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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 色彩能力者と千面道化

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第61話 対策、対策、対策!

 白炎が千面道化とラビィさんを包み込む。

 そして――炎が晴れると千面道化は消え、メイド服のラビィさんだけが立っていた。


 いや、アレはもうラビィさんじゃない。


「へぇ、これが抱魂人造人間(アニマクルス)の体か」


 千面道化は新たな体をまさぐる。

 顔を、胸を、腰を、撫でまわす。その様子をコノハ先生は不機嫌そうに見ていた。

 俺はその手つきを見ながら、あることに気づいた。

 合成陣が手から消えている。

 融合錬成を(おこな)うと合成陣は一度消えるのか……。


「次は君だよ。コノハ=シロガネ!」


 千面道化がコノハ先生に襲い掛かる。

 コノハ先生は格闘術で対抗する。技量は互角……でも身体能力に差があるのか、ジワジワとコノハ先生は追い込まれる。


「ちっ」


「凄いね! 僕の体術に対抗できるんだ! でも」


 コノハ先生は千面道化の拳を両腕のクロスガードで受ける……しかし、衝撃を受け止めきれず、俺の傍まで後ずさった。


「筋力は僕に劣るね」


「ああ。しかしおかしいな。さっきまでのお前の方が、動けているように見えるぞ?」


 千面道化は目を細める。


「おい色バカ。お前の剣を寄越せ」


「……色バカって、俺のことか?」


「お前以外に誰が居る? 早く寄越せ」


 俺は渋々クリスタルエッジをコノハ先生に渡す。

 コノハ先生は右手で剣を持ち、構える。


「アゲハ=シロガネは達人級の剣士だったみたいだけど、君もそうなのかな?」


剣術(コレ)に頼るのは虫唾が走るが、仕方あるまい……貴様に調子に乗られる方が腹が立つ」


 今度はコノハ先生から仕掛ける。

 クリスタルエッジは優秀な剣だと思うが、奴にダメージを与えられるほどの切れ味はない……対抗できるとは思えない。


 コノハ先生の目にもとまらぬ剣戟。素早く、的確に急所を狙う剣捌きだ。手慣れている。

 千面道化は対応できず、肩に斬撃を受けた。


 奴の肩から血が噴き出す。


「やはりな……」


「これは困った」


 千面道化は飛び上がり、一階建ての建物の屋根の上に逃げる。


「ラビィの体は人間の構成物質だけで出来ているわけではない。にも拘わらず、いつも通りの人間相手の融合錬成すれば構成演算はズレる。イメージのズレは錬成物に(ほころ)びを生む。その結果がそれだ」


「錬成劣化……やっちゃったね」


 千面道化の頬に、小さくヒビが入る。


「やっぱりホムンクルス相手に融合錬成はすべきじゃないなぁ。でも、彼女の記憶を抽出できたおかげで君たちのアジトの場所は把握できた」


 そうだ。

 ラビィさんの記憶を奪われたから、ヴィヴィの居場所や防衛の戦力が完全に読まれてしまった。


 これはまずい……!


「じゃあね。本丸を取りに行かせてもらうよ」


「待て!」


「またねイロハ君。今度はもっとゆっくり、落ち着ける場所で話そう」


 千面道化は人間とは思えない速度で去っていく。

 俺は追いかけようとするが、コノハ先生に肩を掴み止められた。


「落ち着けアホが。錬成劣化し弱っているとはいえ、奴の足に追い付くのは不可能だ」


「アイツは〈四季森〉の方に向かった! ヴィヴィを狙う気だ! ラビィさんの姿だから、アラン先生たちも千面道化とわからず奴を迎え入れる可能性がある!」


「ラビィの体が分解した時点で、ラビィの魂は俺のラボにある装置に帰属する。ラビィの魂が帰属した場合、伝令機がアランの元へ飛ぶように設定してある。これらの処置はラビィの意識外で(おこな)った。奴もお前が考えたようにラビィの姿で不意打ちを狙う気だろうが対策はちゃんと講じてある。すでにアランは事態を把握し、迎撃準備に入っているはずだ」


 思ってた以上に、きっちり対策している……。

 ラビィさんが融合錬成を喰らった場合まで、ちゃんと対策していたとはな。


 でもそれらの情報、俺に共有してもよかったのではないでしょうか。


「ここは防衛班に任せる。俺たちは〈四季森〉に包囲網を張るぞ」


「防衛班と探索班で挟み込むわけか。

――フォックス。お前はどうする? 包囲網に参加するか?」


「いんや、俺はいいや。悔しいが、今の俺の実力じゃ足手まといになるな。腹もいてぇし」


「自らの戦力を過大評価せず、身を引ける利口さを持っていたとは感心だ」


「馬鹿にしないでくださいよ。さすがに勝率0%の相手とは戦いませんよ。1%でも勝てる見込みがありゃ飛び込みますけどね~」


 あれだけの死闘をやったあとによくここまで能天気に話せるものだな。コイツはコイツでどっか狂っている感じがする。


 コノハ先生はホムンクルスを集め、それぞれに指示を出す。

 その隙に俺は千面道化の右腕に近づき、傷口に注射器を刺し込んだ。


――血液採取完了。



 ◆◇◆



 同時刻、〈コノハ研究所〉ではアランが動き出していた。

 アランは廊下で招集をかける。


「みんなリビングに集まって! 緊急事態だ!」


 アランの号令でヴィヴィ、フラム、ジョシュアの3人が集まる。


「どうなされたのですか?」


「さっきコノハの伝令機から連絡があった。コノハたちは1番通りで千面道化と交戦。戦闘の過程で千面道化がラビィちゃんと融合し、ラビィちゃんの記憶と姿を奪ってこの本拠地に向かってきている。到着までは約30分と仮定」


「……やべぇ状況じゃねぇか」


「大丈夫。30分もあれば罠を張る時間はあるよ」


「罠ですか……私に一案があります」


 ヴィヴィはフラムの方を向く。


「フラムさん、あなたに作って欲しい物があるの」


「え!? ヴィヴィちゃんが私に、錬金術のお願い!? ななななに! なんでも作るよ!」


「ありがとう。じゃあ……」


 フラムはヴィヴィのお願いを聞いて苦笑いする。


「何に使うの? って、聞くまでもないか~」


「名案だね。僕もヴィヴィさんの意見に賛成だ」


「う~……わかりました。作ります……」


 嫌々ながらフラムは承諾した。

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