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嵐の前

月曜日、マルト商会に行く。

いつも通りに買い取りをしてもらう。


魔石とお金を受け取る。


三つの聖樹を巡り、昨日の場所へ移動する。


北へ向けて、飛翔を開始。


戦闘を繰り返しながら進むのも慣れた。


時々、地上の戦闘に加勢するのも。


どんな過酷な土地でも、人は生きている。


雪乃はまだまだ甘いなと、自分を思う。

飢えることもなく、寒さや暑さを凌ぐこともできる。


与えられた能力のおかげで、人とも少しは関われている。

好意的な人たちと。


与えられた祝福は、努力をしてこそのものと、神殿では教えている。


ならば、努力しよう。

誰かが必要としてくれた時に応えられるように。


戦闘を繰り返し、飛翔する。


木曜日には、城壁が見えた。


タナト王国。

北の大陸への港がある国。


やはり二重の門を通り、田園風景のなかを歩く。


冒険者ギルドに地図があるのも今までと同じだった。


タナトは、門が南と西の二つだけだ。


ルビアとカゲフは、東の門から小さな港に通じていて、ドルアから、ラクアまでの間の貨物船が寄港する。


タナトの港は北だ。東に門は無い。


港までの馬車を探して乗る。

銀貨一枚。


港に着いたら夕方だった。


案内所に行き、ラクア行きの船を確認する。


西の大陸の、北と南はあまり離れていない。

ラクア行きの船は、小さい船で毎日出ている。


部屋があるような船ではなく、座席がある。

定員は少ないから、チケットは早く買った方がいい。


明日の便に、空席があった。

出航は10時で、夕方にはラクアに着く。

勿論、レストランなど無い。

昼食が食べたければ、自分で持って行く。


迷わずチケットを買う。

銀貨ニ枚。


リンダースに戻るには遅い。

港の近くに宿屋を探す。


やはり安い宿屋は空いていない。

タナトでは高級な宿屋に行く。


夕食は、焼いた肉と果実。薄いナンのようなもの。飲み物はお茶。


部屋はシャワー付き。


ベッドに熱風をかけて、シャワーを浴びる。


この部屋で、銀貨10枚。

西の大陸では高級なのだ。



翌朝、早めに朝食を食べて、急いで聖樹を巡る。


タナトに戻り、港へ行く。


小さな船に二階まで座席がある。

タラップでチケットと冒険者証を見せる。


二階席は揺れそうだけど、人気なのか、満席で、一階に席を見つけて座る。


出航の時間になり、船が動き出す。


速度を次第に上げ、かなりな速度で進む。


船酔いはしないみたいで、良かった。

三半規管まで強化されてないよね?


船酔いで、ちょっとマズい感じの人もいるなか、昼頃には、何か食べる人が多い。

雪乃も、アンデッドの森の果実を食べる。

パンはやめておく。

視線が怖いから。


燻製肉を齧り、飲み物がないから、貴重な泉の水を飲む。


日が傾いてきたら、陸地が見えた。


夕方、ラクアに着いた。


タラップでチケットを渡し、冒険者証を見せる。


ラクアの冒険者ギルドに行き、地図がないか確認する。

地図はあった。


北の大陸の地図と、ラクアの地図。


無料配布なのも同じ。親切だな。


リンダースに移動して、宿屋に戻る。

夕食とお風呂を済ませたら、今後の進み方を考える。


西の大陸の、今まで来た南側は、国の場所が分かりやすく、東の海岸沿いに三国。

南からルビア、カゲフ、タナトだった。

聖樹に近い国、アゲイルは、カゲフから西に行けば良かった。


北側の大陸は、南より南北には小さい。

東西は南と変わらない。


少し横に細長い大陸だ。


ラクアは南東の端にある。

聖樹に近い国は、レゴナ。

西の方角で、南北には中途半端な位置にある。


ラクアから北に行けば、ラガスという国があり、ラガスから北西にトルフという国がある。


トルフから南西に行けば、レゴナ。


各国を経由した方が、分かりやすいだろう。

行ける国が増えるのもいいはずだ。


感謝月も後半で、本格的な冬になる。

楽な旅ではない。


冬だけど、北のラガスを目指す。


師匠のローブがあるから、多少の寒さは大丈夫だろう。


翌朝、朝食後、聖樹を巡り、ラクアの冒険者ギルド前に行く。


ラクアの北門行きの馬車に乗り、二時間ほどで北門に着く。馬車は銅貨20枚。


二重の北門を出たら、北へ向けて飛翔する。


早速、空の魔物が来る。

翼を広げたら五メートル以上ある。

嘴の形や、羽の色が、南とは違う。


圧縮弾を撃つ。

通用するみたいで良かった。


南より、頻繁に魔物が現れる。


空を飛ぶエサだと思われているみたいだ。


試しに地上に降りて歩く。


地上も変わらない。

私はエサでしかないようだ。


また飛翔する。

戦うしかない。


そのうちに、翼を広げたら10メートル以上ありそうな魔物まで現れた。


戦闘を繰り返す。


この大陸は、手強い。


でも、進むしかないから進む。


夕方までに、なんとか目印を見つけて覚える。


あまり進んだ気がしないが、リンダースに移動する。


宿屋に戻ると、ホッとする。

夕食を食べて、部屋でお風呂。

疲れを癒す。


ベッドで眠るのが、幸せに感じる。



翌日も、朝食後、聖樹を巡り、昨日の場所に移動する。


地上の魔物を倒したら、飛翔する。


戦闘の回数が多い。


慣れるように、確実に倒していく。


本当に、魔物の大陸だ。

腕試しに来る人は、相当な冒険者だな。


でも、国があり、人が暮らしている。

この世界は不思議だ。


雪乃自体が、実は不思議なのだが、過酷な環境を知り、後を振り返る暇がない。


夢が折れて、未来が見えなくなり、仲間に裏切られ、一年も経たない。


しかし、この世界に来てからは、前を見ることしかできないからだが、不幸ではない。


戦い、進む。

それを繰り返す。



感謝月最後の日曜日、タキガワに行く。


「今晩は」

「雪乃さん、いらっしゃい」


いつも通りの転移者会。

みんなで雑談して、過ごす。


雪乃も、特に何も言わない。

それぞれの戦いがあるだろうから。


次の日は、マルト商会に行く。


また種類が増えた魔物を、買い取ってもらう。新年に向けて、いつもより沢山の物を売る。


魔石とお金を受け取る。


冒険者ギルドも覗いて、聖樹を巡り、目印の場所へ移動する。


新年を祝う習慣は、この世界でもあるそうだ。

お店も一週間休みになるらしい。


雪乃は、いざとなれば、リンデル王国の聖樹の側で過ごすつもりだ。


旅が続け難いなら、だけど。


泉の水以外の飲み物が、師匠のワインしか無いから、また瓶を買い足して、お茶やコーヒーくらいは持ち歩くか。


そんなところだ。


毎日聖樹を巡り、戦い進んで、水曜日の夕方、城壁が見えた。


ラガスだろう。


城壁を覚えたら、リンダースに移動する。


宿屋に戻ると、新年はどこで祝うか、聞かれた。

初めてだから、よく分からないと答える。


教会や神殿も、新年の朝から祈りの集まりがあり、パンとワインが振る舞われるそうだ。


それなら、リンダースの神殿で、ファリアさんと祝いたい。


宿屋も、新年の最初の日はご馳走だから、楽しみにしてほしいと言われた。


木曜日、聖樹を巡り、ラガスの門に入る。

二重の門を通過して、冒険者ギルドを探し、西門へ向かう馬車に乗る。

やはり銅貨20枚。


西門を出たら、北西に飛翔する。


少しずつ、この大陸の魔物にも慣れてきた。

戦闘時間が短くなった分、進む速度が上がる。


火と、無属性の圧縮弾を使う。


大きな魔物だから、厄介だけど狙いやすい。


雪はまだ降らない。

雪が積もるようになれば、目印が無くなる。


それまでに、なんとか聖樹に辿り着きたい。

ラガスを抜けたから、トルフに向かう。


戦闘を繰り返し、進み続けて、土曜日になった。


感謝月最後の日。

明日は新年だ。

早めに目印を見つけて、リンダースに移動する。


ファリアさんと新年を過ごすために、お菓子や、ご馳走を買う。

ファリアさんは、ワインを飲むだろうか。


宿屋に戻ると、食堂も賑やかだった。


新年も宿屋暮らしの人たちって、どうなんだろう?

自分もだけど。


まあ、いいか。


普通の夕食を食べて、部屋に戻り、ゆっくりお風呂に入る。


カウントダウンみたいなことも、するらしいけど、寝ることにする。


聖樹を全て巡ったら、本当のお祝いをしよう。その先もあるけどね。



翌朝は、賑やかで、早く起きた。

朝食は抜きで、ファリアさんのいる神殿に行く。


朝の祈りに、滑り込みで参加する。

10人ほどの人たちが、参加している。

人との出会い、旅の無事、聖樹の加護に感謝して祈る。


祈りが終わると、小さなパンと、銀の杯のワインが振る舞われる。

これは、その場で頂く。

ワインは初めてだ。


祭壇の前に、供え物や寄付を置く。


他の人たちは、家族や友人もいるのだろう。

暫くすると、みんな帰っていった。


「ファリアさん、まだ何か儀式がありますか?一緒に新年をお祝いしたいのですが」

「ユキノさん、ありがとう。小さな神殿ですから、昼と夕方の祈りだけですよ」

「では、ファリアさんは、ご馳走を食べたりワインを飲んでも大丈夫ですか」

「あら、嬉しいわ。部屋に行きましょう」


ファリアさんの自室に行く。

テーブルに、用意したご馳走やお菓子を出す。


「宿屋暮らしで、手作りではないですが」

「気持ちだけでも嬉しいわよ」


師匠のワインを出す。


おしゃべりをしながら、ご馳走を食べて、雪乃はワインは少しだけ。


「ユキノさんは、また祝福が強くなったみたいね」

「そうなんですか?」

「ええ、一応神殿を任されていますから、そのくらいは分かります」

「もう少し、雪が積もる前に、最後の聖樹に向かいます」

「伝説に立ち会えるなんて凄いことね」

「ファリアさんにはすぐに報告に来ます」

「嬉しいけど、無理は無しよ」


昼の祈りと夕方の祈りを一緒にして、宿屋に戻る。


お祭り騒ぎだった。

料理は食べ放題、飲み物も飲み放題。

いいんだろうかと思うほどだ。

一年に一度だけだから、ご主人も酔っているようだ。


後が大変だなとか心配しながら、料理を食べる。お酒は無しで、果汁やお茶を飲む。


街中が、こんな風なんだろう。


今日だけは、お祝いのなかに身を置く。


夜が更けても賑やかだったけど、部屋で休む。

飲み物はどさくさ紛れに頂いてきた。



翌日は、普通の朝食。

ご主人は眠そうだった。

聖樹を巡り、目印の場所に移動する。


気持ちも新たに、トルフを目指す。

北西へ、飛翔して、戦闘。


神殿で祈ったせいか、戦闘が、少し楽になった。


元の世界では、信仰とか、伝説とかは気にもかけなかった。


この世界では、魔力があり、魔法がある。

自分が身を持って証明している。それだけでも、信じてみようと思わされる。


戦闘を繰り返し、進み続ける。

水曜日に、城壁が見えた。

かなり進みやすくなったからだ。


トルフの門の前に降りる。

門が開いて、急いで入る。

二重の門を通る。

ここは東門らしい。


冒険者ギルドを探す。

南門への馬車を見つけて乗る。

銅貨20枚。


南門に着き、夕方には時間があるが、少し考える。

今日はここで宿屋を探そう。


新年の休みでも、宿屋はあった。

シャワーがありそうな宿屋に部屋を取る。


夕食は、質素なもので、部屋は普通だった。


明日からレゴナを目指す。

何故か急ぎたい気持ちが強い。

冬が怖いからだろうか。


ベッドに熱風をかけて、シャワーを浴びる。

強くなった気がするから、ステータスを見てみよう。



ユキノ、19歳

職業、冒険者、ランクA

レベル、3000

体力900000

知力900000

俊敏900000

魔力900000

スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】

【魔法】火、水、風、土、雷、氷、

聖、闇、無、時空、重力、付与


上がり方が早い。

でも、無敵なんかじゃない。

どこまでいけるのか、頑張ろう。




▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶




豪勢な応接間のような部屋。

魔石が惜しみなく使われた照明。

ソファーに座る完璧な美女。

後ろに控える男たち。

来客が数人。代表らしき人物が話す。


「サオリ様、新年のご挨拶に伺いました」

「わざわざのお越し感謝します」

「サオリ様の作る薬のおかげで、教会も繁栄します。感謝致します」

「新年は、教会も忙しいでしょう」

「はい、ご挨拶のみで失礼します」


薄暗い部屋に戻る。


「ふふ…ご苦労なことだ」

「サオリ様のお顔を見るだけでも、感謝するに値します」

「種は蒔いた」

「サオリ様…お側に侍らせて頂きたく…」

「お前たちは、私の物だ。後で新年とやらを祝うがいい」

「サオリ様…有難く…」

「新年の祭りか…ふふ、その後が本当の祭りになるだろう」























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