西の大陸へ
火曜日の午前10時に出航する船を予約した。
月曜日はマルト商会に行く。
今度の船旅は四日なので、すぐに戻れる。
その先は分からない。
ドルアに着いてみてから、情報を集めるしかない。
午後は、程々に狩りと採取をして、宿屋に戻り、明日から少し旅をすると告げる。
慣れた宿屋での夕食と、お風呂。
明日は早いから、早めに休む。
朝は早い朝食を食べて、聖樹をハシゴしたらエストへ向かう。
乗船案内は始まっていた。
タラップでチケットと冒険者証を見せて、案内される。
上階層でカードに交換するのは、前と同じ。
部屋に案内され、大人しくしている。
ウェルカムドリンクはなかった。
今回は、冒険者スタイルで良さそうだ。
10時に出航して、昼前頃から昼食の案内があった。
上階層のレストランに行く。
お客は少ない。
窓際の席に座り、決まった食事が出される。
悪くない味だ。デザートもコーヒーも付く。
船内散策はあまりしたい雰囲気ではないので、部屋に戻り大人しくする。
夕食も、決まった食事。味も量も適度で、デザートにコーヒーが付くのも同じだ。
今回の船旅は、目的地に着くまで何も分からない。
食事以外の時間は、部屋で寝転び、あまり何も考えないようにしている。
まあ、ゴロゴロしてたら、鈍りそうだから、軽く運動はする。
考えないためには身体を動かす。
しかし、筋力も怖い。
片手で腕立て伏せできちゃう。
柔軟性は、元からだけど、腹筋も、上半身と両足を同時に上げる方式が、楽々できる。
握力は、怖いから試していない。
リンゴを握り潰せるとかだと、女の子的には
ショックだ。
四日は、すぐに経ち、土曜日の昼前、ドルアの街に着いた。
下船口でカードを返し、その先のゲートで冒険者証を見せて、入国。
ドルアの街は、城壁が高く堅牢で、西の大陸の厳しさを、早くも感じさせる作りだ。
街の広さは、そこそこ広い。
本屋を探す。
西の大陸の地図を買うためだ。
地図を手に入れて、昼食を食べる店を探して、入る。
軽い食事をしながら、地図を見る。
南の大陸は、ドルアから東の海岸寄りに、小国が北へ向けて三国。
南から、ルビア、カゲフ、タナト王国。
ドルアは王国ではなく、自治領のようだ。
大陸の真ん中近くにアゲイル王国があり、聖樹は、アゲイル王国の北西にある。
地理は大体分かった。
ただ、街道らしいものが書かれていない。
魔物だらけの大陸だと、師匠が言っていたので、途中に町や村も無いようだ。
まずは、ルビア王国の方角へ、進んでみないと、魔物の強さも分からない。
ドルアの門へ向かう。
冒険者証を見せて通過する。
外に出て、目を見張る。所々木が生えてはいるが、荒野だ。低い岩山や荒れ地ばかりの。
ドルアから出てきた馬車は、急ぐように走り去る。
地面を蹴り、飛翔する。
空にも魔物はいる。
何も吐かないが、獰猛さは肌で感じる。
これは厄介だ。空も安全ではない。
早速の空中戦。
それほど時間はかからなかったが、手応えの充分過ぎる魔物だ。翼を広げると三メートルほど。大きさもそこそこある。
魔物を回収する。
大陸全体の、魔力が濃い、
夕方までに、10回の戦闘をこなして、目印になりそうな木を覚える。
リンダースに戻り、宿屋に行く。
部屋をお願いして、夕食を食べる。
部屋のお風呂に入り、部屋着に着替えたら、ベッドに横になる。
西の大陸は、そう簡単には進めない。
地道に戦いながら聖樹を目指すしかない。
次の日は、朝食後、聖樹をハシゴしたら、昨日の場所に移動。
また地面を蹴り、飛翔する。
空中戦を四回こなして飛翔を続けると、地上に馬車が見えて、戦う人たちがいた。
大きな魔物に五人の冒険者風の人たち。
降下しながら、愛用の剣で、首に狙いを定める。
風を纏わせ、上空から一気に斬る。
首を半ばまで切り裂き、もう一撃。
冒険者たちは傷を負っている。
治癒。
聖属性も腕が上がったのか、深手の傷も塞がり、治る。
「助かった。冒険者?だよな」
「はい、あなた方も」
「ああ、腕試しで旅をしている」
「そうですか。この大陸はこんな感じですか?」
「ああ、魔物の大陸だ」
「先を急ぎますので、幸運を祈ります」
「あんたもな」
また地面を蹴り、飛翔する。
夕方、目印になる木を見つけるまでに、八回戦闘した。
この大陸は、昔からこんな感じだったのか?
リンダースに移動して、タキガワに行く。
「今晩は」
「雪乃さん、いらっしゃい」
みんなの顔を見て、ホッとする。
椅子に座り、飲み物と料理を頂く。
知らないうちにため息をついていた。
「雪乃さん、疲れていますね」
「あ、いえ、西の大陸はなかなか進めなくてつい」
「そんなに大変な場所ですか」
「魔物の大陸。だそうです」
「人は?どんな風に暮らしていますか」
「まだ、辿り着いていませんから」
「そうですか」
あと一週間で感謝月になる。
冬も本格的になるだろう。
「そろそろ優子さんのお店で、冬服を買わないといけないかも知れませんね」
「あら、いつでも歓迎よ」
また、いつも通り、雑談をする。
宿屋に戻り、お風呂。
瞬間移動が使えなかったら、ゾッとする旅だ。
大神は、よく分からないが、神殿や聖樹には感謝している。
そっと祈る。
よく眠り、明日に備えよう。
翌日は、マルト商会に行く日だ。
西の大陸の、空の魔物を買い取ってもらえるか、聞いてみた。
ダグラスさんは、獲物を見て、商人用だろう図鑑を見る。
「これは、珍しい。肉は見た目に反して美味しい。内臓や骨は薬の材料に。羽根は装飾品にも使われる。だそうです」
「では、売り物になりますね」
「はい、充分高値の。魔石も大きいそうですから楽しみにしてください」
「では、10体、他はいつも通りです」
「確かに、買い取ります」
皮袋がいつもより、重い。
売れるなら、まだ、戦う甲斐がある。
本当に現金な話だけど、そう思わないと、手応えがあり過ぎる魔物だから。
マルト商会を出て、手土産を買い、ファリアさんの神殿に顔を出すことにした。
手紙のお礼と報告をしていなかった。
神殿の門を入り、呼びかける。
「こんにちはーファリアさーん」
すぐに姿を現すファリアさん。
「あら、ユキノさん」
神殿に行き、祈る。
その後、手紙のお礼を言い、手土産を渡す。
ファリアさんは祭壇に供える。
寄付は受け取ってもらえるか、率直に聞く。
受け取ってはくれるようだ。
「あまり気遣いはしなくても」
「リンダースの民を名乗りましたから」
「では、有難く頂きます」
今日は、お礼と、西の大陸に着いた報告だけだからと、歩きながら話す。
「そうですか、聖樹を巡るんですね」
「はい、神殿長から伝説を聞きました」
「旅のご無事をお祈りしますね」
「ファリアさんに祈って頂けたら嬉しいですし、元気が出ますよ」
ファリアさんの笑顔に送られ、神殿を出た。
少しでも進むため、昨日の場所に移動する。
飛翔して空中戦、歩くよりは早いだろう。
魔物は多い。鳥の魔物も、違う種類に遭遇した。大きい。翼を広げると五メートル以上ある。
氷で剣を作り、二刀流で戦う。
落ちる魔物を浮遊させて回収する。
ルビア王国は、まだ見えない。
試練だと思い、いや、と打ち消す。
まだ聖樹には近づいてさえいない。
聖樹を全て巡ってからが、試練だろう。
夕方、目印にする場所に降りるまで、10体以上の魔物を倒した。
リンダースに戻り、宿屋で夕食。
お風呂に入る。
贅沢な旅だなと思う。
この先、毎日戻れないような場所が、あるかも知れない。
休めるうちに休む。
翌日も、朝食後、聖樹をハシゴして、恵みを受け、泉の水を汲む。
昨日の場所に移動したら、そんなこともあるだろうと思っていたが、近くに魔物がいた。
飛ばないが、竜のような外見。
手強そうだが、倒すしかない。
地面を蹴る。あまり高く上がって、空の魔物も来たら厄介だ。
咆哮をあげる魔物。
弱点などは分からない。
首を狙う。
大きな尾を振り、剣が振動しそうな咆哮をあげる魔物。
素早く動き回り、首を斬る。
硬い。風を纏わせて斬る。
同じところを狙う。
氷を纏わせたら、少し威力が上がった気がした。
氷の剣を出し、二刀流。
30分くらい掛かって、倒した。
まだまだだな、ここで手こずるようでは、先が思いやられる。
魔物を回収したら、飛翔する。
北へ、少しずつでも進む。
昼食の休憩などできない。
夕方、目印にする場所に降りる。
空の魔物も次第に多くなる気がする。
こちらも少しは慣れてきたが、20体は倒した。
リンダースに移動。
宿屋で夕食、部屋に戻りお風呂。
段々と数が増える魔物たち。
剣の扱いは、正式に訓練したわけではない。
魔力は増えただろうから、何か有効な攻撃魔法を使えないか?
例えば、多数の敵を殲滅するには?
狩りは、売り物にするため、獲物の傷は少なく小さくする。
命の危険があれば、そんなことは考えていられない。
明日は、聖樹の側で少し試そう。
翌日、朝食後、聖樹の側の森に入る。
まず、火から。
火球を小さく圧縮する。
弾丸のイメージだ。
そこそこの太さの木に飛ばす。
焦げ跡を残して貫通した。
水球、氷球、風球、土球、雷球。
それぞれ、そこそこの威力はある。
無属性は?できるだろうか。
弱点属性が分からないか、無い場合に有効な気がする。
探知の中に、丁度良く、何か現れた。
熊だ。
無属性、圧縮、弾丸のように。
姿を現した熊の目の間を狙う。
一撃だった。
使えるかも知れない。
聖樹をハシゴして、昨日の場所へ移動する。
剣より遠距離攻撃ができる。
飛翔して、北へ。
空の魔物に、圧縮攻撃を試す。
氷と無属性が使いやすい。
三羽くらい現れても、近づく前に倒せる。
回収は浮遊させてする。
少し楽になった。
夕方まで飛翔した。
遠くに何か見える。
スピード全開で飛翔する。
無骨で堅牢そうな城壁。
ルビア王国だろう。
城壁前を覚えて、リンダースに戻る。
夕食とお風呂。
明日は西の大陸の暮らしが分かる。
翌日朝食後、聖樹をハシゴしたら、昨日の城壁前に移動する。
門は二重になっている。
街の側でも危険があるということだ。
列は、外ではなく、ひとつ目の門の上から確認されて、金属の扉が開く。
中に入ると、扉はすぐに閉まる。
そこが広い場所で、中門に列ができている。
朝なので、短い列だ。
冒険者風の人の列に並ぶ。
商人や貴族用と思われる列には実は誰もいない。朝から来るわけがない。
すぐに順番になり、冒険者証を見せる。
「ほう、若いのに朝から来ると思えば、Aランク冒険者か。ルビア王国にようこそ」
「初めて来たのですが、王国の案内は、地図を買うべきですか?」
「冒険者ギルドに行けば分かる」
「ありがとうございます」
門を通過して、一つの街になった王国に入る。
初めて目にする光景だ。
城壁の中に畑がある。
畑の間の道を歩く。
冒険者ギルドを探して、入る。
依頼板とは別に、大きな、王国の簡単な案内図がある。地図も無料配布だ。
ルビア王国は、中央に王宮があり、城壁へ向かって下町になる。
城壁沿いは、畑かスラムのようだ。
街の中を川が流れ、井戸も所々ある。生活や農業用の水は、これで賄われているみたいだ。
門は、東西南北にあり、全てガードが固い。
城壁の中の王国。
こんな風に、人が生きているのか。
私はまだ甘いな。
ひと通り街を歩き、北門を目指す。
さすがに小さいとは言え、一つの国だ。
日が傾いてきた。
北門行きの馬車があるんだろうと気がつき、苦笑する。
明日出直す方が良さそうだ。
人目につかない場所から、リンダースに移動する。
宿屋で、夕食とお風呂。
なんだか申し訳ない気分だけど、休息ができる間はしないと、旅が続かない。
翌日朝食後、聖樹をハシゴしたら、ルビアの冒険者ギルド前に移動する。
北門行きの馬車を探し、乗る。
料金は銀貨一枚。
城壁の中の国を走る馬車。
不思議な気分だ。
昼には北門に着き、門を通る。
冒険者証を見せて、広い場所に出る。
外の門は、短時間しか開かない。
急いで外に出る。
時間が勿体無いから、人目を気にせず、飛翔する。
北へ、次はカゲフ王国だ。
戦闘を繰り返しながら、夕方、目印になりそうな場所に降りる。
リンダースに移動する。
宿屋に戻り、夕食とお風呂。
もう、すぐに感謝月だ。
冬の間にどこまで進めるだろう。
ステータスは強化されたかな。
ユキノ、19歳
職業、冒険者、ランクA
レベル、1000
体力700000
知力700000
俊敏700000
魔力700000
スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】
【魔法】火、水、風、土、雷、氷、
聖、闇、無、時空、重力、付与
西の大陸は、やっぱり過酷なんだ。
明日からも頑張ろう。
▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶
薄暗い豪華な部屋。
ベッドに横たわり男たちを纏わりつかせた美女。
完璧な美しさは、怖さを感じさせる。
「滝川、あの女はどうした」
「西の大陸で苦戦しております」
「ふふ、苦しむがいい」
「サオリ様、どうか私を…私たちを見てください」
「滝川、あいつらを甘やかせてやれ、帰ることなど忘れるくらいにな」
「サオリ様が気になさるようなやつらではありません。私が…私たちが…おります」




