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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ジジイが間違って美少女に転生してしまったら*

作者: やまじじい

ふと思いつきで書きました。お下劣ネタですからご注意ねがいます。


 

   ____2022年日本の夏。

 ヒーホ~ ヒーホ~

 8月のある日の午後3時、家族や親戚縁者が誰一人見つからないと言う、住所も年齢も不詳の老人が病院へ救急搬送されて来た。

 その体は見るからに痩せ細り、着ている服もズボンも何日も洗濯をしていないのだろうか、汚れて穴も開いていた。


 『一見すると.....この老人はホームレスか?』


 それを救急隊員に状況を確認する医師と、色々な器具の装着に忙しい看護師は、こうした患者は毎日のように見ている為、テキパキと処置を続けていた。


___老人は意識が薄れてぼんやりしていても、そんな状況を薄目を開けてまだ見る事が出来ていた。


「正確な年齢は分かりませんが、恐らく90歳は超えていますね。それで、通報されて現場ではどのような状況でしたか?」


 医師の質問に救急隊員は答える。

「午後2時過ぎ、炎天下の公園駐車場の水飲み場手前で、マスクをした状態で倒れていたと、居合わせた市民からの通報です。ここまで酸素マスク装着と、パルス測定しながら搬送しましたが、現場近くの要請が重なってしまい、到着に少し時間がかかってしまいました。その方は軽度の熱中症でした」


 「体力のない老人が、炎天下にマスクを付けながら水を求めて.....そんな所にいれば.....この老人は危険レベルの熱中症だろう。まず首の冷却と生理食塩液の点滴を。しかし余病の有無が分からないな。果たして血液検査の結果が出るまでこの老人の命は.....」

 ピッ

 丁度測定器の発信音を確認した看護師が、測定結果を医師に告げた。

 「酸素濃度が50%、パルスも限界値を下回って既に危篤状態です」


___そりゃ99歳の儂にだって分かる。酸素マスクを装着しても、儂みたいな超高齢者が、この状態で運ばれれば、もう回復の見込みは低い事ぐらいはな。


 そうこうして居るうちに、いよいよ儂の意識は薄れて来た。

「どうやらお迎えが来たようじゃ。どれ念仏でも唱えておくかの」


  ピィィ_____

 「ご臨終です」

 念仏を唱える間もなく、医師の言葉が聞こえたのを最後に、儂の意識は完全にブっとびよった。


 『阿弥陀様よぉ~』


◆◇◆◇◆◇


 「まだか、まだ意識は戻らんのか!」____

 儂の耳に、誰かが怒鳴っている声が聞こえて来た。


『ちょっと御免んなさいよ、儂、ひょっとして生き帰ったのじゃろか?。儂、あのままでも良かったんじゃが、これもお医者先生の務めじゃからな、ここはもう少し頑張って100歳まで生きてみるかの......じゃが弱った事に問題は入院費じゃが......そうじゃ腎臓を一つ売れば』


 そんな馬鹿な事をすれば、その場で極楽往生する事は間違いない。其の上大きな社会問題まで引き起こす事だろう。


 次第に儂の周りが騒がしく、沢山の言葉が飛び交っているのがジジイの耳に飛び込んで来た。


 「おお私の可愛いセリーナ、そなた無しで私は生きてはいけぬ」

「なにを言っている。この私こそがセリーナを一番愛しているのだ」

「二人とも馬鹿な事を! セリーナさえ目覚めれば、この私を一番愛していると言ってくれる筈だ」


『はて、これはなんじゃろな? 病室のテレビで冬ソナでもやっちょるかや?。ほんじゃ儂はもう大部屋に移動したか。金の無い老人じゃからな、それも止む無しじゃな、大部屋で結構、文句なんぞ言わんて』


 更に一層、儂の周りが騒がしくなった。

「エルマー、その方の回復魔法はどうなっておるのじゃ。S級だからと評判のお前だから、高い金を出しておるのだぞ!早く何とかするのだ!」


 呪文詠唱中に、詠唱者のスペルを邪魔する事は大変危険である。スペル一行、一文字間違えただけで大変な結果になる事もあるのだ。


 「ドン・ウェルナー伯爵様、セリーナお嬢様の回復を願っているのは、我々家臣も同様で御座います。今は聖魔導士エルマー様にお任せするしか御座いません」


 「ええい、そんな事は分かっておる、しかしだな」

 「あなた、ここはメイド長テレマスの言う通りなのですよ」


薄情(はくしゃく)だの狭い道路せいまどうしだの、いったい儂の耳はどうしてしまったのじゃ?TVの韓流ドラマじゃないのかえ?』


 この時、S級聖魔導士エルマーは本当に焦っていた。確かに彼女は優秀な回復魔法を得意としているが、相手が伯爵令嬢であり、しかもかなりの重篤だったのだ。

 それに、父親ドン・ウェルナー伯爵が隣でやいのやいのと騒ぐので、回復魔法のスペルをどこかで間違えてしまったのだ。


 それが偶然にも、未だ存在しなかった魂の転移転生魔法となり、しかも老人が息を引き取った時と重なって、セリーナに入り込んだ魂は、異世界から頼んでもいない型落ちの平行輸入品だったのだ。


 最も重大な事は、セリーナの魂は老人と入れ替わり、二度と戻って来ないと言う事だ。


 ___この時エルマーは確信していた。これではもうセリーナ様は助からないと。


『あたしは責任を取らされて、きっとギロチン断首の刑になる』

 焦りが焦りを呼んで、エルマーはもはや真ともな術式が詠唱出来ない程追い込まれていた。ダラダラと吹き出す汗がそれを物語っていた。


 「おいエルマー、大丈夫だろうな!」

 遂にウェルナー伯爵のその言葉が引き金になってしまった。


 『もう駄目、ギロチン断首されるくらいなら、こうなったら自爆して何もかも闇に葬ってしまえばいいのよ』


 聖魔導士エルマーは、持てる最高の爆裂魔法<天地爆裂崩壊励起アマゾン>の、長いスペル詠唱を始めてしまった。


____挿絵(By みてみん)


 それを知ってか知らずか、儂は目を覚ました。

「おおっ! セリーナ様が目覚められたぞ!」


 何故かは知らぬ存ぜぬが、儂の目ヤニの出る老眼の周りには、仮装をした10人程の男と女の目が儂を見つめて歓喜しておるのじゃ。


 『ひぃ ふぅ みぃ よぉ こりゃ、儂の蘇生を祝ってのどっきりカメラか? 生き返ってすぐにそれをやるかいのう?普通なら、驚いて儂の心臓が止まる所じゃぞい』


 そして儂は、傍らの豪華なマントの男を見た。横には(ズカ)かと思うようなドレスを着た派手な看護師もいる。


「先生様、そりゃ、どっきりカメラか、はやりのコスプレかの? 看護師さんもやるもんじゃが、そんなに儂の生還を喜んでくれるとはのう......」



_____「!セリーナが、セリーナが喋ったぞ。まだ意識がはっきりしておらんのは無りもない。戯言を言っておるが、メイド長テレマス、暫く休ませてやるのじゃ」

「それがいいですわ、あなた!」


『なんじゃ、先生様も看護師さんもそこまでやるとはな。あれれ、儂、歯が無いのに喋れておるぞよ?』


 舌でベロベロと口内を確認すると、ちゃんと歯が揃っていた。

『この儂に総入れ歯まで新調してくれたんか❓ 保険が効かんじゃろうに、先生様がポケットマネーで奮発したのかえ?』


そうこうしている内に、詠唱途中だったS級聖魔導士エルマーの姿が消えていた。すると、窓の外から大部屋を揺らす程の大きな音と振動が、儂の耳にも聞こえて、この老体が震えたのじゃ。

『チビルかと思ったぞい。いやいやチビっとるがな』


「ほう、メイド長テレマス、回復祝いの花火とは手回しが良いではないか。しかし派手にやり過ぎだぞ。見よ、セリーナが驚いて口をパカパカさせているではないか」

『総入れ歯の具合を確認しとるんじゃ』


「いえ、私は何も....」

 

 S級聖魔導士エルマーの唱えた<天地爆裂崩壊励起アマゾン>のスペルは完全に詠唱されていない。しかし途中解除出来ない大魔法故、エルマーが慌てて外に放出した結果だった。


「半分以下でもこの威力......でもワタシの首が繋がったぁ」


____何もかも状況が分からぬ儂は、メイドのコスプレをした看護師達に服を脱がされた。あれは新しい服じゃろうな、病院なのだから良くある寝巻に着替えるのじゃろうて。


 じゃが脱がされてから、儂、総入れ歯が飛び出す程ぶったまげたのじゃ。

 両胸に水が溜まって、パンパンに大きく腫れていたんじゃ。しかも、しかもじゃ、ヨロ乳首までがピンピンに腫れて突っ立っておった。


 「儂の胸、バイキンが入ってこんな饅頭みたいに腫れておったのか。知らんかったぞな」


 それを介護用の赤い乳バンドじゃろうか、老人じゃろうと儂は男、恥ずかしかったのじゃ。が、これは致し方ないのう。もう一つは、赤い乳バンドのせいで、儂の小さく可愛い息子が見えないばかりか、愛用のパンパース代わりに、赤い布を極端にケチった腰巻を履かされておった。


「なあ看護師さんよう、こんな物で尿漏チョロボジョを防げるのかいのう。儂はバンパースのほうがええのじゃが.....さっきの音でチビッたぞよ」


 貴族社会で、伯爵令嬢が自分の事を儂とは決して言わないが、セリーナはかなり男っぽい性格で、普段から周りに対して儂と言っていた事から、余り違和感を感じさせていなかった。


「その、セリーナお嬢様、バンパー地方の超高級ワインをご所望で御座いますなら、すぐに手配します故、暫くお待ちください」

「何じゃ?」


 気が付けば、儂が寝ているベッドの何とフカフカな事。更に驚く事には、手すりが金色に輝いておって、豪華な装飾まで付いているのじゃ。


「すまんが看護師さんよ、儂をどこかのVIPと間違えてはおらんかの? ここはVIP専用の大部屋では御座らんか」


 儂も混乱して、流れるような正しい日本語に、時代劇が混じってきた。大岡越前は良く見たものじゃが。


「まだ混乱しているのですね、セリーナお嬢様お可哀そうに.....」

『セリーナお嬢様を病に侵し、その上このような呪いまで! いったい誰が!許せません!』


 メイド長テレマスは確信していた。今回のセリーナお嬢様の御病気とかけられた卑劣な呪いは、何者かの暗殺計画だったと。


 そう思うのは、我が主ドン・ウェルナー伯爵様には敵が多い事。それに超美少女のセリーナお嬢様は御年17歳になられ、高位貴族のバカボンボン3人から熱烈な求愛を受けている事が上げられた。


 暗殺を企てるなら婚姻を良しとしない者達。そう考えると犯人は絞られて来るが、それは誰かが裏で糸を引いた策略で、間違っているかもしれない。


 儂は周りで何が起こっているかは分からん。じゃが自分の手を見るに、スベスベで皺の一本も無いのにも驚いて、思わず屁が。

 ぷすう~ブリ

「い、いかん! 力んだら実まで出てしもうたがな.....各々方、すまぬ」


「いったい儂の体は、どうなってしまったのじゃ。先生様と看護師さんよう、ドッキリはもう十分堪能したよって、儂に本当の事を教えて下されぇ」


 これ以後、この元99歳の老人が、数々のドッキリを経験する事になるのだが、それはまた別の機会にでも....合掌。あなかしこ あなかしこ。


........。


「ちょっと待ちなはれ。こんなええところで終わるんかいのう? 儂、今ピッチピッチのギャルなんじゃぞい! 見るんじゃ、儂のこの見事に腫れあがった乳と尻を!」



 

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