第59話 絶対絶命
放課後。
学校の玄関門の所にメイド服を着た女性が立っていた。
「お迎えにあがりました。ご主人様は1番通りの噴水広場にてお待ちです」
ラビィさんに連れられ、その噴水広場に行く。
コノハ先生は噴水広場のベンチに座って、道行く人たちを鋭い視線で見ていた。
「来たか」
ゆったりと立ち上がる。
「お前の役目は目に映る全員を鑑定し、千面道化を見つけ出すことだ」
「わかってますよ」
俺はストレージポーチからクリスタルエッジと虹の筆を出し、背負う。
「ラビィは背後を警戒しろ」
「承知しました」
コノハ先生と共に1番通りを歩く。
「この通りが最も人が多い。ゆえに当然の如く千面道化が居る可能性が高い」
「もし千面道化を見つけたとして、コノハ先生とラビィさんで無力化できるんですか?」
「舐めるな。俺があんな道化に負けるわけがないだろう。あと、勘違いするなよ。俺は奴を無力化する気なんてない。見つけ次第殺し、解剖してやる。奴の体には興味がある」
「……殺すのかよ」
「なんだ、なにか問題あるか?」
「野蛮だなと思いまして」
「善人のフリか。くだらん」
「ご主人様」
ラビィさんが後ろから声を掛けてきた。
「どうした?」
「我々を尾行している人物がいます。どうなさいますか?」
コノハ先生は歩くスピードも表情も一切変えない。
「いつからだ?」
「気配を感じ始めたのはイロハ様と合流してから。確信に変わったのはつい先ほどです」
「拘束しろ」
「……申し訳ありません。たったいま、索敵範囲から脱しました」
コノハ先生は小さく舌打ちする。
「勘の良い相手だな」
「千面道化ですかね」
「可能性は低い。奴がラビィに気取られるほど杜撰な尾行をするとは思えん。コソコソと隠れることだけは得意な奴だからな。ラビィ、次からは俺に確認を取らずに捕えてよし」
「承知しました」
千面道化じゃない。だとしたら誰だって話だけどな。
考えたくはないが、千面道化の仲間とか。俺たちは相手を勝手に単体だと想定しているけど大丈夫だろうか。
気を取り直してすれ違う全員の肌を見る。
中々疲れる……常に首を動かし、周囲を確認しなくちゃいけない。そして一瞬で千面道化か否かを判断しなければならない。
とてつもない集中力を使うな……。
探索を開始して一時間、
「ぐっ!?」
頭痛と眼痛が同時にきた。
「ちっ、もう限界か」
「仕方ないでしょう。コノハ先生が思っている以上に、キツいんですよ、コレ」
「ご主人様、近くに目薬を売っているファクトリーがあります」
「……なんだラビィ、まさかコイツのために目薬を買えと言うのか? この俺が?」
「任務達成のためです」
コノハ先生は大きくため息をして、
「足手まといが……そこのベンチで待っていろ」
道端にあるベンチに腰を落ち着ける。
「ご主人様、私はどちらにつきましょうか?」
「俺について来い。この大通りで融合錬成を仕掛けるほど奴も馬鹿ではない」
「承知しました」
「すみませんラビィさん。目薬お願いします」
「はい」
一瞬だが、ラビィさんが口元を笑わせた気がした。
コノハ先生とラビィさんは目薬が売ってるらしいファクトリーに向かっていく。
俺は1人、ベンチで佇む。
目の上にラビィさんがくれたタオルを置き、上を向く。
「すみません」
と、女性の声が耳に届いた。
タオルをどけ、声の主を見る。
「少し、道を尋ねたいのですか。よろしいですか?」
「っ!!?」
俺は目の前の女性を見て、慌てて立ち上がり、距離を取る。
「……どこまでの道を聞きたいのでしょうか」
俺は剣に手を添える。
「――千面道化殿」
俺が言うと、女――千面道化はにっこりと笑った。
「もちろん、母さんの居場所までの道さ」
俺は勝手に千面道化を男だと思っていたが、そうか、コイツは別に異性に化けることもできる。男か女かは定かではない。って今はそんなことはどうでもいい。
――大ピンチだ。
「やっぱり、やっぱり、君にはわかるんだねっ! やった! やっぱり君だと思ったんだ! 1人目で当たりだよ!」
千面道化は20代前半程の女性の体で、顔を紅潮させる。
「僕が、僕がわかるんだね! 君には僕がわかるんだ! ははっ、嬉しくて涙が出るよ!」
なぜか千面道化は涙を流している。
なんだコイツ……不気味だ。今まで会った人間の中で、圧倒的に不気味で気持ち悪い。
「僕がどんな姿になっても! 僕が何者になっても! 君には僕がわかるんだ! 僕だってわかるんだ! こんなに幸せなことはないよ!!」
「なにを、言ってやがる? 俺はお前の敵だぞ……!」
「敵?」
一瞬だった。
一瞬で俺は距離を詰められ、首に手を掛けられた。
「――っ!!?」
警戒していた。
臨戦態勢だった。
目でその動きは捉えられていても、体はまるで反応できなかった。
「そんな寂しいこと言わないでよ……僕と君はこの世で唯一の仲間だよ。何者にも成れるのに、何者にも認識されない」
千面道化の手の合成陣が、俺に当たる。
あっさりと――詰んだ。
「……僕ね、今凄く悩んでいるんだ……君を殺したくない。でも君と溶け合いたい……! どうしよう、ねぇどうしようか!? イロハ=シロガネ君っ!!」
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