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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
序章 色彩能力者の少年
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第5話 銀髪の乙女

 小屋の中、部屋にあった真っ白な画用紙を広げ、“虹の筆”の実験を開始する。


 まずは多色を出せるかの実験だ。赤と青、黒と白のように同時にいくつかの色を出せるかの実験を始める。


 “虹の筆”を持ち、頭の中で赤と青の二色をイメージし、描く。すると二色同時に出た。次に三色、四色、果てには十二色まで試したが問題なく同時にすべての色が出た。


「“虹の筆”って言うぐらいだから七色までしか出ないと思ったが、そういうわけでもないのか」


 待てよ? 好きに色の配合できるのなら、もっといろいろなことができるんじゃないか?

 言ってしまえば、この世に映る全ての景色は色と色の組み合わせだ。


 ならば……、


「試してみるか……」


 次に文字を頭に浮かべる。簡単に“A”を頭に浮かべ描くと……Aが描けた。


「……いけるな」


 次に絵だ。リンゴの絵を頭に浮かべる。そして筆を横に一度動かす。するとリンゴの下半分だけが描けた。


「下半分だけ……?」


 いや、そういうことか。

 俺はいま、リンゴをそのまま想像して描いた。でもリンゴの大きさを一筆で描くことはできない。

 一筆で描けない物を描く時は部分部分を想像して描けばいけるはず。この場合まずリンゴの下半分をイメージして描く。次に上半分を意識して描く。これを上手く合わせれば……リンゴの出来上がりだ。


 凄い。想像以上の力だ、“虹の筆”!



 『どんな色も出せる』ということは、イコール、『なんでも描ける』ってことじゃないか……!



 断言できる。この筆は、画家にとって最強の筆だ。


「よし、そんじゃ早速……儲けに出るか!」


 それから俺は“虹の筆”を使って仕事を始めた。

 店や家のペンキの塗り替え、似顔絵、看板のイラスト等々、あらゆる絵の仕事を受け付けた。色専門の何でも屋だ。


 一週間が過ぎる頃には注文が殺到した。だがその多量の仕事すべてを簡単に終えることができた。“虹の筆”さえあれば理想の絵がすぐに作れるのだ。


 一か月が過ぎる頃には一年生活できるだけの金が集まった。



 ◇◆◇



 仕事を全て捌き、余裕が出て来た頃。

 俺は一階にある机の上に爺さんの手記を広げた。


「金は出来たし、これからどうするかなぁ」


 “虹の筆”は一旦あの小屋で保管することにした。あの小屋の方がウチよりセキュリティ面で信頼できるからだ。少し最近は目立ち過ぎた。“虹の筆”の異常さに気づき始める奴も居た。あの小屋、爺さんの小屋は扉も、壁も、窓も、なにもかも鋼鉄より硬かった。多分、あの小屋も錬金術で作ったのだろう。使わない時はあそこに置くのが安心だ。


 “虹の筆”は完成した。


 だけどまだ、爺さんの手記には6つの道具のレシピが載っている。


 MENU2“錬絶(れんぜつ)のナイフ”

 MENU3“火竜の丸薬”

 MENU4“フェアリードール”

 MENU5???

 MENU6???

 MENU7???


 MENU2~4は読めるが素材が意味不明。

 MENU5~7はわけわからない文字で書いてあって読むことすらできない。

 この手記にある物、全部作ってみたいけど、どうしたものか……。錬金術師に方法を聞くのが一番だが、あいにく俺に錬金術師の知り合いはいない。


「う~ん」


 こういう錬金術の本場ってどこの国なんだろう。今なら他の国に行けるぐらいの金の余裕はあるし、錬金術を学ぶためならどの国だって行ってやるのに。


「そもそも爺さんはどこで錬金術を習ったんだ……?」


 そうだ、爺さんだって生まれた時から錬金術師だったわけじゃない。

 どこかで錬金術を習ったに違いない。錬金術の学校なんてあってもおかしくはない。

 爺さんの人生を遡っていけばいずれ錬金術に出会えるはずだ。でも爺さんのことを知っている人間なんて……ああ、カフェのオーナーが居たか。今日は暇だし、話ぐらい聞いてみるかな。


 方針を決めたところで、部屋の扉がノックされた。 

 客か? 扉にちゃんと『本日は依頼を受け付けておりません』って張り紙をしておいたのに。


 居留守するか、とも思ったのだが、ノックの音がドンドンドン! と苛立ちを表すように大きくなっていった。相当短気な客らしい。


 仕方ない。

 腰を上げ、扉に向かう。


「はいはーい、いま開けますよ」


 扉を開け、その前に立つ来客者を見た。


 明度の高い銀髪のロングヘアーに鋭く凛々しい紫の瞳。雪よりも瑞々しい白い肌。あまり好きじゃない表現だが『人形みたい』な少女だった。その容姿に裏付けられたであろう自信に溢れた立ち姿をしている。


 白を基調とした学生服のようなモノを着ているし、まだ少女という言葉が似合う外見、多分俺と同じぐらいの歳だろう。

 彼女は品定めするかのように俺を観察した後、口を開いた。


「アゲハ=シロガネという名前を、ご存じかしら?」

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