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勇者学院へようこそ!  作者: 遣ラズ野 アメ
6/8

5話 『えっ、あ...そうですね、すぐ帰れますよ』

書いてると時間を忘れてしまいます。

---青白く光った黒いカードの光が徐々に収まる。



「えっ?...学生証?」

「あーっははははは。そうだ学生証だ!なにを期待していたのかは知らんが当たり前だろう? お前たちは我が学院の生徒になったんだ!」

「ごめんね、みんな。ノイン様、これ毎回やるの。わたしも内容伝えないでこういうことするの気が引けるんだけどね...はぁ」


一気に強張っていた肩の力が抜けた。


「ははは、なんだよ。なんかびっくりしちゃったじゃん!」


僕は隣のをチラッと見た。期待したのと違ってたみたいで、ハルくんは呆気に取られてた。


「どうなってんだ、これ?」


指に摘んでいるカードに目を向けると一般的なカードのサイズ(クレジットカードのサイズ)でどういう原理かも解らないけど顔写真/生年月日/学校名称/学籍番号などが記載されている。ハルくんは学生証を摘みながら顔の前でペラペラやってる。


「おいっ、なんだお前らみんなしてその残念そうな顔は!ただの学生証じゃないからな!わたしが造った特別製だからな!」

「は、はぁ...」


銀髪脳筋残念女さんよ、そんなドヤ顔で言われましてもだよ。


(説明も何もなければ見た目普通の学生証だよ。これ?)


僕とハルくんはノイン校長の言うことを中々信じられない。だって普通の学生証だもの。


「なんだお前ら、わたしの顔を見て?...ふん、そういうことか」


ノイン校長の顔を見ているとハルくんの学生証を取り上げ、てくてくと窓の方へ向かい、窓を空けハルくんの思いっきり(ブンッ!)外へ投げた。(...えぇ、それはもう綺麗なフォームでした)


「ちょっ、何やってんすか!? ひどいっすよ、校長ぉっ!」

「ふんっ! お前らごときひよっこが、わたしを疑ったからだ!少しみせてやろうと思ってな! ヒムカイよ、まぁ慌てるな。他のやつも見てろよ」


ハルくんはノイン校長が学生証を全力投球した方角を遠い目をして残念そうに見ていた。


「あぁーあ、ひでぇよ...」


ノイン校長はそんなのお構いなしに気にするなと言わんばかりにハルくんの顔を見る。そして僕らにも聞こえるように、こう言った。


「ヒムカイよ、目を閉じて手のひらに意識を少し集中して学生証を想像してみろ。他のことは考えるなよ」

「えぇっ!? あ...はい、了解っす。やってみます!!」

「ふぅ、とりあえず出来るだけ無駄なことは考えるなよ」

「うーん、どうだろ?...こんな感じっすか校長?」


ノイン校長がそう言うとハルくんは手のひらを眺めるような感じで、顔を下に向け目を閉じた。僕らも注目して見てしまう。するとハルくんの手のひらがポゥッと少し青白く光ったと思ったらハルくんの手のひらには、さっき外に投げ捨てられた学生証があった。



---手のひらの違和感に、ゆっくり目を開くハルくん。



「うわぁっ! すげぇっ、何これどうなってんすか!?」

「どうだすごいだろう!そうだろう。わたしを崇めるといいっ!!」

「すげぇっす! 校長っ!!」

「まぁ、ファミルディア限定だがな。そういうことで、お前らがこのファミルディアいる限り学生証を落として失くしたりしても気にするな。ただファミルディア以外で失くした場合はどうにも出来んからな!注意するように」

「はいっ! わかりました! あはは、すげぇ」


そう言ってハルくんは新しいおもちゃを手に入れた子供のように目をキラキラ輝かせている。裏返してみたりくるくる手で回したりして学生証を何度も見ている。


そんな僕もわくわくしていた。後で僕もやってみよう、絶対!


「あぁ、そうだ。まだ他にもその学生証には、わたしが色々と【術式】を組み込んでおいたからな! わたしは言ったろう? 【祝福】と。まぁ、いま話すと時間を取るからな。あとでマリアから説明させよう。」

「あ、はい。わかりましたノイン様。わたしも今日は学生証について全てのお話は出来ませんから、授業で必要な部分の説明は他の先生に伝えてもらうことにしますが、よろしいですか?」

「あぁ、そうしてくれ!」


この不思議学生証にはまだ色々と機能があるらしい...気になる。とりあえず少し休憩なのだろうか?銀髪脳筋残念女とマリア先生が雑談を始めた。すると隣の席のハルくんが話しかけてきた。


「なぁなぁ、セイ。見てたかこの学生証、すげぇよな?」

「うんうん、見てたよ! ね、これどうなってんだろうね?」

「はぁ。俺、魔法使っちゃったよ! ほんとこの学校のこと面白半分で疑ってたけど感動だ」

「ほんとだよ! 変な宗教か詐欺かって僕も思ってたけど本物だった!」

「あはは、そうそう!わかるわかる」


と僕とハルくんも会話に花を咲かせようとしたところで、マリア先生との雑談が済んだのかノイン校長が僕らの方を向いた。


「アイサカ、ヒムカイ、どうしたそんなに盛り上がって?」


会話に混ざりたそうに近づいて来そうになったところで、マリア先生から昼食の提案があった。


「さぁ、みなさん! そろそろ昼食の時間です! 本日はみなさんの入学式/初日なのでこちらで食事を用意いたしました。これからみんなで食堂に行きましょう♪」

「あぁ、マリア悪い。わたしはこれから野暮用があってな、本日は失礼させていただくよ。」

「そうですか...残念です、ノイン様」

「まぁ、これから2年間。お前らと食事する時間はいくらでもあるさ! 今日から精進しろよ、お前ら!」


そう言ってノイン校長は一足先に教室から出て言った。ほどなく僕らもマリア先生を先頭にぞろぞろ教室から出て1階の食堂へ向かった。


「さぁ、みなさん行きましょうか♪」


食堂に着くと期待を裏切らない豪華な内装、執事服を着た初老の男性1名と数名のメイド服を着た給仕の女性が待っていた。


「これはこれは生徒さん方、この度はご入学おめでとうございます。あぁ、マリア様。ノイン様はご一緒ではないのですか?」

「えぇ。申し訳ありません、シュトラさん。ノイン様は用事があるようでしたので、昼食はいいと言って先ほど外出されましたわ」

「そうでしたか、本日は腕を振るいましたのに残念ですな」

「ふふふ、落ち込まないでくださいシュトラさん。あの方もお忙しい方なので仕方ありません」

「かしこまりました、マリア様。次の機会に期待するといたしましょう」


「さぁ、みなさん。この方はこの屋敷で執事長兼メイド長を務めて頂いているシュトラさんですよ」

「改めてご挨拶させていただきます。只今、ご紹介預かりましたシュトラと申します。以後よろしくお願い致します」


執事服を纏い身なりも清潔な初老の男性はシュトラさんというらしい。話し方に品があって何より言葉も柔らかで食堂の雰囲気に飲まれていた僕らを和ませてくれた。


ウチのじぃちゃんもじぃちゃんで中々いぶし銀で寡黙な渋い年寄りだと思っていたが、シュトラさんはまさに紳士という出で立ちだ。スーツに形が近い執事服をこうも姿勢よく綺麗に着こなしてるのだから、ガタイとかもきっと良いのだろう。


「こちらは...うん、名字がいいかな? 本日から生徒になる、アイサカさん、ヒムカイさん、ヒイラギさん、クジョウさんになります」

「みなさま、本日はご入学おめでとうございます。ささやかながら昼食をご用意いたしました。こちらの世界の料理がお口に合えば幸いです。さぁ、マリア様、生徒の皆様、用意は済んでおります。こちらへどうぞ」


マリア先生と僕らは真っ白なテーブルクロスの上に綺麗な花が添えられたロングテーブルへとシュトラさんに案内される。奥にマリア先生が座り、僕の前に柊さんがハルくんの前に九条というかたちで着席した。


「みなさん、慣れないかもしれませんが気になさらずに楽しんでくださいね」

「って言われても、こんなとこで飯食ったことないからなぁ。マナーとかもよく分からんぜ、なぁセイ?」

「あ、うん。僕もこういうとこで食べたことないから変に緊張するよ/// あ、柊さんは?」


マリア先生は力を抜いてというが、そんなに簡単に対応出来るわけがない。ハルくんも同じくお互い慣れない雰囲気と場所に緊張している。ハルくんがなんとなくだろう話を振ってきたから、僕は柊さんにも話を振ってみた。


「...ひぇ?......? え? わ、わわ...わたしですか?」

「うん、柊さんはどうかなぁって。あはは...ごめん。変な質問して」

「い...いえ! だ、大丈夫!で...す。わ...わたしも、こっ...ここまで立派なとこは、きっ...来たことなぃ」


柊さんは変わらずあたふた顔を真っ赤にして質問に答えると、下を向き縮こまってしまった。


「そっかぁ、やっぱり緊張しちゃうよねぇ。九条さんはどう?」



「...別に」



流れで九条にも話を振ってみたが、案の定期待通りの返答で見ていたハルくんが地雷踏んだと言わんばかりにクスクスしていた。


「ふふふ、みなさん大丈夫です。こういうのは慣れですよ慣れ♪」


マリア先生がそう言うと、それが合図だったかのようにメイド服の給仕さんたちは料理を運ぶのを始めてくれた。前菜から始まり、スープ、魚/肉料理と順々に僕らは食べていきデザートを含めて9品ほど今まで食べたことがない、とっても美味しい料理を堪能した。


(あぁ、じぃちゃんとばぁちゃんにも食べさせてあげたいなぁ)


ちなみに柊さんは言葉こそ出さなかったがデザートの時に、それはもう幸せな顔をしていた。そんな柊さんの幸せそうな顔を見ていたら、僕までなんか幸せな気分になった。


そして最後にシュトラさんがコーヒーとプチフルールを各々の前に並べてくれた。


「生徒のみなさま、料理はお口に会いましたかな?」

「はいっ!すげぇ、美味かったっす!」

「あわわわ...すっ、すっごく...お、美味しかった...です」

「...(九条は無言で会釈)」

「はい!とっても美味しかったです!毎日食べたいぐらいです」



---各々の感想をシュトラさんに伝えるとニッコリして、嬉しそうだった。



「ふふっ、みなさん。今日みたいな素敵なお食事は毎日出ないけれど、生徒基本ここでの昼食は無料だから利用すると良いわ」


「「「えっ!?」」」(九条以外)


「ほんとですかマリア先生!? え、大丈夫なんですか?」

「え?じゃあ毎日、俺ここに来よー♪」

「(コクコクコク!と柊さんが首を上下に振り頷く)」

「あ、あとここでのお食事も毎日じゃ飽きてしまうかもしれないから、お昼休みに貴方がたの世界へ戻ってコンビニで昼食を買って来ても良いわ」


「「「えっ!?」」」(九条以外)


「え、ちょっと待ってくださいマリア先生...僕たち帰れるんですか?」




『えっ、あ...そうですね、すぐ帰れますよ』




---今日イチの衝撃の事実である。




「わ、まじかよ!俺たち帰れるのか!?」

「あぁ、そうですね。まだお伝えしていませんでしたか。ここはあくまで学校であり、みなさまは生徒になるので毎日ご自宅から通って頂きます」

「はぁ、そうですか...僕は異世界召喚って来たら簡単に帰れないものだと...」

「まぁ!みなさん、そう思っていらしたんですね。ふふっ、みなさんは現在ノイン様のお力で【転移】させられたにすぎません。【召喚】は術の性質上、行った術者との契約が発生するため簡単には戻れませんが...」


なんだか身体の力が一気に抜けて放心状態だ。グニャグニャで力が入らないし、緊張の糸が切れたのかドッと疲れがやってきた。そんな僕らを見てマリア先生とシュトラさんは顔を見合わせてクスクス笑っていた。


「ふふふ、屋敷の外にあるゲートと学院事務所の扉は繋がっているんですよ♪」

「あぁ、やっぱり!」

「キョ...(コホン)佐倉さんには貴方がたの世界での業務とゲートの管理と監視をお任せしています。後ほどゲートの方にもご案内いたしますね♪」

「はい!お願いします」


あぁ、もうなんだか僕らは勝手に深く考えすぎてたみたいだ。あ、て言うか銀髪脳筋残念女が最初に説明してくれたらこんなに考えなくて良かったんじゃ...よっぽどマリア先生の方が校長みたいだよ!優しいし!知的だし!残念じゃないし!交代しちゃえよ!と心の中で銀髪脳筋残念女を軽くdisった。



---ふと、僕の視界に九条が入る。



「あのさ、九条さん。そういえば自己紹介のとき、お兄さんがファミルディアにいるって...」



《ガタッ!》



「...私、先に教室戻るから」



---九条は乱暴に席を立ち、ツカツカ食堂を出て行った。



「ははは、なんかごめん...」



僕の声は九条に届いたのだろうか?あとでもう一度謝ろう。雰囲気悪くしてごめんと食堂に残ったみんなの方を向く。ハルくんは気にするなよと言う顔をしている。柊さんは気まづそうな顔をして下を向いていた。


「...シュリさんのお兄さん、クジョウ セイジさんは6年前この学院を卒業した卒業生なんですよ。

「そうだったんですね...」

「...あぁ、本人のいないところでするお話ではありませんね。シュリさんも聞かれたくないお話みたいですし、やめておきましょうか。そう、いつか彼女から話してくれるのを待ちましょう。」



《パンッ!》と、マリア先生が手を合わせる。



「さぁ、午後からも頑張って今日のオリエンテーションを終わらましょう!」



---こうして僕らは食堂を後に、教室へ戻った。




あまり進まなくてごめんなさい。

変なトコをゆっくりじっくり書きたいわがままです。

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