ」
だからこの手鏡が落ちていたのかと納得した。なんてくだらないことで彼女が巻き込まれてしまったと考えると怒りたくなったが隣で岡田が目を光らして聞き入っているのを見たらそんな気持ちも薄くなってしまった。
「お前らこの嬢ちゃんを助けたいんだろ?悪いんだがお前らを死なせたくない。お前らドッペルゲンガーって聞いたことあるか?見たら死ぬってやつ」俺と岡田は首を縦に振る。それを確認して運外鏡は続きを話す。
「嬢ちゃんがいる世界はここと違ってちと特殊でな。まず、気をつけなくちゃいけないことがある。
詳しいことは、あっちの世界にいる俺が話すと思うから俺からは三つだけ話すわ。一つ目はさっき聞いたドッペルゲンガーだ。あっちの世界から見るとお前らがドッペルゲンガーていうことになるから自分を見つけたらすぐに離れるか目をそらせそうしないと理性が飛んで消えることになるぞ。
二つ目は、階級だ。。ダイヤモンド>水晶>鏡>水>ガラスっていう風に分かれている。これは身に着けている物で判断ができるから気を付けていれば大丈夫だ。くれぐれも水晶以上にはかかわるなよ。
最後に三つ目だ、これから渡す鏡はお前らの階級ってことになる。それに加えあっちでは能力がある。簡単に言うと反射能力だ、水晶以上になってくると概念を曲げてくるから気をつけろよ。さて、そろそろ夜も更けてきているから寝るか。」運外鏡は言いたいことを言って眠ってしまった。
果たして鏡花は無事なのだろうか、岡田はばあさんと何か喋っているが俺も眠くなってきたので情報屋の隣の布団にもぐりこんだ。