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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 色彩能力者と千面道化

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第47話 ハウスファクトリー

 月と違って〈アルケー〉の曜日は外の世界と同じだ。

 月・火・水・木・金・土・日。土曜と日曜は授業は休みである。


 今日は土曜日。休日だ。


 待ち合わせ場所である1番通りジャック像(カボチャ校長の銅像)の元へ向かう。

 すでに銅像の前には私服姿のヴィヴィとフラムが待っていた。銅像の前に行きたいが……躊躇(ためら)われる。


 ヴィヴィもフラムも今日はミニスカートで、上半身も薄着だ。ヴィヴィは太ももまであるニーソックスを着用し、露出を抑えているがフラムは生足を晒している。

 周囲の目線が2人に集中し、ナンパ予備軍が大量にできている。どいつもこいつも髪を整え、誰からナンパに行くかアイコンタクトしている。


 ヴィヴィは犯罪者の父を持つため、基本的に〈アルケー〉では嫌われているはずだが……あの見た目だからな。そんな経歴を差し引いても目を引き付ける魅力がある。


 あんなところにこの冴えない男代表の俺が突っ込むのか。せめてジョシュアがいれば迷いなく突っ込めるのだが。ジョシュアが来るまで待とうかな、と考えたところで、


「あ、イロハだ! おーい!」


 フラムに見つかった。

 仕方なく銅像の前に行く。舌打ちの雨が降り注いでくる……。


「おっはよー! 今日も鉄みたいに冷たい眼をしてるねっ!」


「初っ端から酷くないか?」


 どうもこの前の打ち上げの買い物あたりから、フラムが毒舌を隠さなくなってきた気がする。


「おはようございます、団長」


「私より遅く到着するなんて部下失格ね」


「集合時間の10分前だから妥当なタイムだろ。それとお前の部下になったつもりはない」


 そして集合時間より遅れること10分。


「おーっす。お待たせ~」


「もー、遅いよジョシュア!」


「……ジョシュア君、時間は厳守でお願い」


 可愛らしく頬を膨らませて怒るフラムと、冷たく鋭い目つきで怒るヴィヴィ。


「朝は弱くてな~。ヴィヴィ嬢かフラム嬢が起こしに来てくれりゃ、遅刻することもないんだぜ」


「わかったわ。次からはイロハ君に起こし役を担ってもらう」


「オッケー。そん時はフラム、爆弾を貸してくれるか?」


「おいコラ、どんな方法で起こす気だよ!」


 何はともあれ全員が揃ったので不動産屋もとい〈ハウスファクトリー〉に行く。

 〈ハウスファクトリー〉は家具の売買から土地の管理、建設等々多岐に渡って活動するファクトリーだ。その本部は1番通りに大きく陣取っている。〈ハウスファクトリー〉の本部は自分たちの建設技術をアピールするかのような壮大で芸術的な神殿だ。


 〈ハウスファクトリー〉本部の中に入ると、窓口が20個程あった。

 俺達は空いている窓口に行き、用意された椅子に座る。


「いらっしゃいませ。こちらでは土地に関しての相談を(うけたまわ)ります」


 女子生徒が応対する。

 制服のサブカラーが黄色……二年生か。最近知ったが、サブカラーが黒だと四年生、青だと三年生、黄色だと二年生、赤だと一年生らしい。


「私たちのファクトリーで新しく店を出すのですが、どこか都合の良い場所は空いていませんか?」


「そうですね……まず予算はいくらほどですか?」


「予算? 土地を借りるのにお金が必要なのですか?」


「住居と違い、ファクトリーで店を出す場合は月ごとに土地代を回収しています。基本1番通りから順に土地代は高く、番号が大きい通りの土地ほど安くなります。これは通りの番号が大きくなるほど人通りが少なくなるためです」


「1番通りでいくらぐらいですか?」


「月300万ゴルドです」


「300万!?」


 この学校に来た際に配られた金が10万ゴルドだったか。

 最悪赤字になることも考えると、絶対無理だな。


「実際、店を開いたら月にどれぐらい稼げるんだろうね?」


「今の状態じゃちょっと読めないわね。黒字になるかもわからない」


 ヴィヴィの言う通りだ。

 俺たちは経営に関して完全な素人。初っ端から大きく黒字を出せるとは思えない。

 こういう時、普通なら顧問の先生が一時的に金を出してくれたり、ある程度の見積もりを計算してくれると思うのだが……コノハ先生にそれは期待できない。


「そういや、ファクトリーには学校から運営費や研究費が支給されるはずだろ? それはいくらぐらいなんだ?」


 アラン先生の話を聞くに、そこまでの額は期待できないだろうが……、


「アラン先生に聞いたけれど、基本的に支給金はそのファクトリーの成績に依存するそうよ。何の実績もない場合は団員1人につき1万ゴルド」


「4人で4万ゴルドか。全然だな」


「ええ。なんにせよ、月300万ゴルドはリスクが大きすぎるわ」


「でもよ、あまりケチると客が全然いない場所に店を開くことになるぜ。1番通りと9番通りじゃ人の数じゃ10倍近く違うからな」


 ジョシュアの発言は正しい。

 1番通りから9番通りが商業地区なのだが、7番通りから9番通りはあまり活気がない。せめて6番通りが最低ライン。


「5番通りだとどれくらいの値段ですか?」


 ヴィヴィが聞く。


「大体月に100万ゴルドというところでしょうか」


 それでも100万ゴルドか。高いな……。


「ちなみに9番通りだと?」


 俺が聞く。


「25万ゴルドですね」


 9番通りなら金銭的には余裕だな。


「わかりました。一度持ち帰って話し合います。対応ありがとうございました」


 ヴィヴィが会釈する。


「いえいえ、またのご来店をお待ちしております」


 俺よりたった1つしか年上じゃないのに、大人顔負けの応対だな。

 〈ハウスファクトリー〉を出て、近くの喫茶店で会議を開く。


「どうすんだ? 9番通りなら余裕だろうけど、客足は少ない。先は短いぜ」


 ジョシュアが言う。


「欲を言えば1番通りだけど……月300万ゴルドは高すぎるわ。5番通りがギリギリのところね。オーロラフルーツの種が樹に育って、どれぐらいの実ができるかを見てから判断した方がよさそう」


「ヴィヴィの家の庭で育ててるんだったな。あとどれぐらいで実はできそうだ?」


「オーロラフルーツの樹の成長は早い。恐らく実を成すのは花蝶の月50日ぐらい」


 早すぎるだろ。

 まぁ、錬金術師の世界の樹木だ。俺の常識で考えるだけ無駄か。


「そういえば、開店の日ってもう決めてあるの?」


「来月の頭、水魚の月1日に開くつもり」


 それまでに土地を押さえないといけないわけか。

 いや内装や外装を整理する時間も欲しいから、一週間は猶予が欲しいか。例え錬金術でパパッと色々作れるにしてもな。


「今日のところは解散にするわ。それと、この土日で商品案を1人2つずつ考えてきて」


「ファクトリーで出す商品ってことだよな?」


「そうよ。オーロラフルーツ関連の商品だけじゃ品数が少なすぎる。オーロラフルーツは看板商品だけど、その売り上げだけじゃたかが知れてる。なにかプラスアルファが必要よ」


 仰る通り。

 しかしここが難しい所だよな……コノハ先生が言っていたように、食材にせよ雑貨にせよ、すでにそれぞれの分野の専門店があるからな。


「では、ここで解散とします。お疲れ様」


 すっかり団長として仕切り役が板についてきたヴィヴィであった。

【作者からのお願い】

ここまで読んでいただきありがとうございました!

今後の作品の発展のためにも、ページ下部の星を【☆☆☆☆☆】から【★★★★★】にしてくださると嬉しいです。

低評価もきちんと受け入れますので【★☆☆☆☆】でも押してくださると今後の参考になります。

現時点の評価で構わないのでよろしくお願いします。

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