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勇者学院へようこそ!  作者: 遣ラズ野 アメ
1/8

プロローグ

初投稿です。

ちゃんと頑張って書き切ろうと思います。

読んでくださるだけで有難いです。


---僕は、漠然と変わりたい/変えたかった。


例えば自分が変わったとして、

周りが変わらなかったら状況は変わっていないのと同じだ。


自分を変えるっていうのは、僕には無理なことだってわかってる。

それは昨日まで物凄く暗いヤツが急にハイテンションで明るいヤツになったら、どうだろう?


きっと他人から無理してるとか思われたり気持ち悪がられたり見方が変わるだけ。

そう、大方悪い方に。これは被害妄想だけど僕は自分で自分を変えるとただただ思うだけで、そんな時の他人の視線や評価が怖い。


---だから僕は変化を外に求める。


あいつが変われば良いんだとか、環境が変われば良いんだとか他人任せだ。

実際そんな風に考えたところで何も変わらない。変化のない【いつも】が続くだけ。

結局のところ自分が変わるにしても周りや環境が変わるにしても、考えているだけでは何も始まらない。行動しなけば変わらない。


---その漠然とした何かを変えたくて、あの日僕は決めた。



*************************************



僕は家の玄関を開け帰宅する。


「ただいまぁ」

「あぁ、お帰りセイちゃん」


家の中にガラガラっと扉を開けて入ると、奥の部屋から祖母の声がしたので挨拶を返す。僕は靴を脱いでそのまま台所まで行き、手洗いうがいをして濡れた手をタオルで拭きながら祖母がTVを観てるリビングのソファに腰を下ろす。


「セイちゃん、学校の説明会どうだった?」


帰宅後にリビングで今日あった話や質問やら適当な話を色々してる。


「うーん、変な学校だったけど...なんか楽しそうだったよ」

「そうかい、そうかい(ニッコリ)」


こんなやり取りが我が家では日常的なテンプレになっていて、ばぁちゃんは僕が今日行って来た学校の入学説明会(変なとこは端折って)についてなんだか嬉しそうに楽しそうに笑顔で聞いてきてくれた。


「とりあえず、じぃちゃん帰って来たらまた話すよ」

「あら、そう? じゃあおばぁちゃんは夕飯の支度しようかしら」


僕は現在高3で来年には卒業だ。小学生の時に両親を事故で亡くし祖父と祖母に引き取られてから、この家で3人で暮らしている。僕が家のお金のことを心配をしないように祖父母は気を使って昔から【そういう振舞い】をしてくれる。


けどそういう心配を掛けないように僕に気を使っているのが言わずとも伝わってくる分、高校卒業後はお金の掛かりそうな大学に進学を考えず。...進路はなんとなく興味のあった分野の専門学校に通うか就職しようと思っていた。


僕にとって進学とはその程度だったが、ひと月ぐらい前に【とある学校】から届いた【入学説明会ご案内のダイレクトメール】


---それが僕の始まりだった。



*************************************



「なんだこれ?」


帰宅して一息着こうと冷蔵庫から飲み物を取り、リビングに行くとテーブルの上にいくつか郵便物が置いてあった。その中で嫌でも目につく封筒がある。


真っ黒の封筒に宛名と住所が印刷されたシールが貼ってあり異様だ。気になって手に取る。...宛名を見ると自分宛で差出人の記載は無し。


(なんか嫌な予感しかしない...この封筒)


---とりあえず封を切り、冊子や書類を取り出して確認した。



[学校法人 エクレツィア勇者学院 入学説明会ご案内 参加無料!]

【将来、勇者になって異世界でワクワクする冒険しませんか?】



「は?なんだこれ異世界!?...え、勇者学院!?」

「なぁに?どうしたんだい?セイちゃん」

「あ、ばぁちゃんなんでもないよ!なんでもなーい」


不幸の手紙的なもの。いたずらか?と思って軽い気持ちで開けた封筒のあまりに突飛な見出しの文章にびっくりして、思わず声が出てしまう。それが奥の部屋のばぁちゃんにも聞こえたみたいで、とっさに誤魔化した。


その見出しと共に1枚目の書類には、説明会の日時や場所など当日のスケジュールも色々書いてあった。...この時既に僕は【将来、異世界でワクワクする冒険しませんか?】の一文で、心の奥からやってきたドキドキやトキメキが止まらなくなって内容に釘付けになり夢中に読み始める。


(ははは、勇者学院って意味わかんないけど。すげぇ、なんか高まる!!)


また同封されていた冊子には、取り柄もない普通の子が勇者になって魔王を倒す感じの○研ゼミ的な漫画が描いてあったり、勇者の心得なんて誰得な内容が書いてあったりした。


(うわぁ、こういうの懐かしいなぁ。なんか昔読んでた雑誌みたい)


どんどん読み進めてしまう僕の目を更に惹いたのは【入学金・授業料 無料!】という一文。


(...怪しすぎる。なんか怖くなって来た)


タダでさえ意味の解らない学校から届いた理解が出来ないような内容の入学説明会の案内。...更に全部無料って。こんなにも上手い話があってたまるかと思った。けれど僕にとってはお金が掛からないって部分にはかなり惹かれる。


いままでもずっと色々なとこで祖父母には金銭面で負担は掛けたくないって思ってやってきた。だから入学金/授業料無料っていうのは正直に一番魅力的だった。


しかしこの案内。よくよく読んでも楽しそうなことや、良いことしか書いてない。授業の内容もわからなければ、異世界に行こう!みたいな一点張りの内容でどうやって異世界に行くのかも説明がないし。簡単簡潔にまとめて言えば[とりあえず興味があれば来い]みたいな感じだ。


(どうしよ、不安しかない。)


けれどそう思った以上に漠然と【何か変わりたい/変えたい】となにかモヤっとしたものに憧れ、ずっと考えることしかしてこなかった僕はここに行けば [なにか]が[なにもかも] 変わる気がして、決めた。



「行ってみよう、説明会に!」



---この日、思いも寄らず僕に唐突にやってきた。...そう、きっかけだ。



*************************************



じぃちゃんが夕方過ぎに帰宅して3人揃っての夕食を食べた後、各々が一息つきくつろぐ時間。僕は思い切って祖父母に話があると伝えた。


「で!じぃちゃん、ばぁちゃん。この学校に通いたいんだけどさ!」

「急に大声出して何を言っとるんじゃ?」


テーブルには今日行ってきた学校の資料を広げて、入学説明会の話(不安に思われるだろう部分は端折って)する。祖父母ともニコニコして聞いてくれてたから僕はその場の流れというか勢いというのか、学校に行きたい!って言ってみた。


「...セイや、儂にはお前がなに言っとるか全然わかんのじゃが?」

「おばぁちゃんもよ。...ほんと勇者になる勉強って、セイちゃんなに言ってるの?」


(おぉぅ。2人とも当然の反応過ぎて...なんも言えない)


「あ...いや。とりあえずね、入学金も授業料も無料だから!もしダメだったらすぐ辞めて仕事探すし!」

「あのな、セイや。儂はそういうことを言っておるんじゃなくてな...」


「そうよ。ダメだったらすぐ辞めるからとか、そういう話じゃなくて...セイちゃん。ちゃんと自分の将来のこと考えて言ってるの?」

「いやいや、ばぁさんや。そういう話でもなくて...そうだな。儂が言いたいのは勇者になるっていうのがなぁ。あまりに...突飛な話すぎて」

「おばぁちゃんはね。セイちゃんには普通の子みたいに、大学でもなんでも学校行って普通の仕事して欲しいのよ」


2人の言うことは、もっとものことだった。...でも少なくとも僕がやりたいことには否定的ではないように思え、あくまで僕のことを心配しての言葉だった。それが頭では理解出来ていても、ついムキになってしまい言ってしまう。



「じぃちゃん、ばぁちゃん。僕は変わりたいんだ!」



その一言がきっかけで、僕は思いつくまま勢いで話してしまった。その話の半分以上は説得じゃなくて、全然いま話さなくても良いような話。現状に不満はないけれど、この先も自分はこのままで良いのか?とか。


他にも小学生の頃に両親が亡くなってから自分でも気づかない内に祖父母を含めた他人に対して壁を作り、気づけば周りに対して一定の距離を置いて過ごして来ことが辛かったとか。そうやって自分でもどうにも出来ずに過ごしてる内、やりたいことや欲しいと思ったものを我慢してきたこととか。


(あぁ、こんなこと言ってさ。もうこれ後で絶対に後悔するやつじゃん)


ただただ今の僕を見て欲しくて知って欲しくて。祖父母は呆気に取られてたけど、僕の話が終わるまで無言で聞いてくれた。話が終わると、僕はボロボロと涙を流し顔もグシャグシャだった。押し殺してたモノが爆発したあとだった。


「セイや、お前はまだ若いんだ。自分がやりたいと思ったことを失敗しても取り返す時間ある。...好きなようにやりなさい」

「ちょっと、おじいさん!」

「まぁ、なに。ばぁさんはなにも言うな。...儂はもうこの話についてはなにも言わんよ。ただ儂ら家族じゃ。いつでも頼ってくれの」

「...はい」



---僕が話終えて少しの沈黙の後、じいちゃんは僕を見て言った。...その言葉にまた涙がボロボロ出てくる。



「...お前のこと、儂はちゃんと見てやれてなかったな。...すまなんだ」


そう言ってじぃちゃんは立ち上がり、リビングを出て行った。ばぁちゃんの方に視線を送ると、今にでも僕の頭を撫でてきそうな顔をしていた。そしてばぁちゃんは何も言わずニッコリと僕へ微笑みかけ、じぃちゃんの後を追うように部屋を出て言った。


「はぁ...何やってんだよ、僕は」


学校へ行くことには許可して貰えたものの...僕は勝手に勢いで突っ走ってしまった挙句、号泣してしまった。今になってどうしようもく情けなく恥ずかしい。明日の朝、どんな顔すれば良いんだろうか...辛い。翌朝は僕の心配もよそに、じぃちゃんもばぁちゃんも変わらずいつも通りの朝だった。



---ただ、ばぁちゃんには号泣したことを物凄くイジられた。



*************************************



---引越しの日。



時間はあっという間に...なんか過ぎなかった。まず勇者学院に行くことが決まってから、すぐ入学願書を書いて送った。入学説明会で入学願書送る=入学決定なんて言われてたけど、送ってからそれ以降なんにも音沙汰がなく本当に春から通えるか不安になって何度も問い合わせの連絡をしたりした。


...結局、勇者学院に通う実感があまりない。問い合わせする度、僕の電話の話を聞いてたばぁちゃんが詐欺じゃないのか?って心配してた。


あと高校の担任や友達に説明するのが、ものすごく大変だった。とりあえず勇者になるための学校に通うなんて口が裂けても言えなかったから、外国に語学留学するって誤魔化した。


「そんな留学するなんて言ってら、此処に住んで学校に通ったら面倒じゃろう?」

「うん、なんかその場の空気に飲まれちゃってさ...」


それをじぃちゃんに話したら協力してくれて学校の近くに引っ越すことになった。ばぁちゃんは何も引っ越さなくてもという感じだったが、じぃちゃんがいつの間にか説得してくれてたみたいだ。


「セイちゃん!駄目だったら、いつでも帰ってきて良いんだからね!」

「セイよ、たくさん失敗して良いんじゃからな」

「あはは、なに言ってんだよ、じぃちゃん。帰ろうって思えばいつでも帰ってこれる距離なんだから大袈裟だよ!」

「じゃあ、いってきます!」



---僕は変わる/変える為に、とりあえず勇者を目指してみることにした。






時系列分かりづらかったら、ごめんなさい。

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