ダンジョンを内見しよう!
「今、暮らす場所に何の不満もないというなら あなたは天国にいるのだ。」
風が気持ちいい…
広く見通しの良い草原が広がっている。
村からも近い、少し離れたところに その『ダンジョン』はあった。
◆ダンジョン‥‥古来は「主君の塔」という意味だったが
それがやがて牢獄として利用されるようになり
「地下牢」を意味するようにもなった。
しかし、近代では書物の創作の中で「迷宮」として定義されるようになり
それが一般の世界にも広まっていった。
何をもって、『ダンジョン』とするか
それはまだ学者たちの間でも、諸説入り乱れるところである。
このダンジョンはそういった意味では、迷宮ではないかもしれない
入り口は遺跡のようで、地下に降りていくタイプ
最もオーソドックスだ
この地域では珍しくない造りの遺物。
遥か昔から存在しているので、既に冒険者たち、あるいは勇者様一行、あるいは盗賊に
探索し尽くされている。
あったであろう財宝や、備品は全て盗掘された後
ダンジョンの最奥に、ボスと呼ばれるようなモンスターも魔物もいない
近隣にいた魔物が、定期的に住み着く程度だろう
この辺りの魔物は、子供でも倒せるレベルしかいない。
「どうでしょう?安全面では申し分ないですよ~~? 中の魔物の討伐もして頂ければ、お家賃割引きのサービスも受けれます! 何せ、国に認可された認定初心者ダンジョンですから!!
何なら、ダンジョンの権利ごと購入もオススメですね~!サービスしときますよぉ」
ダンジョン不動産の、ボクの担当者さんが雄弁に説明をしてくれる。
確かに良物件だ、値段も申し分ない、ダンジョン周辺の治安も良い
しかし…
「なんなら 宝箱に薬草とか棒切れでも入れておけば、冒険者に喜ばれ入場料も取れるかも!
あっ!その場合は、7割は我々の取り分になりますが~」
商魂たくましいなぁ
まあ、この世界を生き抜くには このくらいの力強さが必要か…。
「ささっ!少し、カビ臭いですが、それもダンジョンの味ですからな~
まあ、掃除とかはお好みで存分にしちゃっても構いませんよ!
モダンダンジョンはオシャレで清潔なのも人気ですからな~」
「はぁ…」
ボクは、やはり昔ながらのダンジョンが好みだ
薄暗く、ミステリアス
やはり”秘密基地”の要素が無いと住みたいと思えない。
ん?
ボクは壁に描かれた古代文字が気になった
これは…
ふんふん、なるほど
あっ、あー そういうことかー
うーむ………
少々面倒な事になったかもしれない