第46話 錬金術師の食堂
08:50~09:00 ホームルーム
09:00~10:30 一時間目
10:40~12:10 二時間目
12:10~12:50 昼休み
12:50~14:20 三時間目
14:20~14:30 ホームルーム
これが1日の日程である。
二時間目が終わり、俺はジョシュアの誘いで別棟にある食堂へ向かった。
「昼休みの間に城下町に降りて飯食ってもいいけどよ、やっぱ学生なら学食を食いてぇよな」
「そうだな。授業のある日にしか開いてないらしいし」
「郊外からも客が来るぐらい凄いらしいぜ、ウチの食堂!」
食堂に着く。建物1つ丸ごと食堂だ。
両開きドアを開き、中に入る。
中は大広間だ。ぱっと見500人以上教師や生徒や一般人は居るものの、まったく狭苦しくない。むしろ席は多く空いている。
驚いたのは大広間のど真ん中にある巨大な錬金窯。
窯の周りにはコック帽を被った大人が3人ほどいる。そのすぐ側には床から生えた50cmほどの鉄柱があり、鉄柱にはマナドラフトが付いている。恐らくあの鉄柱は床の下で錬金窯に繋がっているのだろう。
「食券はこちらでーす」
女性の声が聞こえた。
入口から少し進んだところに受付があった。受付に座っているのは大人の女性だ。女性のすぐ背後には掲示板があり、掲示板には料理メニューが載っている。
「“しょっけん”ってなんですか?」
「料理の引換券です。ここで食べたい料理を言っていただければ、その料理の引換券である食券をお渡します」
なるほど。
食べ物の引換券で食券か。
「見ろよイロハ。結構色んなモンがあるぜ。カレー、焼き鳥、焼き魚。七面鳥とかキャビアとかもある。しかも全部安い」
メニューの中に、見知らぬ単語を発見する。
名は――“ボルケーノシャーク定食”。
「このボルケーノシャークってのはなんだ?」
「ボルケーノシャークと言やマグマを泳ぐ鮫のことだな。マグロより身に脂が乗っていて旨いらしい。熱に強くて熱処理できないから刺身でしか食えないんだ」
「面白いな……じゃあ俺はボルケーノシャーク定食(1000ゴルド)にします。ドリンクは……この宝珠林産フルーツミックスジュース(100ゴルド)でお願いします」
「オレはキングボアの一本肉、オリジナルペッパー添え(1500ゴルド)にするわ。ドリンクはミルクティー(50ゴルド)で」
俺とジョシュアは金と食券を引き換える。
「それでは食券をコックにお渡しください」
錬金窯の前に待機しているコックの元へ行く。
まず俺がコックに食券を渡す。
「ボルケーノシャーク定食とミックスジュースですね。少々お待ちください」
コックの人はマナドラフトに手を当てる。すると錬金窯に搭載された3つの筒の内の1つからシャボン玉が発射され、俺の元へユラユラと落ちてくる。
シャボン玉の中にはトレイと、その上に刺身定食とジュースが乗っている。俺はシャボン玉に手を当て、トレイをキャッチする。
凄いな……米と味噌汁は温かいし、ジュースは冷たい。
多分、あの錬金窯の中に食器も食材も入っていて、錬金術で一気に組み合わせているのだろう。とある程度予想はできるものの、一体どうやって食器と食材を分けて管理しているかとか、そういう細かい構造はわからない。
席を取り、ジョシュアを待つ。ジョシュアは一本の骨に肉塊が付いただけの料理を運んできた。これが一本肉か……栄養バランスとか度外視だな。
「うし、早速食おうぜ」
「ああ。いただきます」
ボルケーノシャークは身が赤く、見た目はマグロの刺身に似ている。
口に運ぶと旨味と脂が一気に口いっぱいに広がった。歯ごたえが強く、噛みちぎるのに時間はかかる。だが噛めば噛むほど旨味がにじみ出る。
「錬金術師はグルメだな」
「錬金術師の料理全部がここまで美味いわけじゃねぇよ。この学校の食堂のレベルがおかしい」
2人で料理を褒めたたえながら食べ進めていく。
食事を終え、教室に戻る。
次は三時間目の授業だ。科目は植物錬金学。
「私が植物錬金学を担当するウツロギ=グリーンペイです」
先生は眼鏡を掛けた40歳ほどの男性だ。ニコニコと優しい雰囲気をしている。
「植物をメインとした錬成物のレシピや植物の種類を覚える暗記の授業と、実際に錬金術を使用する実践の授業を交互にやっていくつもりです。今日はまず暗記の授業です。教科書の10ページ目を開いてください。今日はここに載っている回復薬の調合素材を覚えていきましょう」
コノハ先生と同じく座学だな。
でもコノハ先生と違って威圧感がないため、みな適度にダラダラしながら聞いている。昼食の後ということもあり、気が抜けている。欠伸を噛み殺す音や、外の鳥の鳴き声が聞こえるほど静かな授業だ。
「これが基礎的な回復薬の構成素材です。それでは、今日の授業はここまで」
俺もウトウトとしてきたところで三時間目は終わった。
◇◆◇
「みんな、ちょっといい?」
放課後になり、帰ろうとしたところでヴィヴィに呼び止められた。
ヴィヴィの言うみんなとは〈オーロラファクトリー〉の面々だ。
「明日、時間を作ってもらえないかしら」
「どうしてだ?」
「みんなで不動産屋――〈ハウスファクトリー〉に行きたいの」
フラムが目を輝かせる。
「ファクトリーのみんなで不動産屋ってことは、もしかして!」
ヴィヴィは小さく頷く。
「ええ。〈オーロラファクトリー〉一号店の場所を決めるわよ」
◇◆◇ラタトスク組授業一覧◇◆◇
鉱物錬金学 担任:アラン
植物錬金学 担任:ウツロギ
生物錬金学 担任:?
メモ:この三科目は三大科目と呼ばれている。国語・数学・英語みたいなもの。
鉱物錬金学 ウェポン科(ウェポン学) 担任:?
植物錬金学 ポーション科(ポーション学) 担任:?
生物錬金学 キメラ科(キメラ学) 担任:コノハ
錬金術歴史学 担任:?
空挺飛行訓練 担任:?
戦闘訓練 担任:?
メモ:全九科目




