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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 錬金術師専門学校へようこそ

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第29話 夢とハート

 一階の机に戻る。

 俺が降りた時にはすでにヴィヴィとフラムは居た。なにやら植物系の本を2人で一緒に見て……顔をリンゴのように真っ赤に染めている。


「悪い。遅くなった」


 バタン! とヴィヴィが凄い勢いで本を閉じて、机の下に隠した。


「なに見てたんだよ」


「な、なんでもないわ!」


「気にしないで!」


「……?」


 疑問符を頭に浮かべつつ俺が席につくと、ジョシュアが階段を(くだ)ってきた。


「あー、駄目だ駄目だ。読書は体に合わねぇ~」


 愚痴を言いつつ、ジョシュアは席に座る。


「それじゃ、情報を共有しましょ。まずジョシュア君から」


「わりぃ。収穫なしだ。俺のところは小説とか神話ばっかりだったからな」


「そう。じゃあ次、イロハ君」


「“ハートの実”の入手方法はわかったぞ」


 俺はさっきのフーカの話をそのまま喋る。


「“空挺ダーツ”、聞いたことはあるわ。詳細はまったく知らないけど」


「私は初耳だなぁ」


「“空挺ダーツ”か! 大会とかは出たことないけど、遊びで何度かやったことはあるぜ」


「詳しく教えてくれる?」


「了解」


 視線がジョシュアに集中する。


「“空挺ダーツ”は飛行能力を持つ錬金物に跨って、空中でダーツを撃ち合うスポーツだよ」


「ダーツを撃ち合う!? すげぇ野蛮なゲームだな……」


「いやいや、安全面を考慮してちゃんと鎧は装備するぜ」


「一人で参加できるスポーツなの? だとすれば、ジョシュア君に任せられるんだけど……」


「残念。“空挺ダーツ”は二人一組になって参加するスポーツだよ。それぞれ役割があって、一人は空挺――つまりは飛行能力を持つ錬成物を操作する“コントローラー”。もう一人はダーツ銃っていうダーツを撃ち出せる銃で他の“コントローラー”を狙う“シューター”だ。

 “コントローラー”はダーツボードを背負ってて、“シューター”は弾数6発で出来るだけ高得点を狙ってダーツを“コントローラー”が背負うダーツボードに当てる。得点表は通常のダーツと同じだ。ど真ん中に当てれば50点、20のトリプルに当てれば60点ってな感じでな。“シューター”が決めた得点マイナス“コントローラー”が決められた得点でそのチームの成績が出る。そんで……」


「待った! ちょっと整理させてくれ」


 一気に説明されて処理しきれなかった。

 つまり、まとめると……、


・二人一組で参加するスポーツ。

・二人の内、一人は“コントローラー”、もう一人は“シューター”の役割に別れる。


~~“コントローラー”の役割~~

・ダーツボードを背負う。

・空挺(空飛ぶ錬成物)を動かす。


~~“シューター”の役割~~


・ダーツ銃で他の“コントローラー”が背負うダーツボードを狙う。ダーツ銃に装填されているダーツの数は6。

・得点表は通常のダーツと同じ。


・“シューター”が決めた得点-“コントローラー”が決められた得点が成績になる。


「えっと、じゃあ“シューター”が20のトリプルを決めても、“コントローラー”が20のトリプルを他の奴に決められたら、プラスマイナスゼロになるってことか?」


「そうだ。ちなみに同じポイントに2つ3つとダーツが重なった場合は重なった数だけポイントが分散する。例えば1つのダーツボードのブル(真ん中)に5つダーツが重なったら、50(得点)÷5(ダーツの数)でダーツを撃ったチーム5つに10ポイントずつ入るってわけだ」


「なるほどぉ~! それなら、弱い人が集中狙いされる心配もないね」


 フラムの言う通り、高得点であるブルや20のダブルやトリプルが埋まってるダーツボードは狙いたいとは思わない。うまく当たってもポイントが分散してしまう。


「ルールは理解したわ。それでジョシュア君は“シューター”と“コントローラー”、どっちをやってたの?」


「基本“シューター”だったけど、別に“コントローラー”もできると思うぜ」


「ダーツ銃ってのは使い勝手はどうなんだ? 素人でも扱えそうか?」


「いやぁ、キツイな。俺の空挺である“風神丸”を持ち出すとして、足場はどうしても不安定になるし、相手は飛び回ってるから狙いは定めづらい」


「なら、ジョシュア君には“シューター”をやってもらって、私が“コントローラー”をやるのが一番いいかしらね。空挺の動かし方ならわかるし」


 その布陣が一番安定するだろうが、いま“空挺ダーツ”のルールを聞いたばかりのヴィヴィが入ってるチームじゃ優勝は難しい。

 もっと現実的な策が要る。


「なぁジョシュア。空挺の操縦は短時間じゃ身に付かないモンなのか?」


「いいや、勘の良い奴なら一時間ありゃある程度は動かせるようになるだろうよ」


「それなら“コントローラー”は俺に任せてくれ。策がある」


「聞かせなさい」


 俺は思いついた策を3人に伝える。


「……うっ……ちょっとせこいね」


「しかし、悪くねぇな……これなら“コントローラー”が素人でも十分優勝の目はある」


「そうね。イロハ君の策でいきましょう」


 “シューター”はジョシュア、“コントローラー”は俺に決まった。


「そんで、他の2つの“夢魔草”と“シャインアクア”は誰か手がかりは掴めたのか?」


 ジョシュアが尋ねる。


「“夢魔草”の図鑑はフラムさんが見つけてくれたわ」


「じゃあ見せてくれよ」


 俺がフラムに言うと、


「だ、駄目!」


 と、なぜか強烈に拒否された。また頬を染めている。


「あ、あなたたちが“空挺ダーツ”をやってる間に、私とフラムさんで“夢魔草”を採取する。いいわね? フラムさん」


「う、うん。もちろん、問題ないよ……」


 なぜか詳細を話したがらないヴィヴィとフラム。


「まぁ、手に入れられるんならいいけどよ」


 気にはなるが、追及しても答えてくれる気がしないので諦める。もしかしたら、さっきヴィヴィが隠した本が“夢魔草”が載ってる図鑑だったのかもしれない。


「“シャインアクア”はみんな手がかりなしか?」


 俺が聞くと、ヴィヴィが首を横に振った。


「私の担当階にはなかったわ」


「私も~」


 ジョシュアはさっき収穫なしと言っていたし、“シャインアクア”だけは一切情報なしか……仕方ない。


「とりあえず最優先は“ハートの実”と“夢魔草”よ。イロハ君とジョシュア君は早速“空挺ダーツ”の練習に入って。

 私とフラムさんは“夢魔草”を採取した後で“シャインアクア”の情報収集を続けるわ。異論はあるかしら?」


 ヴィヴィは全員の顔を見渡す。

 みんな『異論なし』って顔だ。


「じゃあ、動きましょう」

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