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特訓

久しぶりに、朝食を食べた後、聖樹を巡る。


宿屋にはまたお金を預けて、何日か戻らない時があるかも知れないが、心配せずにいてほしいと告げる。


もう二月になっていた。


マルト商会にも、定期的に来られないかも知れないから、買い取りを多めにしてもらった、


転移者会は、仕方ない。

優子さんのお店に、顔を見せておいた。



まず向かうのは、試練の森の、前回の広場。


小さな聖樹の水晶が目印になるだろうと思っていた。


毎回森の入り口から歩いて行くのは、試練にしても、無理がある。

もし、歩かないと行けないなら、しょうがないけど。


瞬間移動を使うと、広場に行けた。


広場の中央には小さな聖樹。


気になっていたのは、南から来た時の右手寄りにある岩だ。


なんとなく、棺を連想する形で、近づいてよく見ると、半透明になっている。


あの残酷な夢に閉じ込められた者が眠り続けているのではないかと思っていた。


やはり、見え難いが、人がいる。


少しずつ、岩を削る。

慎重に削って、風チェーンソーで切り込みを入れる。


後は切り込みをこじ開けて、丁度蓋を取ったようにする。


どんな原理か知らないが、中の人は呼吸をしていた。


もしかしたらと期待した通り、その顔には見覚えがある。


多分、メイナード夫妻の次男だろう。


暫く待つと、彼は、目を覚ました。


「私は、一体?夢か?まだ夢の中に?」

「まずは、これを、どうぞ」


聖樹の果実と、お茶を渡す。


「ああ、すまない」

「試練の森に、自力で来られたのですね」


果実を食べて、お茶を飲み、岩から出た男性。


「最初の試練でこれだ。君は試練を乗り越えたんだな」

「残酷な試練でした」

「ああ、そうだったな」

「私には、別の目的もありました。失礼ですが、メイナードさんでしょうか?」

「何故?そうだが君は?」

「旅の途中に、ご両親と親しくお話しさせていただきました。できればあなたを探してほしいとも」

「ああ、神々はやはりいるのか」

「ご両親のところに行きましょう」


レオルトの街に瞬間移動をする。

エリックと名乗ったメイナード夫妻の次男は、神殿の神々を信じる人だった。


瞬間移動には驚いたが、神々の祝福と、聖樹の加護を信じているので、難しい説明は、求められなかった。


エリックさんの案内で、貴族街の近くに瞬間移動して、メイナード家を訪ねる。


門番は、最初訝しそうにしたが、ユキノという者が、エリックさんをお連れしたと伝えてもらうと、大騒ぎになった。


この世界で初めて、貴族の屋敷に招き入れられた。子爵家だそうだ。


ユキノは冒険者スタイルだし、エリックさんも冒険者スタイルで、髪もヒゲもボサボサ。


感動の再会を邪魔したくないから、帰ろうとしたけど、当主の方、エリックさんの兄上もご隠居夫妻も、このまま帰すわけにはいかないと言い張り、歓待されることになった。


勿論、泊まっていってほしいと言われ、客用の部屋に案内される。


仕方ないから、以前から持ち歩いていた、ワンピースに着替える。

靴も、アクセサリーも、髪止めも。


さすがに子爵家なので、皮袋は部屋に置く。


化粧品は持ってないから素顔だ。


まず、昼食に呼ばれる。


ただの冒険者なので、失礼はご容赦くださいと言っておく。


昼から、明らかにご馳走で、試練の途中なのにいいんだろうかと思う。


エリックさんの、旅の話をみんなで聞く。

西の大陸や、リンデル王国では、聖樹に近い街や村、国までは、隊商の護衛をして行き、聖樹までは、それぞれ冒険者のパーティーを組んで行ったそうだ。


それにしても、簡単な旅ではない。


ユキノには、よく分かる。

生きていたこと自体が祝福だ。


応接室に場所を移し、今度はお茶やお菓子が出されて、話は続く。


エリックさんは、腕輪は持っていない。


それでも、全ての聖樹を巡り、レオルトの聖樹に行くと、冒険者証のステータスが光って北を示したそうだ。


感動したエリックさんは、家に寄る前に、森に向かった。


そして行方不明になった。


最後に行った聖樹が、リンデル王国だったので、リンデル王国で行方不明になったと思われたのだ。


リンデル王国の聖樹に、人が来ていたとは驚きだが、数人のパーティーで、リンデル王国の国民ではなく、旅の冒険者たちだったと聞いて、納得した。


夢中になったら後先考えないのは、橋本さんみたいだな。

男の人は、みんな少年なのかも。


夕食まで、部屋で休んで、違うワンピースに着替える。


夕食の席では、エリックさんが婚約していた人は、残念ながらお嫁に行ったことも話された。

少し、沈んだ空気になったが、また結婚相手を探す話になり、賑やかになった。


ユキノはあまり話をしないようにしていた。


エリックさんが、聖樹を巡り始めたのは10年近く前、20代半ばだ。8年近くかけて、試練の森に入り、2年眠っていた。


ユキノは数ヶ月だ。それも一人で。

あまり愉快な話ではないだろう。


豪華なお風呂に入り、上等なベッドで眠る。


朝食は、フルーツが豊富に出され、スープもパンもとても美味しかった。


まだ暫く滞在してほしいと言われたけど、試練の途中だからと丁寧に断って、エリックさんには、神殿長から、試練の森の話を口止めされていることを伝える。


またいつでも遊びに来てほしいと言われて、ではまたと挨拶をして、メイナード家を出た。


聖樹を巡り、冒険者スタイルに戻って、試練の森の広場に行く。


北へ足を向けると、また道ができる。

探知をかけて、進む。魔物の数が多い。

今度は、手強い魔物の試練か。


道を歩いている時は、襲って来ない。

またかなり歩く。


飛翔が使えないから、進む速度が遅い。


昼過ぎになって、明るい場所が見えた。

また、広場になっているのだろう。


広場の手前で立ち止まり、果実を食べ、お茶を飲む。

何が待つか分からない。


探知をしたままだが、広場の中には魔物はいない。


広場に足を踏み入れる。

途端に、魔物のシャワーを浴びるように、蜘蛛の魔物が降ってきた。


この世界の人はどうか知らないが、蜘蛛は生理的に嫌悪感がある。


火の圧縮弾で周りを撃つ。

身体についた魔物は振り払い、多分毒がありそうな蜘蛛に傷をつけられたので、

師匠の毒対策のアクセサリーがあるが、解毒と治癒をかけながら、魔力弾を撃つ。


倒しても倒しても、魔物は来る。


泉の水で魔力を補給しながら、圧縮弾を撃ち続ける。


徐々に大きな蜘蛛が出始め、まだ戦闘は終わらないことが分かる。


魔力だけではなく、精神力も試されている。


時間など分からない、


泉の水の補給が切れたら、出直すしかなくなる。


持久戦だ。


剣も出して、もう一メートルを超える大きさの蜘蛛と戦う。


嫌悪感とも戦う。


倒してもまた大きな蜘蛛が来る。


三メートルほどの蜘蛛を倒した後、広場の四方から、上半身が女性の蜘蛛が来た。


粘りのある糸を飛ばしながら来る。


糸を断ち切り、魔力弾を撃つ。

きりがないように思える時間。


ひたすらに動き、切り、撃つ。

最後の一体を倒して、身構える。


まだ何か来るか?

泉の水を飲む。


魔物の気配がまだある。


上からだ。


五メートルはあろうかという、蜘蛛。


毒もありそうだ。


火の圧縮弾を連射する。


恐ろしい大きさの脚を切り飛ばす。

目を狙う。

攻撃を躱し、切り、撃つ。

止まることは許されない。


師匠のローブに護られない腕や足は、傷だらけになっている。


回復の余裕はない。


頭を撃ち続け、ついに撃ち抜いたらしい。

魔物の死骸が消える。


座り込む。


広場の中央に、また小さな聖樹が生えてくる。幹に光る水晶のような物は二つ。


這うように近づいて、小さな聖樹に触れる。


たった二つ目の試練でこんな風なら、先が見えない。


傷を治癒した。


袖やジーンズがぼろぼろだ。

また買っても同じだろう。


リンダースに移動する。


今日は何月何日かも分からない。

冒険者ギルドに顔を出す。


受付の暦を見て、三日が経過していたのが分かった。


ドルトスさんが顔を見せて、手招きされて、一階の応接室に行く。


「最近はあまりリンダースにいないな」

「ええ、修行中みたいなものです」

「魔術ギルドから連絡があった」

「魔石ですか」

「そうだ」

「分かりました。行きます」

「そろそろ雪が降る。無理はするなよ」

「はい、ありがとうございます」


雪が降るのか。

西の大陸で、特訓しようと思うが、大丈夫だろうか。


魔術ギルドに行く時間は、今日は無い。

焦ってもすぐに強くなれるわけではない。


宿屋に戻る。

夕食を食べて、部屋に戻り、ベッドに熱風、お風呂に入る。


試練は幾つあるのか。

人が越えられる試練のはずだが、簡単なわけはない。


努力する。

それくらいしか思いつかないし、できない。



翌朝は、朝食後、聖樹を巡り、魔術ギルドに行く。


受付で用件を告げる。

ロードさんが現れ、また近くの部屋に入る。


「今日は、どのくらいの魔石が必要ですか」

「大きな物はありますか」

「はい、沢山ではないですけど」

「お願いします」


テーブルに魔石を出す。

西の大陸の魔物から取れたものだ。

20個出した。


お金の皮袋は重い。


雑談しながら受付まで戻る。


魔術ギルドも何か、不穏な空気が感じられた。


この国に、何が起きているのか。

神殿の事件も解決したわけではない。



マルト商会にも寄ってみる。

来たのなら、買い取りをしましょうと言われて、まだ溜まっている獲物を売る。


それから、西の大陸の北の聖樹に向かう。


この辺りで戦闘をして、訓練する。


地上には、地竜やランドウルフと呼ばれる魔物が多い。


空には巨大な鳥がいる。


試練を考えれば、この辺りの魔物を一撃で倒すくらいの力がほしい。


地竜に挑み、ランドウルフの群れと戦い、雪乃の特訓が始まる。


休むのは夜だけ。

聖樹の側で、夕食を食べ、眠る。


朝は聖樹を巡る。

簡単な朝食の後は、戦闘だ。


試練の戦闘中は、飛翔も使えるが、飛翔せずに戦う。


師匠なら、どう戦うだろうかと考えながら、戦闘は果てしなく続く。


何日経っただろう。

思いつく限りの魔法を使い、剣も使い、戦い続けて、苦戦ではなくなった。


夜、聖樹に凭れて休む。

強くなりたい。

もう一歩、高いところへ。


いつもそうだった。

手が届きそうで、届かない。


でも、今度こそ、諦めない。


沢井さんたちの顔が浮かぶ。

私のためだけじゃないんだ。

師匠の願いも、試練を乗り越えたなら、叶うだろう。


大神という存在が、世界を渡らせたのなら、試練の先に、答えがあるはずだ。


神殿のファリアさんも、傷ついた心を抱え、それでも祈っているだろう。


この世界の人たちは、優しい人にばかり出会った。

もし、叶うなら、不穏な空気も、原因を知ることができるかも知れない。



聖樹に凭れて眠る。


翌朝、冷たい空気を感じて、目を覚ます。


聖樹から半径五メートルくらい外は、雪が薄く積もっていた。

雪が降ったのか。


聖樹もひんやりと冷たい。

恵みが落ちてくる。


焚き火をおこす。

朝から肉を炙り、食事をする。


それから、他の聖樹を巡る。

どこも、雪がうっすらと積もっていた。


リンデル王国の聖樹の森で、冬しか取れない植物や果実を採取する。


また西の大陸の北に戻る。


冬でも魔物は来る。


また戦闘を続ける。

走り、跳び上がり、斬り、撃つ。

果ての無い戦いを続けて、雪が聖樹の側まで積もってきた頃、リンダースに戻った。



冒険者ギルドを覗いて、ドルトスさんに手招きされる。

一階の応接室に行き、話す。


「心配したぞ、たまには顔を出してくれよ」

「すみません、西の大陸で修行中です」

「全く、無茶してないか?」

「雪が積もってきましたからね」

「いや、そうだが、そんな心配じゃない」

「はい、分かってます。ありがとうございます」

「何か魔術ギルドのなかにも、不穏な動きがあるようだ。神殿の問題もまだ解決しない」

「そうですか。冬なのに不安ですね」

「まあ、ユキノが気にすることじゃないな。何か分からないが、気をつけて頑張れよ」

「はい、ありがとうございます」


雑貨屋に寄って、瓶を買い足す。

瓶は全部で60本になった。


優子さんのお店にも顔を出す。


「もう、雪乃さん、心配してたわよ」

「すみません、修行中で、時間とか日数とかよく分からなくて」

「ちょっと、ぼろぼろじゃない」

「はい、買い替えてもまた同じになるので」

「もう、女の子なのに」

「何かすみません。まだ続けますけど」

「無事ならいいけど、無茶しないでね」


一応、着替えを買って、お店を出た。


マルト商会に行く。

やはり心配されていた。


獲物や果実、植物を買い取ってもらう。

冬なので、沢山買ってくれた。


宿屋に向かう。

ここでもまた心配したと言われる。

お金の問題ではない。

お金なら充分に預けてある。


温かい食事を食べて、温かい心を感じる。


部屋に行き、久しぶりにベッドに熱風をかけて、お風呂に入る。


部屋着に着替えてベッドに寝転ぶ。


春がきたら、この世界で一年が経つ。

まだ、帰りたい気持ちは強くない。

ただ、他のみんなは時間が惜しいだろう。


修行の成果を見てみよう。



ユキノ、19歳

職業、冒険者、ランクA

レベル、9000

体力1000000

知力1000000

俊敏1000000

魔力1000000

スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】

【魔法】火、水、風、土、雷、氷、

聖、闇、無、時空、重力、付与


どこまで上がるんだろう。

どこまで強くなれば、みんなの助けになるんだろう。

試練を越えるために、頑張ろう。




▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶



薄暗い部屋、壁際に立つ男たち。

部屋の中央に立つ美女。


「まだ足りない」

「サオリ様、そろそろ召喚をされては」

「私に相応しい者が呼べない。何故だ」

「サオリ様、私たちは」

「この世界の者など生贄にすぎない」

「また集めます」

「私の望む世界を創る」

「サオリ様のお望みのままに」









































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