この世界は心臓のように。
誰かが言った。世界は心臓で、僕らが動くことで、呼吸をしているのだと。
心底馬鹿らしいと思った。
世界を壊したのは僕らなのに、僕らが世界を動かしているだと?酷いエゴだな。ゴミみたいな自己保身だな。生きてる理由が分からないよ、この世界は。
なのに、どうして生きているのだろう。
ふと思うことがある。僕は一体なんなのだろう。なんのために生きているのだろう。なんのために死んでいないのだろう。
誰かは言った。君にも、夢があるだろう。と。
僕は答えた。夢なんてない。見るだけ馬鹿になるから。
誰かは息をゆっくり吐いた。白く濁っていたのに、次第に空気に混じり見えなくなっていく。
君もいずれこうなるんだよ、と笑った。
知らない誰かに紛れて、知らない世界を見ずに、知らないものを馬鹿にする。大衆心理にまみれた人間にはなるなと、僕に伝える。
頬に触れた手は熱を持ち、熱が僕を包み込むように体に流れた。
君が最後の望み。そう言って、地球に存在する生物の最後の二人のうち、一人が朽ちた。
ああ、僕ももう一人だ。
心臓も、一人じゃ動かせない。
鼓動をやめて、僕も呼吸をやめた。血まみれの服がおかしくて、笑いながら、意識を消した。