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波紋

翌朝、起きて、朝食に行く。

質素な食事を頂き、宿代を払う。

銀貨三枚。


聖樹を巡り、トルフの南門へ向かう。

二重の門を出たら、南西に飛翔する。


さすがに、少し寒い。


魔物と戦闘したら、寒さなど感じなくなるけど。


冬だというのに、いや、冬だからエサを求めるのか、魔物は減らない。


この荒野のどこに住むのか、不思議に思う。


戦闘を繰り返し進む。

いつものことだ。


夕方には目印を見つける。


リンダースに移動して、宿屋に戻る。

街はまだ新年の休みで静かだ。


夕食を食べて、部屋でお風呂に入る。


翌日も、朝食後、聖樹を巡り、目印の場所へ移動する。


また毎日、同じことを繰り返して、戦い、進む。


日曜日の夕方、城壁が見えた。

予想通りなら、レゴナの北門のはずだ。


門に近づいて、地上に降りる。


門が開き、急いで入る。

二重の門を通過する。


聖樹に近いからなのか、大きな国だ。

もう見慣れた、城壁の中の田園風景を歩いて冒険者ギルドを探す。


日曜日だけど、リンダースに戻るには遅い。


冒険者ギルドを見つけて、宿屋を探す。

シャワーのある宿屋を探して、夕食を食べる。


部屋に行き、ベッドに熱風、シャワーを浴びる。


ベッドで眠れる贅沢を感謝しながら休む。


翌日は、まず聖樹を巡り、リンダースのマルト商会に行く。


新年の休みが終わったので、また買い取りをしてもらう。


レゴナの冒険者ギルドに移動して、西門行きの馬車に乗る。銅貨20枚だ。


西門を出たら、少し難しい。

西北西に進路を定める。

地図上は、多分その方角に二日ほどで聖樹があるはずだ。


飛翔する。寒さが厳しくなってきたから、暖かいジーンズを穿いている。


雪が積もる前に、辿り着けそうなのは幸運だと思う。


相変わらず、戦闘を繰り返して進む。


水曜日、聖樹が見えた。

昼頃に、辿り着き、感動しながら、聖樹に触れる。


はらりと葉が落ち、果実も落ちる。

果実は緑色だった。


泉の水を汲み、聖樹に凭れて休憩する。


腕輪を見る。

四つの宝石に光が点っている。

道が開くと言われたけど、ここではないようだ。


中央大陸の神殿に行くべきだろう。


でも、今夜はここで休みたい。


夕方まで、聖樹の周辺で戦い、夜になる前に、焚き火をおこす。


串刺し肉を作り、味付けして炙る。

パンと、果実を食べ、肉も食べる。


飲み物は、お茶がある。


食事の後始末をして、聖樹に凭れる。

毛布があるので、寒さは凌げる。


神話の世界で大神が植えたという聖樹。

この世界を見守る存在。


それぞれに神殿があり、栄えた国々。

どんな世界だったのだろう。


聖樹に凭れて眠る。

優しいひと時だ。


翌朝、目が覚めて、聖樹の恵みを受ける。


簡単な朝食を食べて、出発する。


中央大陸の神殿は最後にして、聖樹を巡る。


最近は中央大陸のレオルトの聖樹は、神殿に寄らないで、聖樹にだけ行っていた。


今日は、神殿の門に行く。


神秘的な雰囲気は変わらない。


が、何か不穏なものを感じた。

門番も多い。


門番の神官に、オルスト神殿長に会いたいと告げる。

無理だと即答される。


名前を告げて、再度お願いする。


門番は、神殿に入ることも拒む。


何があったのだろう?

聖樹を巡り、加護を確かめて、新たな道を知るためには、神殿長に会わないといけない。


出直すには、不穏な空気が気にかかる。


門番の部屋の前で、立ちつくす。

昼前頃に、少し高位の神官が来た。

私のためではなく、門番との連絡にだが。


再度、名前と目的を告げる。

神官は、猜疑の篭った目を向ける。


しかし、告げるだけはしてくれると言った。


待つ。


かなり待って、遠くに神官たちが現れた。

神殿長を守るように囲んでいる。


オルスト神殿長と視線が合う。

確認するように見られた後、神官の一人が近づいて来た。


ようやく、神殿に入れてもらう。


祭壇に行き、祈る。


神官たちに囲まれたままだが。


その後、少し大きな部屋に連れて行かれる。


神殿騎士のような人たちが、壁際に並び、警戒している。


オルスト神殿長と、向かい合い、座る。


「何があったのですか?神殿に入れてもらえないほどのことを、した覚えはありません。何事かがあったのでしょう?」

「まだ知らないようだな」

「全ての聖樹を巡り、すぐにここへ来ました。私に関係したことでしょうか?」

「何?全ての聖樹をか。いや、お前にだけ警戒しているわけではない」

「では、何が?私に手伝えることはありますか?」

「昨日、神殿が襲撃された」

「!?」

「神官の中には、瞬間移動が使える者もいる。各地にある小さな、人のいない神殿も全て、襲撃され、祭壇が壊された」

「ファリアさん!リンダースのファリアさんは?」

「怪我を負ったが、こちらで保護している。神殿だ。聖樹もある。怪我は大丈夫だが心がな」

「そんな!酷いことを誰が?」

「教会の信者だろうが、普通の民だ。ここは騎士もいる。傷つけずに追い返すのに、苦労はしたが、無事な神殿はここだけだ」

「普通の人たちが、急に何故?」

「分からん、しかし暫くは警戒するしかできんな」


沈黙が流れる。

新年の休みが終わり、本格的な冬がくる。

普通の人たちも、暇ではない。


教会のことは全く知らないが、今更わざわざ神殿と対立しても、意味がないような気がする。


「ところで、全ての聖樹を巡ったと言ったな?」

「はい。昨日辿り着きました」

「そうか。聖樹に行こう」

「こんな時に、すみません」

「いや、こんな時だから何か救いが見つけられるならいい」


神殿長が立ち上がる。

雪乃もついて行こうとする。


警備の神官たちもついて来ようとした。


「お前たちは、さがれ」

「しかし、神殿長、このような時に」

「聖樹に行くだけだ」

「失礼ですが、その者は、信用できるのでしょうか」

「聖樹が認め、神々が認めている。それを疑うようでは何にもならん」

「申し訳ありません。分かりました」


神殿の北側、レオルトの聖樹に行く。


中央大陸は、遥か昔から、北の開発が何故かできないそうだ。

人を拒む森が広がっている。


神殿は、聖樹を囲む丘の上に建っている。

聖樹から、彫刻が刻まれた柱越しに、北の森が見える。


聖樹に近づいて、触れる。

恵みが落ちてくる。



その時、腕輪から、眩い光が溢れ出した。


左手の袖を捲る。

光は、真ん中の大きな宝石から出ていた。


神殿長も、雪乃も驚き、無言で光を見つめる。


眩い光は、やがて、ひと筋の光になる。

光は、北を指して伸びてゆく。

目視できないほど、遥か北を指して、光は伸び、暫くの後、消えた。


消えたのは、光の筋だけで、腕輪の宝石は、金色の光をともしている。


神殿長と雪乃は、神殿の小さな部屋に戻る。


テーブルを挟んで座り、神殿長は、代々の神殿長にしか告げられていない話をすると言う。


不安がる神官たちを部屋から出す。

立ち聞きなどはできない部屋だそうだ。


「神話か伝説でしかないと思われた話だ」

「はい」

「さっきの出来事も、私の知る限りでは、誰も見たことも無い光景のはずだ」

「そうなんですか」

「まさか本当にあるとはな。しかし、この先は正に試練のはずだ。覚悟が要る」

「それが私の道だと?」

「信じるしかないだろう。あの光景を見たからにはな」


何故雪乃なのか?

それは分からない。

他の者にも、資格のようなものはあるのかも知れないが。


いや、むしろ、神殿に信仰を持ち、神々の祝福を受けたなら、誰でも資格はあるのではないかと思う。


神殿長の話が語られる。


レオルトの聖樹は、この世界最古のものである。それは間違いではない。

神話大戦の後、大陸が四つに分けられ、それぞれ聖樹が置かれた。


それも間違いはない。


新たに、四つの聖樹が置かれたのだ。


つまり、聖樹はもうひとつある。


神殿長には、そのことが伝えられてきた。


場所は分からない。

聖樹を巡り、加護を受けた者に、道が開かれる。


それが言い伝えだった。


その道は険しく、最後の聖樹に辿り着いた者には、大神の祝福が与えられる。


何とも、大きな、しかし詳細の分からない、伝説としか言えない話だ。


「私もこのことは、誰にも話さない。話すべきではないと思う」

「では、私も、この先のことは誰にも話すべきではありませんね」

「そうだな。そうしてくれ」

「聖樹を巡る話は他の転移者に、していましたが」

「そうか、まだ謎だとでも言っておいてもらいたい」

「分かりました」

「神殿は守る。これでも神殿長だからな」

「ファリアさんに、よろしくお伝えください」

「ああ、分かった。北へ向かうのだな」

「はい。聖樹の力を借りながらですが」

「まあ、祈っている。無事をな」

「ありがとうございます」


神殿を出て、どうしようか考える。

とりあえず、リンダースに戻ろう。


久しぶりに、リンダースの門を通る。

やはり、不穏な空気が感じられる。


宿屋に戻り、夕食を食べに行く。

宿屋もやはり、ヒソヒソとあちこちで囁くような雰囲気で、落ち着かない。


神殿と教会、今は教会が多く信者を持つ。


神殿を襲撃した人たちは、普通の民で、普段は特に変わったところのない人たちだという

のが、噂の内容だった。


王国の警備兵に、暴徒として捕らえられている人たちは、自分たちが何をしたのかも分かっていないようだ。


教会も、何か扇動したわけではないと、声明を出したそうだ。


何が起きたのか、不安だが、今はそれ以上のことは分からないだろう。


部屋に戻り、ベッドに熱風をかけて、お風呂に入る。


今日はもう眠ろう。

不安な気持ちを抱えながらも、眠った。



翌朝、朝食を食べて、自分ができること、聖樹を巡り、レオルトの聖樹から、北へ飛ぶ。

少し飛ぶと、見えない壁のようなものに阻まれた。


自らの足で向かえということだろうか?


地上に降りる。


森しかない場所だが、降り立つと、目の前に道ができる。


不思議な現象だ。


進むしかない。


森の中の道に、足を踏み入れる。


探知はできるだろうか?


探知をしてみる。魔物だろう反応がある。

魔法が使えないわけではないようだ。


歩く。

魔物はまだ向かっては来ない。

不気味な静けさだ。


行く先に、木々の切れ間だろうか、明るい場所が見える。


勿論、嫌な予感しかしない。


明るい場所の手前まで歩いた。

探知の中には、何も無い。

おかしい。


森の中には魔物がいる。

しかし、動かないのだ。


後ろを振り返ると、道が消えている。

後ろに一歩踏み出すと、道ができる。


帰るなら帰れと言わんばかりに。


明るい広場のような場所。

ここが最初の試練の場所だろう。


踏み出すしかない。


広場に入る。


途端に空間が歪むような感覚があった。


敵は?何処だ?


何かが降り注ぐ。


何が?まるで空中のような感覚。


上も下も分からない。




気がつくと、神殿が見えた。

聖樹を囲む神殿だ。


聖樹の果実はオレンジ色。


明るい日の光が周りを照らして、神殿には祈りを捧げる人たちがいる。


神殿に近づいて行く。

幸せそうな人たち。


しかし、また空間が歪む。


聖樹が見える。

オレンジ色の果実。


誰かが呼んでいる。


『ユキノ、今日も訓練だな』

『師匠!』


栗色の髪に、緑の瞳、優しく微笑む青年。


『ユキノは教え甲斐がある』

『師匠は強過ぎます』

『時間は沢山ある。訓練だ』

『師匠は何でも教えてくれますね』

『ああ、大切な弟子だ』

『師匠との訓練は楽しいです』

『いつまでも一緒だ』


嬉しい。

(違う)

師匠は頼もしくて、

(違う、違う、師匠は)

強くて、優しくて、

(やめて、違う、こんなことは違う)



また空間が歪む。


『雪乃、おはよう。今日も気をつけてね』

『お前は私たちの大切な娘だからな』

『行ってきます』

『学校も大変だろう』

『はい、お弁当』


(違う、酷い)

『バイトなんて無理しないでね』

(酷い、酷い)

『雪乃は頑張りやだからな』

(こんなことを、望んでいたりしない!)


あり得ないこと、何故こんなことを!


(幸せを望んでいただろう)

(不幸は望まない、だけど!)

(永遠の幸せだ。望むまま、いつまでも)

(幻など要らない!)

(本当にそうか、誰しも幸せを望む)

(本当の幸せは違う!)

(幸せを掴むなど夢だ)

(夢ならば、自分で掴む!)



ガラスが砕け散るように、何かが砕け、視界が戻る。


開けた場所にいた。


魔物が動き出す。


こちらを目指して来る。


夢中で戦う。

時間は分からない。

どれくらいの間、夢を見せられていたのか。


探知の中に、魔物がいなくなるまで戦い続けて、ようやく広場に立つ。


魔物は、全て倒すと死骸も消えた。


手傷も治癒して、普通の森の広場になった場所に佇む。


広場の真ん中に、まるで小さな聖樹のような木が生えてくる。

水晶のような宝石が、小さな木の幹に現れた。


一メートルもない白い木。

宝石に触れる。


最初の試練は越えたのだろう。


時間がどのくらい過ぎたか分からない。

瞬間移動は使えるのか?


リンダースへと念じる。


リンダースの門の前に移動できた。


時刻は夕方には早いようだ。


門を通る。

不穏な空気と、怯える空気が感じられる。


冒険者ギルドに顔を出す。


ドルトスさんの顔が見えた。


手招きされて、一階の応接室に行く。


「少しリンダースを離れていました。何かありましたか?」

「ああ、宿屋に連絡したが、三日ぶりくらいだな」

「すみません、色々と手こずっています」

「無事で良かった。が、今度は病だ」

「リンダースにですか」

「ギルドの情報網では、神殿が破壊された地域に、少しずつ病が広がっている」

「薬か何か、打つ手はあるのですか」

「患者の隔離が第一だな。伝染する」

「どのような病か、分かりますか」

「水疱ができる。子供や年寄りだけでなく大人も熱が出る。熱が高い者が厄介だ」


水疱瘡?大人は危険だ。

転移者は、大丈夫だろうと思うが。


抗生物質が無い。水疱を覆う薬があれば、感染は多少防げる。


薬の制作は、私には難しい。


とりあえず、宿屋に戻る。

不安な空気が広がっているが、夕食を食べる。


こんな時に、何故、何処から?

私には分からない。

早々に部屋に戻り、ベッドに熱風をかけ、お風呂に入る。


こんな状況では、街どころか宿屋からの出入りも慎む方がいい。


病の勢いが、収まるまで、宿屋に留まる。


時間は勿体無いが、試練もどのみち時間がかかるのは予想される。


宿屋の中の情報だけだが、魔術ギルドが薬を開発して売り始めたようだ。


病は下火になっていき、教会と神殿、関係する貴族や、王国は、何となくギクシャクした関係のまま、生活は戻ってきた。


心の片隅に、不安を抱えながら、私にはやるべきことがある。


明日から、また試練に挑む。

その前に、少しすることもあるけど。

ステータスは、参考になるだろうか?



ユキノ、19歳

職業、冒険者、ランクA

レベル、4000

体力950000

知力950000

俊敏950000

魔力950000

スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】

【魔法】火、水、風、土、雷、氷、

聖、闇、無、時空、重力、付与


まだ上がるみたいだ。

試練のために、頑張ろう。



▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶



薄暗い部屋、恐ろしいほどの美女。

ひとり、呟く。


「人を踊らせるのも大したことは無い。力が欲しい。もっと、もっとだ。誰もが恐れ泣き叫ぶほどの力が。私にはできるはずだ。約束された力があるはずだ」




























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