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色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 錬金術師専門学校へようこそ

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第28話 ブックファクトリー

 一日経って、俺とヴィヴィとフラムとジョシュアの4人は図書館――〈ブックファクトリー〉に足を運んだ。


「「うおお~!!」」


 俺とジョシュアは同時に驚きの声を上げる。

 立ち並ぶ本棚。中央には螺旋階段があり、二階、三階……八階と図書館は続いている。吹き抜けで、一階から八階まで見上げることができる。


 驚いたのは図書館中を本が飛んでいること。返却された本や新しく入荷したであろう本が飛んで本棚に戻っていく。


 図書館だが静粛というわけではなく、騒がしいとまでは言わないが賑やかな雰囲気だ。


「すげぇ……本が飛んでる」


 飛び交う本を見て俺は言う。


「本の量もさすがね」


「こんだけありゃ、探し物は見つかりそうだな」


「うわぁ~! こんな広い図書館初めて見たよ!」


 一旦、広い机に陣取って、会議を始める。


「“オーロラフルーツの種”の素材で私が知らない素材は3つ。1つ目は“夢魔草(むまそう)”、2つ目は“ハートの実”、3つ目は“シャインアクア”よ」


「私もどれも聞いたことないなぁ」


「オレもだ」


 フラムとジョシュアが言う。


「もちろん、俺もな」


 ヴィヴィが知らない物を俺が知ってるはずもない。


「階ごとに分担しようぜ。ヴィヴィ嬢は一階と二階、フラム嬢は三階と四階、イロハが五階と六階、そんでオレが七階と八階だ」


「いいわね。それでいきましょう。4時間後にまたここに集合ってことで」


 俺はまず五階に足を運んだ。


 この階は生物関連がメインっぽいな。猫、犬、馬とかの普通に一般人も知ってる動物の本もあれば、幻獣とか魔獣の本もあるし、キメラについての本もある。探している物はどれも生物との関連性が薄そうだし、この階はハズレかな。でも念のため、隅々まで目を通さないとな……。


「あっ、イロハ君……」


 背後から名前を呼ばれた。

 振り返ると見知らぬ金髪の女子が居た。大きなゴーグルを掛けた、小柄な女子だ。


「えーっと……悪い、どこかで会ったか?」


「い、一応、クラスメイトです……」


 俺はまだクラスメイトの顔なんて全然覚えてない。ゆえに、目の前の女子も全然記憶にない。

 そもそもクラスで自己紹介とかもしてないし、俺のような人間がほとんどだと思う。


「あれ? ていうか、自己紹介してないよな。なんで俺の名前知ってるんだ?」


「イロハ君は結構有名だよ……? コノハ先生と同じで、アゲハ術師の息子だから……」


 少し、事実とは違う情報が混じってるな。


「俺はアゲハ=シロガネの実子じゃない、養子だよ。血のつながりはない」


「そ、そうなんだ。ごめんなさい……」


「別に謝る必要はない」


 なんか、おどおどしている子だな。同い年に思えない。4つ下ぐらいを相手にしている気分だ。


「名前、聞いてもいいか?」


「る、ルナって言います」


「なぁルナ、お前エプロン着てるけど、この図書館の関係者なのか?」


「は、はい。わたし、ここの〈ブックファクトリー〉に入団したので……司書のようなものです」


「そうか! じゃあちょっと聞きたいことがあるんだが……」


「ねぇ」


 横から、咎めるような声が聞こえた。

 1人の少女が俺とルナの間に割って入ってくる。


「……お姉ちゃんにちょっかい出さないでくれる?」


 驚いた。

 割って入ってきた少女はルナとまったく同じ顔だったのだ。しかしルナと違ってゴーグルは掛けてない。

 双子……というやつか。初めて見た。ここまで似ているものなんだな。

 とはいえ、双子と言えど髪の色も目の色も微かに違う。まぁ、この眼だからわかるぐらいの些細な色の違いだが。


「フーカちゃん! イロハ君はちょっかいなんて出してないよ……」


「お姉ちゃん。コイツはあのヴィヴィの彼氏だよ。相手にしちゃダメ」


 ヴィヴィに対する態度で相手が〈アルケー〉出身かどうかが判別できるな……そしてまた誤解が発生している。


「別に彼氏じゃないよ。アイツはただの友――知り合いだ」


 女子生徒――フーカは睨みつけてくる。


「どっちでも同じことだよ。ヴィヴィとつるんでるアンタは危険」


「フーカちゃん! 初対面の人に失礼だよ!」


「むぐっ!」


 ルナがフーカの口を両手で塞いだ。

 力関係は姉の方が上らしい。


「それでイロハ君、聞きたいことってなに?」


「いまある素材について調べてるんだ。“夢魔草”、 “ハートの実”、 “シャインアクア”。どれか1つでも聞いたことあるか?」


「えーっと、どれも知らないかな」


「この図書館の中にこれらについての本は無いってことか?」


「ごめんね……わたしまだこの図書館の本、100分の1も把握してなくて、ちょっとわからないな……」


 そうだよな、こんなバカみたいな量の本、数日で把握できるはずもないか。


「そうか……わかった」


「知ってるよ」


 ルナの手を振り払い、フーカが言った。


「“ハートの実”は聞いたことある」


「本当か! 教えてくれ」


「嫌だね」


「フーカちゃん!」


 ルナは諫めるような視線をフーカに向ける。


「……はぁ。私が知ってるのは入手方法だけ。“ハートの実”がどういうものかは知らない」


 フーカは仕方ないと肩を竦める。


「――“空挺ダーツ”って競技を知ってる?」


「知らない」


「錬金術師の間で流行ってるスポーツなんだけど、明日その大会が〈ランティス競技場〉でやるんだ。それの優勝賞品が“ハートの実”」


「明日か……時間がないな」


「選手登録は直前まで大丈夫なはずだよ。大会って言ってもガチな感じじゃなくて、祭りみたいなものだから」


「わかった。サンキューな、フーカ」


「気安く名前を呼ぶな。“空挺ダーツ”については自分で調べなよ。行こう、お姉ちゃん」


「うん! ま、またね……イロハ君」


「おう。協力してくれてありがとう」


 ルナとフーカは階段を降りていく。

 それから担当の階を全て調べたが……目的の情報は見つからなかった。12時。ヴィヴィの指定した集合時間だ。一階に戻ろう。


 “ハートの実”の情報は得ることができた。及第点の働きはできただろ。ヴィヴィに怒られることはないはずだ。

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