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勇者学院へようこそ!  作者: 遣ラズ野 アメ
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7話 『あら?みなさん、どうしたの?...ねぇ、みなさん!大丈夫ですか!?』

不思議学生証改め便利学生証の話や入学金/授業料について話が終わったところで優しいマリア先生は、疲れてダレた僕らの雰囲気が伝わったのか(少し休憩しましょうと)休み時間をくれたのでみんな大好き休憩の時間を各々過ごしていた。


「よし!ストレージッ!...おい、見てみろよ。セイ!」


ハルくんは待ってましたと言わんばかりに後ろの本棚から何冊か本を持って来て【ボックス】を早速試してたり、柊さんはお手洗いなのか?先生と少し会話して教室を出ていったり、...まぁ、九条は変わらず外をボーッと眺めたりだ。


---僕はマリア先生と少し話してみようと思って話かけた。


「あ、マリア先生、いいですか?...そういえば明日からの授業ってどんなことをするんですか? まだ僕ら全然そういうのも知らなくて」

「...おっ、セイ!ちょっと俺もそれ気になるわ! やっぱ、剣とか憧れるよなぁ、早くモンスターとか切ってみてぇし、俺! 」


するとハルくんが、何なに?と僕らの会話に入って来た。


「ふふっ、ハルくん気が早いですよ/// そうですねぇ、まず明日の午前は先ほどもお伝えいたしましたがみなさんでギルド協会へ行って登録を行います。それで午前中は終わってしまうでしょうか?」

「あ、ギルド協会ってやっぱり...あの酒場みたいなとこで、屈強な感じの人がいっぱい集まってる感じなんですか?」


やっぱり異世界ギルドといえば、これが定番だろう。


「あらら。やっぱりみなさん、そういうイメージなんですね/// セイくんが仰ったようなギルドも他の異世界にはたくさんありますが、ファミルディアのギルド協会はセイくんの想像しているものと少し違うと思いますよ。ふふふ♪ それは明日のお楽しみにしましょう♪」


あ、なんか違うっぽい。


「えー、気になるっすよ。せんせい!」

「あとは登録が終わり次第学校へ戻り、ファミルディアという世界についてお話ししようと思います。あ、あと授業の内容は...そうですね。マコさんが戻ってきたら始めましょうか」



---ほどなくして柊さんが教室に戻り、マリア先生は話を再開した。



「それでは、みなさんの本分である学業。授業についてお話させていただこうと思います」


そう言ってマリア先生は人差し指を顎に当てた。


「まず基本の科目は【剣術】【魔法】【術式付与】【歴史】の4科目になります。あとは授業が進んでいくうちにみなさんが授業やこのファミルディアで興味をお持ちになったことを重点的に学習する【選択科目】 それと通常の授業で足りない部分やそれ以外の学習を補う【補習授業】があります」


やっぱりこういう話を聞くと、わくわくする。


「...へぇ、結構いろいろとあるんですね」

「はい!勿論ですよ♪ セイくん含め貴方がたは将来ファミルディアを救う【勇者】になるんですから!」


続いてハルくんが授業の詳細内容を知りたいとマリア先生へ質問した。


「はい!せんせい。授業ってどんなことやるんすか?」


マリア先生は(わたしが勝手にお話して誤解を招かないように)それは各授業の初日に各担当の先生から説明があるのでお楽しみにしましょう(ニッコリ)で終わった。


「さて、キョ...(コホン)佐倉さんに作成して頂いた、貴方がたの世界でいう【時間割表】をお配りいたします/// 確認しておいてくださいね」


マリア先生は事務の佐倉さんの名前を出すとき、よほど仲が良いのだろうか?佐倉さんの下の名前を言いかけ毎度訂正する。その都度マリア先生は少し照れたように顔を赤らめるので、見ていて可愛らしい(可愛いは正義。あ、KAWAIIってパッと見HAWAIと間違えそ)


と、そう僕は頭の中で余計なことを考えて少し気を抜いたうちにマリア先生は時間割表のプリントを僕らの机に配り終えていた。



【時間割表】

   午前 ・ 午後  

月/ 剣術 ・ 剣術  

火/ 魔法 ・ 魔法  

水/ 歴史 ・ 術式付与

木/ 剣術 ・ 剣術  

金/ 魔法 ・ 魔法  

土/ 休み ・ 休み  

日/ 休み ・ 休み  ※休日に学院を利用する場合は事前に要:申請!



「このような割り振りになります。この内容でまず1年間、みなさんには授業を受けていただきたいと思います。中間査定や期末査定といった試験も各授業で行われますので、しっかり取り組んでくださいね♪」

「あ、マリア先生!質問が...」

「はい♪ セイくん、どうされましたか?」

「その...体調不良で欠席になってしまう場合とか...あ、あと!退学になってしまうことってあるんですか?」


---マリア先生は、うーん。と少し考えるような仕草をした後、話を始める。


「まず体調不良の場合ですが、本当に辛くてご自宅からどうしても外出が出来ない場合などはキョ...(コホン)事務の佐倉さんへ連絡して欠席の旨を伝えてください。...まぁ、ある程度のことであれば学校に登校して頂いて、わたくしに声を掛けて頂ければ回復の魔法で癒すことができます///」


おぉ、さすが剣と魔法の異世界っぽい! うーん、回復魔法ってどんなんだろう?僕は期待に胸が膨らむ。


(っていうか回復魔法覚えたら、じぃちゃんとばぁちゃんの腰痛とか治せたりするのかな?)


是非、覚えたい!覚えよう!


「...ふぅ、次に退学のお話ですね。基本、退学が起きないように/退学をさせないようにわたくしたちも努力させて頂いております。しかし生徒さん自身が眼に余るほど不真面目であったり異世界で大きな問題行動を起こした場合は退学をお願い/退学処分の対応をとる場合もあります」


---少し困ったような表情のマリア先生。


「あの、その場合って退学以外に罰とかってあるんでしょうか?」

「そうですね...退学になる内容で罰というものが付加される場合もありますが、まず退学の処分が決まった生徒さんには学校に関するすべての記憶の消去と魔力に対して制限を付けさていただきます」


「...えっ?」


「あぁっ!この学校が創設して以来、退学した生徒さんはいませんから!あぁ、そんな不安そうな顔をしないでくださいね! そういった問題を起こさせないように担任のわたくしであったり、各科目の先生がたがいらっしゃいますから!...何よりわたくしたちは【勇者】になる貴方がたが誤った道に進まない/行動を起こさないことを、なによりまず信じていますので」



---マリア先生は微笑みながらフォローを入れたが、僕には少し恐ろしくなった。



なにか大きな問題を起こすと退学にということではなく、【記憶が消せる】ということに対してだ。記憶が消されてしまったら、きっと消されたことが【自覚できない】...もし勝手に記憶を消されたら?なんて思うのは馬鹿らしいかもしれないが、その可能性が消えるわけでもない。...まぁ、いまはノイン校長やマリア先生はそんなことをしないだろうと心から願うしかない。


...はぁ、きっといま教室内でこんなことを考えたのは僕だけだろうと思ったら本当に馬鹿らしく自分が思えた。ふぅ、と息をつく僕。気持ちを切り替えて、違う質問をマリア先生にした。


「そういえば、僕ら以外に生徒っていないんですか?」


僕がその質問をすると、隣のハルくんや後ろの柊さんが(確かにと)ひらめいたような顔で納得し、ハルくんはマリア先生に俺も気になってたぜ。と僕に同調して同じくマリア先生に聞いてくれた。


「それについてはお恥ずかしい話もあったり、色々あるのでまた少しお話が長くなりますがよろしいですか?」

「はい!気になってたことなので教えてください!!」

「だな、俺も知りたいっす!」

「まずですね...わたくしが言うのも変だと思うのですが。...が、学校の名称が、その...こういった名称で、ですね。貴方がたの世界では馴染みがないと言うのか抵抗があるみたいで...はぁ、なんと言うか/// 」



---あ、学校の名前のせいだったみたいです。



僕もハルくんも柊さんもマリア先生が言わんとしている意味に気づき、キョトンとしてしまった。 ...九条だけは変わらず澄まし顔で外を眺めている。あぁ、そうだった。いつの間にか忘れていたよ...勇者学院に行くなんて恥ずかしすぎて誰にも言えなかったあの日々を。


あぁ、そうだ。僕はいま留学してることになっています。...あぁ。じぃちゃん、ばぁちゃん。僕は忘れていた大事なことをいま留学先で、思い出しました。あのバカにされるのが嫌で友達にも言えず、自分の口で言うのも恥ずかしくて悶え苦しんでいた日々を。




『あら?みなさん、どうしたの?...ねぇ、みなさん!大丈夫ですか!?』




ハルくんも柊さんも何か思い当たるところが僕と同じようにあったんだろう。...九条以外の僕らはぞれぞれの世界にトリップしていた。心なしか僕を含めてみんな遠い目をしてる。そんな僕らを見てマリア先生はあたふたしている。


「...ちょっと、みなさん!しっかりしてください!」


困ったマリア先生は両手を《パンッ!》合わせて音を出す。はっ!と僕たちは各々が現実逃避した世界から呼び戻された。マリア先生は心ここにあらずの状態になった僕らをみて少し呆れて苦笑いした。



「もぅ。質問したのはセイくんなんですから、ちゃんと聞いててくださいね」

「あぁ、はい。すみませんでした...少し思い出しごとを...ははは///」


マリア先生、これはしょうがない。僕らの世界で勇者の学校なんていったらアニメとかゲームの中だけのおとぎ話みたいな話だ。まして勇者になるから勇者学校に通うだなんて言った日には周りから間違いなく馬鹿にされ恥をかく。僕は何かを変えたくてこの学校を選んだ。けれど今日この学校に来る前までは僕も馬鹿にする側だった。


...ふいに僕は疑問に思う。【勇者】って言葉を聞くと、強くて格好良くて仲間にも全ての人に頼られる。とか、良いイメージばっかりだ。間違っていないと思う。


大人も子供も誰もがなんとなく一度はTV画面や本の中の物語の世界の勇者に自分を重ねてみたりして思いを馳せ憧れたりするけど、いつからそんな憧れを馬鹿するようになってしまったんだろう? 子供の夢だ。ってこの学校を知らない奴らは、そう言うのかな? ...そんな日常が非日常へ変わった日だと、改めて自覚してワクワクした僕だった。マリア先生は僕の顔をみて少し呆れたように話をつづける。


「あと生徒さんが少ないのにも理由があるんです。...2年に一度しか生徒を受け入れていません。それは午前に少しお話をしましたが、異世界人が行う異世界召喚についてもう一度お話させていただきます。」


異世界人が【英雄/勇者召喚】を行うと、なぜだか僕らの世界の人間が召喚されるって言うのはさっき聞いた。マリア先生は改めて言う。ファミルディア以外にも本当にたくさんの異世界、その中にはたくさんの国がある。変な話、国ごとに【英雄/勇者召喚】することもあるという。


その度僕らの世界から人間がひとり、またひとりと消えてゆく。異世界人は魔王を倒す力が僕らの世界の人間にはあると思い込んで【勇者】として送り出し、死んでいく。なんの特別な力もない一般人だからだ。そして勇者が死ねばまた異世界人は【英雄/勇者召喚】を繰り返す。...まるで消耗品みたいだ。


そんなことになっているとは知らず、ノイン校長とマリア先生は【英雄/勇者召喚】について研究していたところ一つの事実を知る。異世界に召喚される人間の世界のこと、その人間のことを。【勇者】は僕らの世界で争うこともなく平和に暮らしていた一般人だった。


そんな僕らの世界のこと憂い、異世界人の勝手な都合で死んでいく僕らの世界の人間をノイン校長は悲しみ、異世界人が勝手に【英雄/勇者召喚】を行えないように術式を全ての異世界に施し、魔法を発動したそうだ。


しかしその術式も完全に防ぎきれるものでもなく、まれに僕らの世界に生まれる一定以上の魔力を偶然持ってしまった人間に対しては【英雄/勇者召喚】の術式に対して魔力が反応し飛ばされてしまう。


そこでノイン校長は僕らの世界にエクレツィア勇者学院を作り、一定以上の魔力のある人間を探した。その対象者の中から異世界へ召喚される可能性が高い人を勧誘して異世界人からの勝手な【英雄/勇者召喚】から守るために【勇者】として戦える術を与えているとのことだった。



---僕らが考えていた以上に、重い話だった。



「...ということが一つ理由になります。ノイン様のお力のおかげで異世界人が行う異世界召喚の発動の数は現在では随分減りましたが、それでも召喚は行われています。その【英雄/勇者召喚】には術を発動するために膨大な魔力や準備が必要で、ある程度の時間が必要になります。...そうですね、その時間は大体4年から5年になります」


マリア先生たちは存在する様々な異世界に対して【英雄/勇者召喚】の発動の兆候がないか日々観測を行い、兆候が観測がされた異世界があればその都度準備を行う。入学した生徒へ【勇者】として戦える術を教えるためだ。


ノイン校長もマリア先生も元は別の異世界の住人だ。もちろん自分たちの知る世界以外の異世界のことは知らない。兆候が観測され、初めてその異世界について知る。例えば、A / B / Cという3つの世界があれば、魔法の解釈や方法も使い方も様々で違うらしい。


準備とは異世界人が【英雄/勇者召喚】の術式を完成させるまでの時間の4年から5年の間に召喚される可能生のある人間を勧誘し、入学してくる生徒へ魔法や武器の使い方や他にも色々と教えるための講師を探したり、拠点となる学校を対象の異世界に建てたり基盤を作るための準備する時間らしい。


「...ですが残念なことにわたくしたちが助力を行い、勇者になる術を与えて守ってあげられるのは、この学院に入学していただいた生徒さんのみです。...貴方がたの世界の人間の大多数が【勇者】という言葉や存在を想像/妄想の中の作り話だと受け入れてくれない。…以上が、生徒が少ない理由についてです」



---マリア先生は悲しそうな顔をして、最後は窓の外を見るように僕の質問に答えてくれた。






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