第七歩 転生者
精霊島
先程いた大陸と少し離れたところにある島で精霊種が住んでいるところ
モミジの説明は以上だった。
もうちょっと何にかないのと聞いたら、もう少し待ってくださいと返された。まぁ、なにか理由があるのだろう。
「あそこが私達が住んでいる村です。」
すると先の方に木のバリケードで囲まれた村が見えた。
なんか精霊って森のなかに住んでいるイメージだったんだけど全然人と変わらないのな。
村の門らしき所まで来ると上のやぐらから弓を持った男が誰何してきた。
「止まれお前たち。どこのものだ」
「モミジです!例の件で出ていました!」
モミジが大声で返していた。
俺も何か返事しないと駄目か?
「よし、よく帰ってきた!おい、門を開けろ!」
行けたみたいだな。しかしよくよく考えると村にしては厳重すぎないか?精霊ってえらく物騒なのか。
「さぁ、行きましょう。」
モミジに促され門をくぐり村へ入る。中はさっきまでいたあの村とそう変わりはなかった。家があり、畑がありと田舎感満載である。この世界どこもこんな感じな気がしてきた。首都とかないのかね。
「この家です。今から会って頂くのは我々精霊の中でもお偉い方ですので気をつけて下さいね。」
周りより確かに大きい家だ。そんな偉い人に会わせられるのか。今更だけど何されるか分からずに勝手に連れてこられ来て大丈夫だよね?付いてきた方に問題あるけど。
「失礼します。」
モミジに続き俺も入る。
部屋のなかは何故か懐かしいような印象を覚えた。あ、靴は脱ぐのか。
家に上がると奥の椅子に一人の老人が座っていた。白髪混じりの短髪は整えてあり、煙草を吹かし、窓の外を見ていた。足が悪いのか、杖を近くに置いていた。
「例の方を連れてきました。」
そうモミジが言うと、老人は煙草を置いて立ち上がり、杖をついてこちらに歩み寄ってきた。何とも言えない雰囲気が漂う人だ。いや、精霊か。
「ようこそいらっしゃった。まぁ、座ってください。」
差し出された手を握り返し、そのまま近くの椅子に座る。何をされるのか分からず緊張していたが、予想とはまったく違う事が起きた。
「これをご存じかな。」
そう言うと長い箱を取り出し、開けた。
「これって……」
そう俺でも知っている、俺たちの世界ものだ。
三八式歩兵銃
大日本帝国軍が開発、採用し終戦まで使われた旧日本軍主力小銃であった。
「良かった、これがなにか知っているね。」
「どうしてこれがここに?」
「それは私が使っていたものだよ。」
「貴方はもしかして……」
「そう、君と同じく転生してきた者だ。」
「貴方は転生されてからずっとここで暮らしてきたんですか?」
「その通り、私はカツトシという。南方のある島に派遣されたが空襲があってね。そこで戦死したと思ってたんだが、目が覚めたらここにいたよ。その後は大変だった。言葉は通じず、この世界で右も左も分からずただ闇雲に進んだ。そしてこの精霊島に行き着いた。精霊達は優しく、私を受け入れてくれた。」
「精霊達が……。」
「そう。」
カツトシは椅子に座り直し、話を続けた。
「だが、いつまでも世話になるわけにはいかず、何か恩返し出来ることがないかと聞いて回った。すると精霊は安心できる場所を求めていることが分かった。君はこの世界と精霊についてどこまで聞いてる?」
「精霊には微精霊と精霊がいるとまでしか。」
「この世界は人種、精霊の他にも幾つかの種族があり、それぞれが国を成している。先程君がいた村は人種が統治しそれを含め人種の国、ソリエト連邦がある。そして更に西の方に獣人種が統治する国、フラシス王国があり、北西には魔人種が統治する国、ドンツ大帝国がある。」
「獣人種と魔人種ですか。」
「獣人種は見た目が動物の様な形をしており、戦闘力が高い。そして魔人種は魔物を飼育し、魔法と呼ばれる技を使う。」
「そんなのが存在するんですか?」
「確かにいる。そして厄介なのが三国がみなそれぞれの種族のみを崇拝する国教を採用していることだ。当然三国揃って戦争状態だ。最近は静かになったがね。そして問題の精霊種だ。」
「問題ですか。」
「そう、問題だ。結論を言うと、精霊には国がない。そして、他の種より決定的に戦闘力にかけるのだ。だから他の国からは見下されている。」
「そこで貴方は精霊の居場所を作ろうとしたんですね。」
「ああ、まず私は精霊達を集めてここに村を作った。少しずつ規模を広げて精霊を集めてまた規模を広くして。そんな事を繰り返しながらやってきた。だが、奴らが来た。」
「奴ら?」
「ドンツ大帝国、魔人達だ。奴らこの島に魔物を侵攻させてきた。奴らは我々の村を潰し、畑を荒らし、挙げ句に精霊達を捕獲し始めた。」
自然と拳に力が入っていた。
「反撃はしなかったんですか?」
「当然やった。だが精霊には力がない。私が一人頑張ったところでたかが知れていた。そして今では島の北西、最初の村まで後退してきたというわ訳だ。その時に足もやられてな。」
「そんな……、その銃を作って精霊に使わせればよかったんじゃないですか?」
「これは私が最善を尽くしてもこの一丁を作るのが精一杯だった。配備しようにも出来なかったんだ。」
その時だった。
「魔物だぁぁ!!!」
先程の櫓からだろうか、叫び声が聞こえた。
「奴らめ、遂に来たか。戦える者はすべて出ろ!!ここをやられたらお仕舞いだぞ!!」
カツトシはそう叫びながら立ち上がった。
「私も出る、君たちはそこに居てくれ。」
「その足でですか!?」
「私が出ないと精霊達は戦えん。それにここで死ねるなら本望だ!」
三八式歩兵銃を掴みそう言い放つと、ドアを開けた。
「そういえば、君の名前を聞き忘れていた。」
「…… ユウ です!」
「そうか!ユウ、何かあったら後を頼む!」
言うと同時に出ていった。
「門を破られるな!弓兵、撃て!!」
「この魔物どもめぇぇ!!」
「そっち行ったやつをやれ!」
「こいつらぁぁ!」
「うわぁぁ、やられたぁぁぁ!!!」
「誰か来てくれ!!!!」
たくさんの声が聞こえた。あの時の記憶が甦ってきた。悲鳴、銃声、ジェット音。またこっちに機首が向いて……。
「ユウさん!大丈夫ですか!?」
「っ!?」
モミジがこちらに心配そうに見ていた。
「ごめん、もう大丈夫。」
あの時の二の舞はもうごめんだ。
「モミジ、助けに行こう。皆を。」
モミジは驚いた顔をしたが、一瞬で覚悟を決めたようだ。
「はいっ!」
強い精霊だ。だが、助けに行こうにも武器がないと何も出来ない。何かないのか……。ん、待てよ?
「モミジ、確か微精霊は建築、つまり物作りが得意なんだよな?」
「はい、その通りです。」
「この村に木材と鉄を備蓄してる場所ない?!」
「確か、隣の倉庫にあるはずですけど……」
「よし行こう!」
家を飛び出し、すぐ隣の倉庫に走った。倉庫の扉を開けると確かに資材が合った。
「ユウさん、どうするんですか?」
「今俺の周りの微精霊ってどうなってる?」
「えっ!?相変わらずたくさん付いてきてますよ??」
「そっか、ありがと!」
「え!?ちょっと何するんですか??」
微精霊の使い方というかそういうのは全く分からないけど、頼めば何とかなるか!集中するため目を閉じる。さっき見たのをイメージして……
「え、なんで木材が勝手に?」
いい感じかな……。頭のなかで組み立てていくつもりで。すると右手に重みが。
目を開けると、そこにはさっき見た三八式歩兵銃が。
「よし、上手くいった!」
「微精霊をこんな使い方する人初めて見た……」
「よし、行ってくる!モミジは待ってて!」
「あ、はい!」
ハイポートの状態で走って門まで向かう。まだ破られてはいないみたいだが苦戦しているようだ。
「くそぉ!ここまでか!?」
「おおーい!!カツトシさん!!!」
「なんだ!?ユウか!何しに来……、!?それは三八か!?どこでそれを!」
「話は後で!援護します!弾下さい!!」
「そうか!助かる!!これしかないが使え!!」
そう言うと装弾子を2つ渡された。
計十発、無駄に出来ないな。
「ユウ、左の奴を頼む!」
「了解!」
敵との距離は約25m。膝うちの姿勢をとり、呼吸を整える。一番手前の奴に照準を合わせる。そして、ゆっくりと引き金を引く。
ダンッ!
肩に少しの衝撃が来た。目標には……命中。魔物は動かなくなった。零点規制をしてないが流石にこの距離だと当たる。貢捍を引き、素早く次の弾を装填する。
「今更だが使い方分かるのか!?」
「自分も軍人やってたんで!」
次の敵を撃ち終わり、合間に返事をする。
「なんと!?これはすごい巡り合わせだな!!私も負けとられん!」
お互いに奮闘しつつ少しずつ敵を減らしていく。
しかし
ヤバい、もう弾が切れる。やはり十発は少なかったか。そして最後の一発を撃ち終わった。
くそっ、ここまでかっ!
まだ残っていた敵は……
撤収を開始した。
皆が黙りこんで状況を把握している。
勝ったのか……。
そうして俺の最初の戦いは終わった。