アンデッド
私の妄想世界です。
ステータスは雰囲気です。
どこまで上げるか悩みます。
アンデッドの森を少しずつ進む。
浄化したアンデッドは30体を越えるくらいだ。
この辺りには、道もない。
どれほど前に、この森に人が入り、アンデッドになるような事があったのか。
この森にも果実はあった。採取はしておいたが、あまり食べる気にならない。
探知の結果、毒が無いことは分かった。
少しずつ、無理はしないように、聖樹に戻りながら、森を進む。
獣と言うか多分魔物も、アンデッド化している時がある。
聖属性が活躍する。
浄化は意外と魔力を使う。
ペットボトル一本で、大体五体くらい浄化できる。
三本目を飲んだら、聖樹の側に移動する。
泉の水でペットボトルを満たす。
一日頑張って、アンデッドの人たちを浄化して、土に返す。
聖樹の見えるような場所で、死んでもなおアンデッドになる。何があったのだろう。
聖樹は、多分、特殊な木だけど、10年や20年ではこんな大きさにならないと思う。
聖樹が無いくらい昔だろうか。
なんとなく、聖樹は千年とかの間、立っているんじゃないかと思う。
アンデッドの森は、何か特別な物があるのかも知れない。
アンデッドに挑み始めてから、五日ほど過ぎた夜、夕食を食べながら、考える。
雪乃をこの世界に放り出した存在。
能力を与え、無意識に聖樹にたどり着くようにしたようにも思える。
アンデッドの森も、試練みたいなものに思えるし、神なのか?しかし、悪意というか、戯れのような事を言っていた。
少し腹が立ってきた。
アンデッドの森の果実を取り出し、皮を剥いて食べてみた。
とても美味しい。皮肉な感じだ。
背中を聖樹に預けて、星空を見上げる。
そういえば、雨が降らないな。
雨が降ったらどうしよう?
聖樹の下では、雨はしのげない気がする。
折りたたみ傘は、ある。
この奔放な自然に、折りたたみ傘では対抗できないだろうな。
まさか、家を作れるようなスペックは無い。
もう、なるようにしかならない。
三匹の子豚でも、家を作ったのになあ。
あの話は、子豚でも家が作れる前提か。
子豚、能力値高い。
他愛のない事を考えながら、眠る。
更に五日ほど、アンデッドの森を浄化した。
探知に反応が、少なくなった。
アンデッドの森は暗い。
前方に、光が見えた。
開けた場所があったのだ。
ちょっとした広場になっている所に出る。
探知には、三体ほど、反応がある。
不意に、探知の範囲に強い魔力を感じた。
こちらに向かって来る。
広場の中央に立ち、身構える。
これは、今までより強力だ。
しかも、まるで私を目指して来るようだ。
緊張する。
広場の手前で、強力な何かは、躊躇うように止まる。
ゆっくりと姿を現したものは、黒いローブを着た、魔法使いを絵に描いたような、人…
ではなく、アンデッドだった。
こちらを向いて立つ?アンデッドからは、敵意を感じない。
警戒しながら、見つめる。
頭の中に、声が届いた。
神のような存在以来の、声だ。
『驚かせてすまない。仲間の浄化を感謝している』
「あなたは…誰?」
聞いても分からないだろうけど、聞く。
『少し長い話になる。魔法で結界を張った。座って話そう』
「この森から出ることは?」
『できない。アンデッドだから、君が考えるように、聖樹の側になど行けない』
風チェーンソーで、木を切り、輪切りにして椅子にする。倒した木をついでに輪切りにしながら、話を聞く。
『アンデッドになって、どれほどの時間が過ぎたか、分からない。50年か100年か、リンデル王国を知っているか?』
「…知らないの。何も。別の世界から来たと言ったら信じる?」
『転生者、いや、転移者か。それにしては魔力が強過ぎるようだが』
「何かの存在が、腕輪と能力をくれたわ」
『ほう。腕輪を持っているのか。収納もあるようだな』
「ええ、収納は最初は知らなかったけど。これをくれた存在は、何も説明してはくれなかったから、ステータスも、魔法も」
『そうか。最初から話そう。退屈な話かも知れないが、聞いてほしい』
「あの存在以来の話し合い手だわ」
『リンデル王国は、ここから南に二週間ほどのところに、王都があった。私は王宮に仕える魔法使いだった。ガルデスと言う』
「ガルデスさん…」
『リンデル王国は、とても栄えていた。貴族たちは、領地を治め、領地は川や海や土地の恵みに溢れていた。森の獣や魔物を狩る冒険者が行き交い、幸せな時代だった』
この世界は、大きな大陸が、四つあるそうだ。地形に変化がなければ、今も。
東の大陸が、南の半分はリンデル王国。北は小国が三つあった。
中央大陸と呼ばれる大陸は、北方は開発が進んでいない場所だが、南東と南西に大きな港街を持つ、大国だった。
西には、南北に分かれた大陸があり、魔力の濃い場所が多く、守りの堅い小国が点在して、冒険者たちが目指す大陸だった。
栄えるリンデル王国に、異変が起きた。
病だ。
『君は、名前は?』
「雪乃…ユキノです」
『ユキノ、転生者や、転移者は、たまに現れる。転生者は、生まれ変わりだが、転移者は分かるだろう。違う世界から突然来る。転移者は、帰ろうとする者がほとんどだ』
転移者の中で、魔法を研究して、帰る方法を探す者は多い。帰れたかどうかは分からない。突然姿を消す者もいたが。
その時代、転移者の中に、帰る方法を探るうちに、召喚の魔法陣を作った者がいた。
自分のいた世界から、物を召喚し、話題になっていた。
そうして、帰れぬ日を送り、遂に、人を召喚しようとした。
せめて、愛する者を召喚したい。
そう上手くはいかない。人を召喚する事には成功した。関係の無い、子供を召喚してしまったが。
強力な魔法の行使で、悪天候をもたらしながら、転移者は失意した。
更に運命が、悪意の微笑みをもたらした。
子供は、この世界では未知の病を持ち込んだのだ。
転移者は皮肉にも無事だった。
予防接種を受けていたからだ。
治療方法を知っている訳ではなかった。
王都は、家の扉を閉じて、嵐が過ぎるのを待つしかない。
遂に王宮にまで、病が入り込んだ。
国王は、決断した。
聖樹のある近くの森の奥深く、万能薬と言われる薬の材料がある。
それで治せる確信はない。
それでも、何もせずにはいられなかった。
聖樹を拠点にして、100人以上の軍が送り込まれた。
ガルデスは、魔力が多く、皮の袋に魔法を付与して作られた、魔法の袋、持ち主の魔力に応じた容量がある。を、多数持ち、補給と戦闘の両方を担っていた。
しかし、途中で病を発症する者、感染する者が出始めた。
家族を救いたい、国のためではあるが、身近な人を救いたい気持ちの方が強い。
連携は乱れる。
魔力の濃い森の魔物は強い。
しかも、踏み込む人数が多ければ、魔物も沢山湧くようだった。
選りすぐりの軍は、急激に数を減らし、撤退を許されないまま、戦い続けた。
聖樹の恵みも、追いつかない、目指す薬の材料は、森の最奥にある、小さな水場の岩に生える苔だ。
たどり着く事もできず、病と魔物に倒れてゆく人たち。森の中は、地獄のようだった。
王都に手ぶらでは帰れない。救援も来ない。
絶望の中、一人倒れ、また一人。
信じ難い事だが、100人以上の軍が、一週間も経たず、20人を切った。
ガルデスは、魔力を駆使して、戦った。
魔力を持つ者を率いていたが、もう誰もいなくなった。
聖樹に戻る度、人数が減っていた。
森の魔物を、大軍で刺激してしまったのがいけなかった。
大軍で森に入る事は、初めてだったので、誰を責める訳にもいかず、絶望的な戦いは終わりを迎えた。
ガルデスが、倒れたのだ。
魔法の袋は、魔力のない者が扱える物は貴重で、商人などが使うが、高価で市場には出ない。ガルデスが持つ袋は、魔力のある者しか扱えない。
補給も、魔法の援護もなく、ほどなく軍は全滅した。
全滅したのをガルデスが知ったのは、アンデッドになってからだ。
強い無念を持ち、仲間たちはアンデッドになり、森を彷徨っていた。
意識での会話ができる者はいなかった。
ガルデスが、意識を持つアンデッドになったのは、何故だか分からないが、伝えなければいけないという気持ちが強かったからかも知れない。
リンデル王国が、王都がどうなったか。
暗い森を彷徨い、年月が経つ。
せめて仲間を浄化したいと思ったが、聖属性は苦手なうえ、アンデッドになり、使えなくなっていた。
魔物同士が戦う事はほぼない。アンデッドも魔物だから、ただ彷徨うだけだった。
森から出ることは、できなかった。
『聖樹の側に、簡単な拠点を築いたが、見事に何もなくなった』
「拠点…ですか」
『木を組んで、小屋を建てたが、雨季に流されたようだ』
「雨季があるんですか、困ります」
『まだ、少し先の季節だが、そうだな、せっかく出会った強力な魔力持ちだ。ユキノ、弟子になってくれないか?』
「弟子…ですか」
『ああ、魔法の使い方や、雨季をしのげる小屋の作り方、古い時代だろうが、この世界の事を教えたい』
「願ってもない事です」
『私は、自分の力を伝える相手を待っていたのかも知れないな。早速だが、魔法の障壁や結界を教えておこう。探知も、無属性だ』
「私のステータスに、無属性は無いですけど探知は使ってました」
『ふむ、聖属性の探知だろう。無属性の方が魔力の消費が少ない』
「どうすれば、無属性を習得できますか?」
『少し気持ちが悪いかも知れないが、手を出してくれ』
手を出す。骨の感触がひやりとする。
手を繋いだ途端に、何かが流れてきた。
『これで、探知をしてみてくれ。魔力の探知もできる』
探知をしてみた。今までとは微妙に違う感覚だ。
「うわぁっ」
『どうした?ユキノ』
「ガルデスさん…師匠の魔力が凄いです」
『そうか?ユキノも凄いぞ』
「そう…なんですか」
『今日は時間がないが、明日から、この場所で訓練をしよう。ああ、そうだ、軍の物資以外の皮袋を渡そう。調味料や、食料も入っている。私には必要の無い物だ』
「助かります…師匠」
『では、明日の朝、待っている』
「はい、よろしくお願いします」
聖樹の側に移動して、串刺し肉を作る。
渡された皮袋の中身は、念じたら出るようだが、何がどのくらい入っているか分からない。
二つ渡された皮袋のひとつに、全部出ろと念じた。
日が暮れるまでには時間があるが、頭を抱えることになった。
リュックから、メモ帳と、ボールペンを取り出し、メモした物から仕舞っていく。
私の周りには、ちょっと、物の山ができていたりする。
ワインが10本、焼き立てのパンが60個、野菜だろう物が多数、果実40個、砂糖が小さな壺二つ、塩、壺五つ、胡椒、壺二つ、甘辛いタレ、壺三つ、小麦粉、壺三つ、油、壺二つ、空の蓋ができる瓶四本、小さな鉄鍋、少し大きな鉄鍋、コップや、フォーク、ナイフ、スプーン。
乾燥した固形の野菜や肉の入った、多分スープの素が壺二つ。串刺し肉用の、鉄串10本、燻製肉もある。食事関係ではない物もあった。タオル四枚大きなタオル二枚、毛布二枚。私に着れるか分からない着替えの服二組。
数えて仕舞い込んだら、暗くなってきた。
もうひとつの袋は明日だな。
焚き火をおこし、串刺し肉に、塩胡椒をする。有難い頂き物だ。
焼き立てパンを、ひとつ食べる。
美味しいーーー。
肉も、味付けされて、美味しい。
師匠には、もう、とことん付いていこう。
エサで釣られた?いいじゃない。
魔法も教えてくれるし、住む場所も作れる。
食事の始末をしたら、毛布を取り出す。
聖樹に凭れて、毛布にくるまり、目を閉じる。
明日からは、目的がある。
人は信じられないが、師匠は信じたい。
アンデッドだから、かえって信じられるのかも知れない。皮肉だ。
翌朝、目を覚まし、顔を洗い、朝食は自分で取った果実を食べる。
ペットボトル三本と、空の瓶四本に、泉の水を満たす。
昨日の場所に移動した。
師匠はもう、来ていた。
『おはよう、よく眠れたかな?袋の中身は好きに使ってくれたかい』
「おはようございます。袋の中身はとても助かりました。何が入っているか調べるのに時間がかかりましたけど」
『ああ、そうだな。いちいちリストは作っていなかったな。食べ物があったかな』
「食べ物の袋を調べましたから。もうひとつはまだ調べていません」
『もうひとつは、獲物や魔石、武器も一応入っている』
「魔石?」
『獣ではない、魔物は体内に魔石を持っている。魔石は高く売れるが、魔力を注いでおけば、聖樹の水のように、魔力を回復できる』
「便利ですね」
『魔石の魔力を使うのは、緊急時だがね』
さて、まずは、体内の魔力を感じる訓練。
これを行うのは基本中の基本らしい。
魔法の制御ができるためには、自分の魔力を感じて、動かすのが大切だそうだ。
この訓練だけでも、魔力が上がる。
雨季など、狩りができない時にも訓練は欠かさずするように言われた。
半日がかりで、感覚を覚えた。
次は、まだ残るアンデッド。五体いるらしいを、浄化に行く。
師匠は、付いて来て、アドバイスをくれるだけだ。
途中、魔物を三体倒しながら、夕方までに浄化が終わった。
『これで、みんな眠りにつけた。ありがとう。明日は、魔法の訓練をしながら、石で小屋を作る説明をしよう』
「はい、ではまた明日」
聖樹の側に戻り、鉄串で串刺し肉を作る。
さっぱりする魔法。洗浄と呼ぶらしい。
水属性の魔法だ。
洗浄をして、師匠は小柄だから、着替えの服を着れないか試す。
ジーンズとパーカーは、結構お気に入りなので、傷むのが悲しいからだ。
シャツとズボン、ベルトもあった。
多少大きいけど、動き難いほどではない。
靴も、革のブーツが入っていた。
さすがに大きいだろうと思いながら、履いてみた。驚くことに、履いてみたら、サイズがぴったりになる。不思議アイテムだった。
下着はどうしようもない。
ぼろぼろになる前に、手に入れたいところだ。
串刺し肉に、壺のタレをつけて炙る。
良い匂いがする。
急に贅沢になったような気分だ。
食事を終えて、始末をしたら、聖樹に凭れる。食べる事も眠る事もない、アンデッドの師匠。
どれ程の思いを抱えているのだろう。
私の黒い思いなど、恥ずかしい気がする。
翌朝も、果実を食べ、泉の水を汲み、移動する。
『おはよう。おや、着替えたのか』
「おはようございます。師匠の服を着てみました。靴は不思議でした」
『そうか、役に立つなら何よりだ。その靴はマジックアイテムだ』
「マジックアイテムですか?」
『魔法を付与してある。飛翔は使えるかな』
「はい、使えます」
『飛翔が使えるなら、より簡単に思い通り飛翔できる。飛翔ができない者も、それを履けば、飛翔できる。使用者のサイズに合う』
「便利な物があるんですね」
『今は知らないが、当時は魔法も研究が盛んだった。マジックアイテムは沢山ある。腕輪もそうだ。袋に入っている武器も、魔法を纏わせて使えるよ』
「そうなんですか」
『今日は、魔力の訓練をしながら、家の作り方を教えよう。雨が降る前に、必要だろう』
メモ帳と、ボールペンを出す。
『用意が良いな』
土魔法で、整地をする方法。溝を掘る事。
石は、切り出す場所があるらしい。
メジャーは何故か持っていた。
30センチ角で、長さ50センチの石材を作ることにする。
かなりな量を作るはずだ。
師匠は、風チェーンソーで切れるだろうと言う。
大工の師弟のような気分になる。
石を切り出す場所に、連れて行って貰う。
アンデッドの森の奥だ。
師匠たちがあれ程の苦労をした目的地。
小さな水場の側に、石はあった。
水場の苔を大切に取り、仕舞う。
師匠は、何も言わない。
石を、風チェーンソーで切ってみた。切れた。マジで。
時々現れる魔物を倒しながら、石材を作る。
師匠が、予備の皮袋をくれた。
本当に入るの?入った。
魔物を倒すのも、石を切るのも、師匠のアドバイス付きだ。
昼食も忘れて、夕方まで石材時々魔物だった。
広場に戻り、なかなか作業が早いと褒められる。
明日の約束をして、聖樹の側に戻り、石材や、広場で作った薪を出す。
夕食を食べて、なんだか周りが私の占領地みたいになった、聖樹に凭れる。
久しぶりにステータスを見る。
塔ノ沢雪乃、18歳
レベル、80
体力40000
知力40000
俊敏40000
魔力40000
スキル、【体術】【短剣】【言語理解】【文字認識】【魔法】火、水、風、土、雷、氷、
聖、闇、無、時空、重力、付与
上がってる。レベルって、この感じだと、999とか9999とかまで上がりそうだな。
師匠もできたから、頑張ろう。
毛布にくるまり、目を閉じた。
次は、火曜日に投稿予定です。