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勇者学院へようこそ!  作者: 遣ラズ野 アメ
4/8

3話 『わたしから、君たちへ最初の祝福を与えよう (前編) 』

頭の中にあるものを文章にするって大変です。

うまく伝わっていれば良いなと思います。

身体に力が入らない...視界もボヤァっと真っ暗で、これは見えてるのかな?目が開いているのかどうなのだろう? よく分からない...ゆったりプカプカ浮いているみたいだ。夢の中なのかな? はぁ、考えるのも面倒だなぁ。どこに流されてゆくんだろう。


(あぁ、なんだか周りが明るくなってきた。身体も暖かくなって気持ちいなぁ、もう少しこのままでいたいなぁ)

((....み.....お........なさい、...—ん、......きなさぁぁぁい!.......起きろっ!!))


ポゥっと遠くの方から音がする...せっかくひとがボヤァと気持ちよく為すが成るままに身を委ねてるのに...鬱陶しいなぁ。するとポゥと銀髪の女性の姿が浮かぶ。なんだよぉ、意味わかんないなぁ。邪魔だよ邪魔、イラッとする。帰れ、帰れ。シッシッっと手で払う動作を出来ているのかも分からないが、とりあえずやってみる。



---あ、消えた(ざまぁ)と、思った次の瞬間。



《ドスッ!!!!》


「ぅ、はぐぁっ!」



突如、激痛が走る。漂うだけの気持ちのいい世界から引っ張り戻された。急に体が(ビクッと)強張ったせいか身体中少しギシギシ痛い。目を開くと視界にボヤァっと誰かが映る。


(っ痛ってーな、なんだよもう...)


それは徐々にそれが誰だかはっきりとわかる。意味わからない系銀髪女ことノイン校長が僕の腹部に杖を突き立て、見下ろしている。


「ふん、起きたか」

「イテテッ。起きたもなにも、ひどいじゃないですかぁ」

「は、わたしは口より先に手が出るタイプなんだ。あぁ、これでもはじめましてだから最初は声をかけだんだぞ? まぁ何故か途中で急にイラッときて、ついな!」

「ついな!じゃ、ないでしょう!」



---ノイン校長は自分の頭を軽く小突いて、てへっ☆ というの動作をした。



(うわぁぁぁ、合ってねぇ)


絶世の美女とお世辞でもなく言い切れるような女性(ノイン校長)が可愛い子ぶってキラキラ全開な少女マンガやマジカルな魔法少女のように振舞っても萌える要素にはならず、むしろマイナス要素になることが分かった。


「おいおい、なんだその顔は!」

「あ、いや...なんでもないですって」


僕の中で意味わかんない系銀髪女を経て、残念系銀髪女になったノイン校長に若干イラッ☆とした。


「あの、とりあえず杖どけてもらって良いですか?」

「はいはい、わかりましたよー。まったくもう」


という雑な対応で杖をどけてもらって上半身を起こす。目に映ったものは意外なものだった。


(うわぁ、なんだあれ?)


少し離れたところに洋館のようなものが建っていた。その洋館のような建物の前には石畳の広場があり中心には噴水と周りを囲むように花壇があり色取り取りの花が咲いている。


(...えっとなんでこうなった?)


状況を頭の中で少し整理してみる。僕らは入学式のために講堂に集まったんだ。そしたら少しして残念系銀髪女が出てきて、入学の挨拶をして杖を出したと思ったらピカーッて光って【ココ】に連れて来られた。


「あのノイン校長。ここはどこでしょうか?」

「まぁ。そういう色々な話はな、教室に行ってからにしようか。君が中々起きないから、彼らにはさっきからそこで待っててもらってるしな」



---僕の質問はひらりとスルーされた。



ノイン校長が手をあげ顔を向けた先には3人がいて、木陰で休んでいたみたいだ。短髪茶髪男は僕が起きたことに気づき同じく手を上げ(やぁって感じ)なんだかキラキラ爽やかで、青春してるぜって雰囲気で小走りで寄ってくる。他の女の子2人もその後ろからトボトボとまばらにこちらに近寄ってくる。


「おぅ!大丈夫だったかお前? ぜっんぜん起きないからさ、心配したぜ」

「あぁ、ごめんごめん。なんだかすっごく気持ちよく寝てたみたいで」

「そっかぁ? 俺は、なんか身体が光ったなぁって思ったら、ココにいたぜ?」



---うーん、どうやら個人差があったっぽい。



「それでは揃ったことだ、まず教室に行こうか。ついてこい!」

「あ、はい!」


そう言うと残念系銀髪女は校舎へ向け、ハーメルンの笛吹きのように僕らを連れて歩き出す。もはや講堂で感じた感動もなにも微塵もない。短髪茶髪男改め爽やか青春男と僕も会話をしながらノイン校長の後につづく。その僕らの後を無愛想ツインテ女とゆるふわボブの可愛い女の子はお互い離れて一定の距離を保ちトコトコ付いてくる。


「あぁ!俺、日向 春彦/ヒムカイ ハルヒコな。よろしく!」

「了解、日向くんだね。よろしく!僕は逢坂 正、よろしくね」

「おぉぅ、日向くんはなぁ。なんつーか言われ馴れなれてないからやめてくれ。ハルで良いよ、ハルで」

「そっかぁ、じゃあ僕もセイで良いよ。って言うかさ、なんか呼び捨てってしっくり来ないんだよね。...あのさハルくんで良いかな?」

「おぅ! じゃお前が呼びやすいようにしてくれ。ははは」


名前まで爽やかだった爽やか青春男ことハルくんと、少しだけ打ち解け会話を弾ませながら付いていく。残念系銀髪女がちゃんと僕らが付いてきているのか時折後ろを振り返り確認し、僕らは洋館の玄関前に着く。



---そして残念系銀髪女が玄関の扉を両手で勢いよく《バーーーン!》と開く。



「マリア! マリアいるかっ?」

「はいはい。そんなに大声で呼ばれなくても、ここに居ますし聞こえていますよ。ノイン様!」

「わたしは少し席を外す! 後ろの彼らを教室まで案内してやってくれ。どうせマリアが担任になるんだし良いだろう? ふぅ、じゃあのちほどなっ!」

「はぁ、...本当に勝手なんだからいつも」


玄関ホールに入るなり、残念系銀髪女はマリアという人の名前を大声で呼ぶ。ほどなくして奥の扉から(ガチャ)金髪の女性が呆れた様子でコツコツとこちらに向かってくる。マリアと呼ばれて出てきたんだから、この人がマリアさんだろう。


(なんか優しそうな人っぽいなぁ)


マリアさんはタイトなスカートスーツでこの洋館には不釣り合いな、いかにも現代な格好だ。続けて2人の会話の流れで知らされたが、この女性が僕らの担任になるっぽい。残念系銀髪女は用件をマリアさんに伝えるとサッと奥の部屋へ行ってしまった。


「はぁ...いまノイン様がしれっと仰いましたが、わたしが本日より貴方がたの担任を勤めさせて頂くマリアと申します。よろしくお願いしますね///」


えへっと少し照れた感じで柔かに挨拶をしてくれたマリア先生に、僕らはそれぞれバラバラによろしくお願いしますと言ったり会釈をしたりした。マリア先生も残念系銀髪女と同じく【エルフ耳】で容姿がとっても綺麗だ。


(エルフは美人しかいないんだろうか?)


ほどくと長そうな金髪は頭の上でまとめてお団子にしていた。しかしながら容姿も綺麗で雰囲気も素敵で佐倉さんとはまた違った意味でお姉さんなのに、なのに!容姿は残念系銀髪女の方が上だった。


(まさに残念だよ、残念系銀髪女)


そんなことを考えていると、話はいくばか進んでたみたいで。


「さぁ、みなさん。まずは教室へ向かいましょうか」


僕らはマリア先生に促されて玄関ホールのアーチ状の階段から2階へ上がる。階段を登りながら玄関ホールをチラッと見るとすっごく大きな油絵が飾ってあったり、高価そうな大きな花瓶に綺麗な花が生けてあったり映画の中で見るような光景で改めて非日常を感じた。


「ここがみなさんが2年間学ぶ教室になります。さぁどうぞ入ってください」

「わぁ!」 「おぉー!」

「ふふふ♪ あなた方の世界の教室っていうものと少し感じが違うでしょう? そうですねぇ、席は最初ですしわたしが決めちゃいましょう♪」


階段を上がって最初の部屋が教室だった。マリア先生が最初に入室し後に続いて僕ら4人は次々と入室する。教室は思っていた以上に広くて僕とハルくんは思わず声を上げる。女の子2人は気のせいか瞳がキラキラしているように見えた。


「うぉぉ!映画に出てくるやつっぽいな、セイ!」

「うん!なんかすごいね!」


設置されていた机は映画に出てくるような貴族が使う装飾が豪華な大きい机で、独立して前に2席後ろに2席と計4席並んでおり、講堂と同じように後ろの席が前の席より高い位置にあった。


ついでに後ろの壁には洋書のような分厚い本がたくさん(ギッシリ)図書館のように収まっていた。


(で、どこに座ったら良いんだろう?)


僕ら4人が、どうしよう?となっていたところで察したマリア先生が各々に席を決めてくれた。前の席が僕(窓側)とハルくん(廊下側)になり、僕の後ろの席が無愛想ツインテ女でハルくんの後ろがゆるふわボブの可愛い女の子。


「はい♪ みなさんの席も決まりましたし、自己紹介をしましょう。あ、席は慣れてきたら好きに変わって良いですからね」



---マリア先生が教壇に立ち、こちらを見て笑顔で進行を始める。



「うん!まず最初は先生からしようかな? じゃあ、ついでにオリエンテーションのお話も含めてお話ししましょう♪ 名前は先ほどもう伝えてしまいましたから、気軽にマリア先生って呼んでくださいね/// みなさんもう気づいていらっしゃると思いますが、入学式を行なった講堂からこの場所も異世界になります」



---そうじゃなかったら、おかしい!と4人とも思っていたみたいで、特に誰も何も言わない。



「今いるこの世界をこの世界の住人たちはファミルディアと呼んでいます。ファミルディアには現在4つの国があり...あ、今は魔王が...うん、そうですね♪ 魔族の国もあるので5つの国で世界を分割し領地を争っているような状態です。追々この世界についての詳しいお話は歴史の授業でお話するとしましょう」



---そしてちょっとだけ衝撃的な事実が伝えられる。



「それでですね。わたしと先ほどのノイン様は、この世界の住人ではありません。あ、もちろん貴方がたの世界の住人でもありません。また違った別の異世界の住人になります。異世界っていうのは一つじゃないんです。それはそれは沢山あってですね、それなりに問題も沢山あって困りものです/// 中でも一番多い問題、それが魔王討伐です。 じゃあ何故わたしとノイン様が貴方がたの世界で勇者学院を設立し勇者を育てているかというとですね...」



---マリア先生と残念系銀髪女は、また別の異世界人でした。



「...異世界の方々が魔王討伐の為に【英雄/勇者召喚】を行うと、なぜだか貴方がたの世界の人を召喚してしまうのです。この問題についてはわたしとノイン様も長年研究や分析を行なっているのですが何の手がかりも掴めず解明は愚か理由すらも分かっていません。ですが、ようやく10年ほど前に貴方がたの世界の人が異世界に召喚されるということを突き止めたのです」



---色々と聞いてみたいこともあるけど、今は黙ろう。



「みなさんには実感はないと思いますが【英雄/勇者召喚】というのは、とっても危険なことなのです。極端な例えになってしまいますが【異世界人が貴方がたの世界の人を拉致して殺害すること】です。わたしも貴方がたの世界の文化に触れて知ったのですが異世界へ召喚された場合、アニメやゲームや漫画のように何かしら便利な能力が神によって与えられるなんていうことは、まず間違いなくありません。考えてみてください貴方がたの世界に戦争はあっても魔法を使ったり、剣を使ったりしますか? しませんよね?」



---マリア先生...なんか怖いよ、僕らは若干引いている。



「...もしかしたら貴方がたの世界の軍人さんを運良く異世界人が召喚出来たとしても、タイミング良く銃火器や貴方がたの世界の兵器/武器を持っているなんてことは奇跡的な確率です。もし異世界人がその奇跡的な確率を引き当て召喚したとしましょう。弾がなくなったらどうします? どうにも出来ませんよね? 造る? バカなこと言わないでください。例え構造やサンプルがあったとしても【英雄/勇者召喚】を行う異世界なんて、文明レベルが知れています。カタチになるまで何年かかることでしょう? むしろ召喚される貴方がたの世界の人間の大半は争いとは縁遠い平和に暮らしてきた一般人なのです。だから異世界召喚された貴方がたの世界の人間は勇者と持て囃されて無理やり旅に出され、半年以内は死んでしまいます。」



---僕らの世界をdisるのはもうやめてあげて...マリア先生の熱い話は、つづく。






明日後編投稿できたらします。

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