第四歩 思考再開
白い世界のなかにいる。周りに何にもない空間。全てを受け入れてくれそうな場所。誰もここにいない、いや、遠くの方に人影が見える。女性……だと思う。後ろ姿だけど、髪が長いからそうだろう。その女性のところだけ変にもやがかかっているようでよく分からないが。でも、何故かそこにいかないといけないような気がして、特に考えた訳でもなく歩き出していた。
少しばかり歩いた辺りで女性はこちらに気づいた様だ。結構近づいたはずなのに相変わらず表情まではよく分からない。けれど、どうやら驚いているのだろうか。すると今度は何か喋りかけてきているようだ。姿ばかりか声もはっきり聞こえない。だが、
待 っ て る
そういっているのだけは分かった。
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「んー……」
日が眩しい。でも、まだベットで寝てたいしなぁ。ん、ベット?そこで俺はなんとか起きることに成功した。見たことないけど確かにベットだ。となるとここは誰かの家だな。あの時倒れてそれから……。だめだ、そこからの記憶がない。確かか倒れる前、急に不安に襲われたんだっけ。特に日頃から情緒不安定って訳でもなかったんだけど、なんであのときに限って……。それに、あの人はどこにいったんだ?
一一いや、考えるのはあとだ。まずはこの家の主人にお礼を言わないとかな。身体を起こしてベットから離れた。ちょっとふらっとしてるが問題なし。窓から外を見てみると、ここは村なのか。家や畑がちらほらある。いいとこだなーなんて思いつつ部屋を出ようとすると、扉が向こうから開いてきた。自動なのかと驚きかけたけどそんなわけはなく、部屋に熊が入ってきた。訂正、服を着た熊だ。体長約2メートルのデカイ男は辺りを見渡してから扉の横にいた俺に気がつくとその両手に持っているもので襲いかかってきた。
「うわっ」
つい声が出てしまい後ずさりしたが、デカイ男のその手にはお盆にパンとコップ一杯の水が載せてあった。……。つまり、この天使で仏のような人がこの家の主人だったみたいだ。ビックリしたよ、まったく。てか、声だしたのが恥ずかしい。
お盆を受け取らせて頂いたところで自分が空腹なことに気が付いた。早速頂きたいところだが、
「泊めて頂いた上に、食事までありがとうございます」
……?何にも返答がないんだけど、何かおかしかったかな?顔を上げてみると、難しそうな顔を……。しまった言葉が通じなかったか。んー、どうしたものか。必死に伝えれば通じるか?
という事で、拝みながら頭をペコペコしてなんとか感謝の気持ちを伝えようとした。すると親指を立ててニコッといい笑顔に。よかった、伝わったみたいだ。その後家の主人は手を振りながら部屋を後にされたのでありがたくご飯を頂く。お腹が空いていたのですぐに食べれられた。
「さてさて……」
腹も膨れたところで少し現状整理と行こう。
一つ、自分はあの時死んだのか?
これについては多分死んだのだろう。あの時撃たれるまでの痛みは確かだったのだから。
二つ、ならここはどこなんだろう?
天国……といいたいがそれにしては現実すぎる気もするが天国に行ったことないのでよく分からない。保留といこう。
三つ、今後の生活について。
これが一番の問題点。ここで生活するにしても問題が多々ある。文化、人間関係、社会制度等々。いままで生活してきた物を変えるのは結構大変だと思う。まして一番困るのが言葉が通じない。何をしようにも、何を知ろうにも、人から聞くことが出来ないのはきついな。
以上が大まかなところか。これらを踏まえて取れる選択肢は……
一、ここで生活する
二、旅をする
三、何処かで自分の居場所を作る
となるか。一は安定しているが、自分が慣れて受け入れてもらう必要がある。二は落ち着く場所が見つかればいいが、リスクが高すぎる。三つ目の選択肢、正直これが出来れば一番いい。自分と考えが合うものだけで集まれれば安定して生活できる。だけど、今すぐするには情報が少なすぎる。
なんで、情報収集から始めるよう。当初はここで暮らさせて貰うことにして、目標として三番目の選択を取れるようにしたい。そうと決まれば早速行動だ。
その場に立ち上がり、気合いをいれて部屋を出た。