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狐のマスク  作者: 直井 倖之進
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最終章 『変わらないもの、変えてはならないもの』③

 翌日。十二日前のあの時と同じ時刻に、里美は化粧室へとやってきた。

 辺りはもちろん、個室からも人の気配はない。

 洗面台の前に立ち、深呼吸をすると、里美は一気にマスクを引き剥がした。

 薄紫色の光が彼女を包みこみ、一度大きく輝き、消えていく。

 里美は、鏡に映る自分の姿にそっと目をやった。

 そこには、久しぶりに再会する彼女本来の姿が、確かにあった。

「ごめんね、里美」

 鏡の向こうの自分にそっと里美が語りかける。

 その時、個室のドアの開く音が聞こえ、亜紀が姿を現した。頻りに首を傾げながら、洗面台のほうへと歩いてくる。

 そして、そこに里美がいることを目に留めると、彼女は言った。

「ねぇ、聞いて。私、トイレで寝ちゃってたみたい。疲れてるのかなぁ」

 もちろん、それが自分のせいであることを里美は知っている。いや、それどころか、十二日もの間、彼女が「寝ちゃってた」ことも……。

 然りとて、それを何と説明してよいのか分からないし、素より説明できるはずもない。

 ゆえに、

「ごめんなさい!」

 里美は、深々と頭を下げることしかできなかった。

 ところが、猛省している様子の彼女を前にしても、亜紀には何についての謝罪なのか皆目見当がつかない。

「き、急にどうしたの? 何を謝ってるの?」

 ますます混乱するばかりだった。

「えっと……」

 つなぐ言葉が見つからず、戸惑う里美。

 そこに、手を洗いながら亜紀が口を開いた。

「あ、そうだ。里美もきてくれるんでしょう? 私たちの結婚式」

「もちろんよ」

 里美は即答した。

 だが、その直後、住宅街の細い路地でくしゃくしゃにしてしまった招待状のことを思い出す。

「あの、亜紀。悪いんだけど、私、招待状なくしちゃって……。ごめんなさい」

 里美は再び頭を下げた。

 この「ごめんなさい」の意味は、亜紀にも理解できたようだ。

 にこりと笑って彼女は言った。

「大丈夫よ。里美の名前、出席者に足しておくから。必ずきてね」

「ありがとう」

「じゃあね」

 手をふり、亜紀が化粧室を出て行こうとする。

 それを里美は呼びとめた。

「あ、ちょっと待って、亜紀」

「ん?」

「ウェディングブーケ、私に向かって投げてよね。亜紀の次に幸せになるのは、私なんだから」

 里美は、ブーケトスを受け取る真似をして微笑んだ。

 その姿は、これまでの彼女とは異なり、清々しいまでにさっぱりとしていた。

「里美、何だか変わったね」

 正直な感想を亜紀が口にする。

 里美は、少しだけ胸を張って答えた。

「分かる? 私ね、変身したの」

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 ブログ『不惑+4 直井 倖之進の日常』4周年記念、『狐のマスク』もこれにて終了となります。

 私も44という年齢を迎え、文章を書く時間がブログ以外では殆ど取れなくなりました。

 ですが、今回、こうやって過去の作品を読み返し、推敲する。そんな作業だけでも十分に楽しんでできましたので、やはり、私は、「ものを書くことが好きなんだな」と感じます。

 自分ではない誰かの人生を想像し、創造する、『小説』という名の世界。

 生涯に亘る趣味として、これからもその世界で遊び続けていきたいと思っています。

 次にこの場所で皆さんと再会適うのは、ブログの5周年記念になるでしょうか。そこまではいかずとも、何かの形で戻ってこようとは考えていますが……。

 コロナ禍により、何かと不自由強いられている昨今、再び見えることできるその日まで、皆さんどうぞご健勝にておすごしください。

 それでは、今回はこれで失礼いたします。ありがとうございました。

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