人との生活
朝の冒険者ギルドは、慌ただしい。
依頼板にも近づくのが大変だ。
やっと近づいて、Aランク依頼を探す。
ランクの高い依頼は少ない。
キマイラ討伐の依頼を見つけて、依頼書を板から剥がす。
周りがざわついた。
「おいおい、依頼間違えてねえか、お嬢ちゃんよ」
「はははっ、駆け出しで依頼も分からねえのかよ」
「キマイラなんかと遊ばねえで、俺たちと遊ぼうぜ、お嬢ちゃん」
柄の悪いのに絡まれた。
ギルドの中で、騒ぎを起こすのは困る。
横から声がかかる。
「お前ら、誰を見て喋ってるんだ」
「あ、デュークさん、ソロでキマイラとか、馬鹿なヤツが…」
デュークさん?隊商の護衛の、Bランクの人だ。助かった。
「お前ら、知らないのか。俺たちのパーティーを救った、戦の女神ユキノだぞ」
「あ…例の空より舞い降りる戦神ユキノ」
何だって?頭が痛くなってきた。頭じゃないところも痛い、何だその二つ名、厨二病か。
「デュークさん、ご無事で何よりです」
「ああ、ユキノ。会えて嬉しいな」
何気に呼び捨てだな。
「とりあえず、女神とか戦神とかだけはやめて貰えますか?」
「もっと凄いのを考えてるところだが」
「やめてください。絶対に」
「そうか?二つ名持ちは結構いるぞ」
「嫌です。恥ずかしいです」
「まあ、いいか、キマイラ討伐、受けるのか?」
「はい、ソロじゃ駄目ですか?」
「何か、Bランクのパーティーでも失敗してるらしいが、ユキノなら平気だろう」
「デュークさんのパーティーは?依頼が決まってないなら一緒に行きませんか?」
「いいのか?役に立つか分からないぞ」
「初依頼ですから」
「じゃあ、今日はパーティーを組もう」
「助かります」
依頼書と、冒険者証を、依頼受付に出す。
デュークさんたちも冒険者証を出す。
目的地は知らない場所なので、ギルドから出る馬車に乗る。途中、人を降ろしながら、二時間ほど走り、森の前に着いた。
少し魔力の濃い森だ。
馬車の迎えは何時頃が良いか聞かれたけど、要らないと言っておいた。
デュークさんのパーティーは五人。護衛の時は八人いたけど、本来は五人なのだろう。
この人数なら、多分瞬間移動で運べる。
森に入り、探知をする。獣か魔物か、少し多いな。
さっさと進みながら、出てくるものは倒す。
開けた場所に出たら、早めの昼休憩。
結界を張る。
デュークさんたちは、無言で付いて来る。
「結界を張ったので、安全です。昼食にしましょう」
「ああ、分かった」
燻製肉と果実、パンも食べる。飲み物は、買って来たお茶だ。
充分休憩したら、出発。
探知をしながら、獣や魔物は倒し放題だ。
デュークさんたちパーティーも、倒している。
探知の中に、強い反応があった。
これがキマイラかな?
アンデッドの森の魔物くらいの反応だけど。
素早く進み、少し開けた場所に、それはいた。長い尾は蛇、翼を持ち、胴体はライオンのようで、首が五つ。狼や虎や、それぞれ違う首がある。
初めましてキマイラさん。そしてさようならだね。
地面を蹴る。剣を出して、まずは毒のありそうな蛇の尾を断ち斬る。
キマイラも飛翔する。五本の首が攻撃してくる。
面倒くさい魔物だ。攻撃を躱しながら、首を風を纏わせた剣で斬る。翼も斬るか。
落ちていくキマイラの、首を、全部切り落とす。
ふん、師匠と比べたら、攻撃が甘いわ。
10分くらいしか、掛からなかった。
キマイラを袋に吸い込む。
探知をしてみたけど、特に強い反応は無い。
「依頼達成ですかね?」
「そうみたいだな…」
また森の中を戻るのは面倒だ。
「皆さん、集まってください」
「あ…ああ、何かあるのか?」
集まったところで、全員王都前に移動と念じる。
「こ…これは?ここは…」
「瞬間移動です。便利ですよね」
「…やっぱり神だろ…」
「人ですから!」
門を通過して、ギルドに戻る。
キマイラを出して、依頼達成の証明をして、みんな冒険者証を出して、何かの機械にカードを読み取るようだ。達成報酬を分ける。
買い取り受付に、キマイラや他の獲物を出す。パーティーでの仕事だったから、キマイラの分のお金を分けて、みんなに渡す。
「何か…すまないな」
「一人より、楽しかったですから」
「楽しかった…?はあ、やっぱり凄いな」
「あ、いえ、心強かったです。また何か、教えて貰うかも知れません」
その日から、二つ名に、キマイラ殺しが追加されたことは、痛かったけど。
初依頼は達成できた。
ちなみに、デュークさんのパーティーは、結構有名な凄腕パーティーだ。
実績もあるし、信頼もされている。
暦で確認したら、一週間は七日、分かりやすく、日曜から土曜と呼ぶ。
今日は、八月24日だった。曜日は火曜。
ひと月は四週間、28日で、固定。12月のあとに感謝月と呼ばれる月がある。
それで、一年は364日。
時間は24時間制で、ホッとした。
次の週明けに、獲物を売るので、ギルドの依頼は一日おきくらいにして、聖樹の側の森でも狩りや採取をする。
マルト商会が、特に何を求めるか、今後決まっていくだろうから、薬草も集める。
アンデッドの森の果実は多く集める。
自分でも食べたいからね。
約束の週明け、九月二日、マルト商会に行く。五階の、支店長室ではなく、一階の裏庭にある建物に連れて行かれる。
獲物の解体をする場所もある、大きな部屋だ。
ダグラスさんがいた。
「早速ですが、前回の獲物は、獣ではなく、魔物でした。魔石が出ました」
「はい、多分魔物だと思っていました」
「魔石は貴重ですから、お持ちになった方が良いでしょう。魔石は魔道具にも使われます。商人が扱うより魔術ギルドに直接売る方が良いです」
「魔術ギルド?ですか」
「はい、魔法の研究や魔道具の開発をするギルドで、魔法学校や、魔法学院の上部機関というところでしょうか」
「そんなところがあるんですか。魔術ギルドには、紹介する人がいなくても行けまか?」
「いえ、勿論紹介状は書きます。冒険者ギルドからの紹介状もあれば、大丈夫でしょう」
「なるほど。ありがとうございます」
前回の分の魔石80個を渡された。
かなり大きく、宝石のようだ。
今日は、率直に、どのくらいの果実や薬草、獲物が必要か聞く。
全体に売れ行きは良かったそうで、薬草も、今では貴重な物らしい。
では、と獲物を10体ずつ出す。いくつかは、すぐに解体するようだ。
果実を籠一杯ずつ、薬草も籠一杯。
苔は、すぐには生えないから、生えたら取って来ると約束した。
これから秋なので、果実や木の実が沢山取れるようになるだろうから、などと話をしながら、お金を受け取る。
また来週に、今回の魔石と、魔術ギルドへの紹介状を渡すと、約束された。
少しずつ、人の中で暮らすことには慣れてきたと思う。
宿屋は、銀貨二枚くらいの安いところから、金貨が必要な宿屋まであるようだ。
雪乃が滞在している宿屋は高い方だ。若い女性が安心して泊まれるように配慮してくれたみたいだ。
宿代は、二食付き銀貨20枚。宿屋には、金貨を20枚預けている。暫くは大丈夫だ。
マルト商会を出たら、昼過ぎになっていた。
料理屋のある方へ、歩いて向かう。
歩きながら、店を覗き、買い物をする。
少しお店が空いたかなと思い、日本人の料理屋に行く。
時々来てたから、すぐカウンター席に案内される。
お客さんはもう少ない。
本日の定食を頼む。出された麦茶を飲み、わくわくして待つ。
トンカツ定食だ。いや、豚肉ではないかも知れないけど、トンカツ定食。
頂きます。と手を合わせる。
味噌汁は、豆腐が入ってた、ご飯を食べ、カツを食べる。小鉢は野菜の和え物だ。
店主や店員が、見ていた。
食後は焙じ茶だ。サービスか、白玉が出た。
白玉に小豆。いただく。
食べ終わったら、店主が話しかけてきた。
「お客さんは、やっぱり日本人かな?」
「はい、塔ノ沢雪乃と言います」
「そうか、箸を使うし、見た目もそうだ」
「ご主人も、店員さんもですね」
「そうだよ。転移者と言うようだね。日曜の夜は休みにして、転移者会みたいなことをしてる」
「他にも、いるんですか」
「数は少ないし、来た時期や年齢も違うが、中には、帰る方法を研究している人たちもいる」
「そうなんですか」
「良かったら日曜の夜に覗いてみたらいい」
「はい、ありがとうございます」
お勘定をして、店を出た。
懐かしい気持ちと、怖い気持ちがある。
この世界では、魔法のおかげで、好意的な人が多い。
転移者は、どうだろう。いきなり知らない世界に放り出され、苛立っている人もいるかも知れない。
日曜日か、よく考えよう。
秋になったので、聖樹の側の森で、頑張って狩りをしたり、採取をする。
聖樹の恵みも貰う。泉の水は貴重だから、瓶を買い足して、汲む。
果実や木の実、薬草と、時々水場を見に行く。雨季が激しく、夏も蒸れるので、薄っすらと苔が生え始めている。
一年に一度くらい、雨季の前に採取できるかも知れないな。
師匠はいない。けど、いつも一緒にいるつもりだ。
聖樹の側で、昼食を食べる。
師匠のくれたパンは美味しい。
ワインはまだ、飲まない。
誰か、一緒に飲む仲間ができたら飲もう。
聖樹の側の森も、飛翔で通り過ぎた場所を狩り場にしたり、珍しい物がないか、探す。
魔力の濃い森には、珍しい物がある。
少しずつ北へ、最初に落ちた辺りまで、探索の範囲を広げる。
北へ行くほど、魔力が濃くなる。
酷いな、こんな場所に落とされたのか。
火を吹く大蛇がいた。シリーズ追加だな。
なんで北なのに火なのか?分からない。
新しい果実も見つけたので、採取する。
夕方には、王都の側に移動して、門を通過する。時々ギリムくんがいて、親指を立ててくる。親指を立てて返す。
ギリムくんが、喋っただろうから、門はほとんど顔パスだ。
聖樹の側で暮らして、王都に通うのも考えたけど、師匠の願いには、人の中で暮らすことも含まれているように思う。
宿屋での生活も、快適だ。
物資の返還はまだ遠いだろうけど、それまでは、王都で暮らしていく。
日曜日、冒険者ギルドに行く。週末のギルドは混んでいる。
学生が週末だけ冒険者をするかららしい。
依頼を見て、早く済みそうな依頼を探す。
キマイラがいた森の、虎の魔物討伐を受ける。
門を通過したら、瞬間移動。
探知をしながら、さっさと進む。
王都近郊では、ここは魔物のいる貴重な森だ。
出るものは倒し、袋に吸い込む。
キマイラがいた場所辺りまで、一気に進む。
早めの昼食を食べたら、また探知。
右奥に、少し強い反応がある。
迷わず向かう。
いたいた。虎のちょっと大きいの。
キマイラより反応は弱い。
愛用になってきた、マジックアイテムの剣を出す。
こちらに気が付き、飛びかかる体勢の魔物。
地面を蹴る。雪乃が今いた場所に飛びかかる魔物。こちらは空中だ。
卑怯だというように唸る魔物。
一撃必殺。
上空から加速して、目の間を狙う。
師匠のマジックアイテムは、強力だ。
魔物は倒れた。
近づいて袋に吸い込む。
後は、王都前に移動して、門を通過。
ギルドに戻り、依頼達成報酬を貰い、マスターに話があることを伝えて貰う。
魔物たちを買い取り受付で売り、暫く待つ。
ドルトスさんが来て、一階の奥の応接室に案内される。
「なかなか活躍してるみたいだな」
「何か恥ずかしいです」
「で、用事は何だ?」
「魔石を売るのに、冒険者ギルドから魔術ギルドに、紹介状がほしいんです」
「ああ、そうか。ちょっと待ってくれ」
「はい」
少し待つ。
すぐに、紹介状を書いてくれた。
「ありがとうございます」
「魔術ギルドに伝手ができれば、楽になる」
「そうですね。まだ頑張ります」
「二つ名が増えるな」
「やめてくださいよ」
改めてお礼を言い、ギルドから出る。
少し迷ったけど、日本人の料理屋に向かう。
いずれは通る道だろう。
早いか遅いかだけだ。
灯りが消え、暖簾もない店の扉を、思い切って開ける。店の名前はタキガワだ。
店主の姿が見えた。
「やあ、いらっしゃい。みんな、新しい仲間の人だよ」
「塔ノ沢雪乃と言います」
人数は六人。私が七人目だ。
店主と店員さんを除くと四人。
女性が一人、男性が三人。
「自己紹介をしよう。私はこの店をやっている。滝川信司だ」
「店の手伝いの川本勇也です」
「高木篤志です」
「沢井健吾です、高木くんと研究をしています」
「鈴木大志です」
「木下優子です」
テーブルが、四つ、店の真ん中にくっつけられて、お酒やお茶があり、料理も数種類出されている
「雪乃さんは…木下さんの隣にどうぞ」
「はい、失礼します」
「沢井さんと高木さんの他に、橋本さんという人が、帰還の研究をしているんだ。橋本さんは、随分前から研究室から出て来ない」
「そう、ですか。50年か100年か前にも、研究がされて、召喚の魔法陣ができた話を聞いたことがあります」
「ほう、100年前くらいの記録が無いんだが、どこで聞いたのかな」
沢井さんが聞く。
「雪乃さんは若いようだけど、こちらに来てからどのくらいですか?」
鈴木さんだ。
「来たのは、半年くらい前です。昔の話は信じて貰えるかどうか」
「こちらに来たこと自体が、信じられないから大抵のことは驚かないよ」
「まあ、沢井さん、雪乃さんはまだこちらに慣れるのに大変だろうから、研究室に招待して話をしたらどうでしょうか」
店主の滝川さんがフォローする。
「ああ、そうだな、半年では大変だな」
「言葉が分かるまでがまず大変だった」
「言葉?ですか。皆さん言葉も分からない状態で、放り出されたのですか?」
「滝川さんは、言葉は分かったそうだ」
「私も、言葉と文字も分かるようです」
「何だと!何故そんな恵まれたヤツがいるんだ!理不尽に放り出されたのに!」
高木さんが叫んだ。
やはり、みんな辛いのだろうな。
少し、傷ついた気持ちだけど。
暫く沈黙が流れる。
「高木くん、気持ちは分かるが、雪乃さんすまないね、研究が進まないから」
「いえ、確かに理不尽だと思いますから」
「まあまあ、親睦を深める会だから」
「雪乃さん、私は小さな服飾店をやっています。デザインはね、ふふ、見に来てください」
「それは楽しみです。是非見たいです」
それから一時間くらい、食べたり飲んだりしながら、鈴木さんは、食品や食材の研究をして、タキガワと提携していることを聞いた、
私はやはり、少しレアなケースのようだ。
みんな、魔力はあるが、冒険者をするほどの魔法は使えないようだった。
また顔を出して、魔法学院にある、沢井さんの研究室に、そのうち招待するという話になり、今週のリンダースの転移者会は、終わった。
宿屋に戻り、部屋でお風呂に入る。
私に与えられた能力は、何に使うのか、自由に使って生きろと言われた気がする。
まだ、元の世界に帰りたいとは思わないが、
この世界中を旅して、転移者を探し、帰還に協力するのも良いかも知れない。
師匠との約束を果たしてからにしたいけど。
翌日は、マルト商会に行く日だ。
朝、ゆっくり朝食をたべたら出かける。
九月九日だ。
また、一階の奥で、果実を四種類出す。
大きな籠一杯ずつだ。薬草も籠一杯。
獲物は、火吹きシリーズ七種類を10体ずつ。
他の魔物10体。
買い取りのお金を受け取り、魔石70個と、魔術ギルドへの紹介状を貰う。
冬は狩りができるのか、聞いてみたら、冬しか取れない果実や薬草があるらしい。
魔術ギルドは、魔法学院の近くにあるそうで、魔法学校や、貴族学校も同じような場所にある。
師匠のローブを着ているので、魔法使いらしく見えるだろうから、問題は無いだろう。
魔術ギルドは、大きかった。
五階建てなのは、見慣れたが、ちょっとした学校くらいの数の建物がある。
魔術ギルドと書かれたプレートがある、正面玄関らしきところから、入る。
入った場所はあまり広くなく、受付みたいなところがあり、長い廊下と部屋が沢山ある。
受付みたいなところで、魔石を沢山持っていることを言い、二通の紹介状を渡す。
受付の人は、さすが魔術ギルド、通信機のような物で、連絡をしている。
連絡が終わり、少し待つと、案内してくれる人が来た。
廊下を右に歩き、いくつめかの部屋に案内された。
部屋に入ると、誰もいない。
案内してくれた人が、話をするようだ。テーブルを挟み、座る。
「初めまして、私は魔術ギルドの事務や魔石の買い取りを担当していますロードと言います。魔石を売っていただく担当になります」
「初めまして、冒険者のユキノです」
「冒険者ですか、そのローブは、凄いマジックアイテムですね」
「魔法の師匠に貰いました」
「近頃は見ないような珍しい物です。その腕輪もです」
「師匠は古い物を大切にする人でしたから」
「そうですか…すみません、話がそれましたね。魔石はどのくらいありますか?」
「100個で、どうでしょうか」
「……え?」
厚い布が掛けられた、テーブルの上に、魔石を出す。特に大きな物は、自分用にするから出さない。
それでも、そんなに小さな物はない。
「これは、こんなにとは」
「では、半分くらいにしますか?」
「いえ、ちょっとお待ちください」
携帯通信機みたいな物で、誰かに連絡している。ほしいな、携帯通信機。
でも通信する相手がいないや。
少し経ってから、もう一人来た。
「お待たせしました。全部買い取ります」
「ありがとうございます」
数を数えながら、魔法の袋に仕舞っていく。
「100個ですね。失礼ですが、魔石は、そんなに手に入る物ではないかと」
「はい、そうですね。魔物を多く狩りますから、手に入りますが。今のところ、毎週50個は確実ですが」
「毎週50個?あなたは、魔力も凄いですね」
「そう?なんでしょうか」
「魔術ギルドでは、魔石は必要な物ですが、一度に沢山は、困る時もあります。連絡先を教えて頂いて、必要な時に連絡させて頂いてもよろしいですか?」
ちょっと考える。
「冒険者ギルドに連絡して頂くのは、どうでしょうか?」
「なるほど。では、そうしましょう」
魔石の代金を受け取る。
袋が重いよ。
「では、また連絡をします」
「はい、それでは、また」
部屋から出て、受付を通り、建物から出る。
魔石は高く売れたみたいだ。
正直、助かる。
師匠の話にあった、西の大陸なんか、魔物だらけらしいから、凄いことになるな。
街を歩いて、お昼を食べそびれたことに気が付く。まあ、いいか。
木下さんの服飾店を見に行こう。
地図を見ながら歩く。いい散歩だな。
見つけた小さなお店はユーコという名前。
入ると、懐かしいデザインの服や小物が沢山ある。
最初に見て驚いたお店だろうな。
「あら、いらっしゃい。もう来てくれたのね」
「はい、服は大事ですよね」
「そうよね。下着もあるわよ」
「下着は凄く大事です。大人買いかも」
優子さんは、服飾専門学校の四年生の時に、王都の近くに転移してしまい、言葉も分からないので、転移者だろうと、すでにあった、タキガワに連れて行かれ、暫く手伝いをして、言葉を覚え、お金を貯めて、服飾店を出したそうだ。
タキガワは、10年以上前からあるようだ。
言葉が分からないのは、辛かっただろう。
優子さんは、苦労を感じさせない、明るい人だ。服を作るのが好きで、帰還も、それほど熱望していないように見える。
あれこれと話し、買い物をして、宿屋に帰った。
夕食の後、部屋に戻り、お風呂に入ったら、買ってきた下着や部屋着を着る。
やっぱり着心地が良い。
王都に来た甲斐があった。
久しぶりにステータスを見る。
ギルドの依頼だけでは上がらない気がするけど、聖樹の側でも頑張っている。
ユキノ、18歳
職業、冒険者、ランクA
レベル、250
体力100000
知力100000
俊敏100000
魔力100000
スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】
【魔法】火、水、風、土、雷、氷、
聖、闇、無、時空、重力、付与
上がってる。職業も書かれた。
まだ上がるか、頑張ろう。