プロローグ 段落頭の下らぬ空白 ノ出来事
小説の二ページ目、一行目。
とうとう、ここまで下らぬ文章で埋めてしまった。
何たる事だ。嘆かわしい。これでは、ただの空白と何も変わらない。
早急に、面白くなくともいいから、つまらないと断じる事も出来ない程度の、調度いい書き出しを始めなければならないだろう。
どうしようか、とまた私は肩肘を付く。
話に繋がる書き出しとしては、起こった出来事から始めるのがいいのかもしれない。
そうだ。そうなのだろう。
そう始めれば、私が今何故こうしているのかについても、彼らは理解出来るはずだ。
そうと決まれば、何から始めようか。
私の人生の転機となる、両親が企てた決死の脱東作戦や、その悲劇についてか。
全てを失い、料理店の店主に拾われたその日についてか。
その料理店を中心にして巻き起こった、大きな大きな騒ぎについてか。
騒ぎを発端として始まった、奇妙な関係についてか。
大切な親友との出会いについてか。
愛する人との出会いについてか。
両方との別れについてか。
色々と思案はしたが、決められない。
だから、単純に私の印象の強いあの日を書く事から始めよう。
あの日何が起こり、あの日何を感じ、あの日何を話したのか。
これから、そこから書き出してみよう。
上手くいくかは分からない。
だが、もしも上手くいったのなら、またここで会う事が出来る。
彼らも君らも、それを期待しているのだろう。
さて三ページ目から、この下らない小説を始めようか。




