第二歩 会話術
「○○○」
やっぱり何て言ってるか分からんな……。
英語とかロシア語って訳でもないし、完全に違う言葉だ。
「○○○?」
うん、尋ねられてるのは分かる。てか、かわいいな。いやいやいや、それよりどうしたものか……、よし。やっぱり会話の始めは挨拶と自己紹介からだな。
「こんにちは!」
あ、首かしげてる。言葉わからなくても頭の上にはてなマークあるのがよく分かる。だが負けんぞ。
「自分の名前は……」
そこまで言いかけてから気が付いた。
ーーあれ、俺の名前ってなんだっけ?なんで名前が出てこないんだ?そもそもなんでここにいるんだ?俺はあの時死んだはずなのに、いや、本当に自分は死んだのか?考えれば考えるほど自分の今までが分からなくなってくる。自分はいくつで、どこで生まれて、どこで育ってきたのかすら分からない。怖い、怖くてしかたない。俺はどうしたらいいんだ?何をしたらいいんだ?もう訳が分からない。嫌だ、嫌だ、嫌だ……。
ふと、自分の手に温もりを感じた。
え?
驚きつつも手を見てみると、彼女が手を握ってくれている。自分より小さな手だが確かな優しさがそこにあった。顔を上げると、とても心配そうにこちらを見ていてくれていた。
「○○○??」
言葉は分からない。けれど自分の事を心配してくれているのが分かる。それを理解できる頃には、少し落ち着きを取り戻した。
「ありがとう」
伝わらないだろうけどこれだけは伝えないと。案の定、彼女は一瞬難しい顔をしたが、ニコッと笑顔を見せてくれた。やっぱりすごくかわいい。ん?ちょっと違和感が……。なんかさっきから視界が狭くなってきてる。あ、だめだ。立ってられない。
ドサッ
「○○○!?」
なんか心配してくれてるっぽいけど何にも分かんないんだよ……。顔近いな、てかすごいかわい……い……。
覚えているのはそこまでだった。