表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なんで戦記物って主人公フェードアウトするん?

作者: しんかー

 過去に行って立身出世なり未来を変えるなり、その手の戦記物はなろうの定番だと思うんだけど、なんでどれもこれもいつの間にか主人公の霊圧が消えるのか。どこへきえたんだろうなあ?

 主人公が未来人の視点と知識で駆け回る様を読みに来たと思ったら、主人公にフォーカスするのは本当に序盤だけで、回を追うごとに大局をつらつら説明するだけ。そして毎回のように登場する新キャラ。あちこちの現場の人が名前付きでぽんぽん出てくる。誰だよ!? そしていつだよこの話は!?

 あるあるだよね。主人公の活躍を追う”物語”かと思ったら、オリジナル歴史を垂れ流すだけの”ダイジェスト”になっていたって。そして特にエピソードというわけでもない現場の細々した情景ばかり描写されて、物事の因果が脳でシミュレートできなくなる。で、お話は今どうなってるの? という読者の疑問に回答はなく、ひたすらオリジナル歴史が続いていく。いつの間にか読むに堪えなくなっていく。

 読者は常に人間の視点で物語を読む。作者は神の視点で世界を作る。でも世界だけ作って物語を作らない戦記物著者多くない? 小説って、読み物よ。書き物じゃない。書かれた文章は単なるデータにすぎない。読者の脳で再生されて、初めて小説は実存を得る。CDと同じよ。CDは単なるシリコンの板だ。プレーヤーで再生されて初めて音楽となる。

 ファンタジー系を書いてるなろう作者は物語を作るのに満足して、世界を作らないが、戦記物に限っては世界を作って物語を作らない。小説が読者のためのアクティビティだということに自覚がない。だから主人公を、読者がこの作品世界を体感するための見物席として機能させようとしない。主人公の与えた影響がどうだったのか、という認識ができずにオリジナル歴史が続き、誰にも感情移入できないまま話が進んでいってしまう。

 問題は二つある。まず一つ目は、世界を作ることに終始してそれをどう撮るか考えていないこと。二つ目は読者の感情のコントロールを考えていないこと。綿密な設定に加え、この二つを考えて書いた戦記物は、超面白い。逆に考えていないものはチラシの裏の落書きみたいな出来だ。読者にとっては壮大なメモ書きにしか映らないからね。

 これを自分は”物語のダイジェスト化”と呼んでる。ダイジェスト化が進行すると、個々のキャラクターの視点で話を書くことすらしなくなる。一人称視点って意味じゃないぞ。物語は必ずその場面での一つの視点がある。二つの視点で同時に書くことも読むことも道理的に不可能だからね。

 ひたすら神の視点で進むんだ。やれどこどこの戦線が突破されただの、第XX軍が進撃しただの、いやその様子を実況してくれよ現場視点で! いや実況だけしろってんじゃないよ。わざわざ視点変えるならその視点での話をエピソードとして成立させてくれなきゃ、「何が→どうした」が成立しないだろって。待て待て、確かに「何がどうした」というのは知りたいが、「何がどうした」とだけ書いても物語じゃないだろう。あくまでそのシーンの視点を担当するキャラクターの顛末を書いてくれ。それを以て読者に「何がどうした」を読み取らせてくれ! ホントそういうとこやぞ。

 盤上の駒がどう動いたのかを読者にしっかり伝えるのは確かに重要だ。だが、読者は棋譜を見に来てるんじゃないんだ。それぞれの駒が何を思ってどう動いたのか、彼らの視点で追体験したいんだよ。それが物語を読むということだ。これは大前提だぞ。これを違えている小説は”読むオナニー”なのだと覚えておいてくれ。作者自身が気持ちよくなることは大切だが、読者も気持ちよくしないとな。

 いいか、戦記物を書くときは、自分が設定した世界をどの画角でどう撮るか、そしてそれによって読者の感情をどう誘導していきたいかを考えろ。どんな文章も、それを通して読み手の脳へ影響を与えることが目的だ。情報伝達にしろ、感情誘導にしろ、読者の脳こそがプラットフォームなのだと意識することだ。その情報量の世界を作り出せる知識には敬意を払うが、ゲームはグラフィックよりもアクティビティが楽しいことの方が大事なのだ。

 細かく視点変更して、誰とも知れない現場人がどうしだこうした言われても、正直ストーリーラインへの影響が理解できない。時系列の把握や時間の流れるスピードにも対応できない。何せ最後に主人公の視点だったのがいつなのかも思い出せないからな! 「この話は短期的なこのシーンについて実感を得るためにフォーカスしたエピソードだ」とか、「この話は今後の大局の因果にまつわるストーリーラインの一部だ」とか読者が把握できるように、何を書くのかしっかり決めて、何を書いているのか分かるように最大限気を使ってくれよな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 的確に問題点を指摘していてとても参考になりました。 視点についても言及されていましたけれど。 一人称か三人称かの、大問題があります。 これは小説を書こうと決意した人間が最初か途中か、いずれ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ