中央大陸イスト
朝起きて、朝食を食べたら、宿屋の人に挨拶をして、まず聖樹に向かう。
聖樹の恵みを受け、泉の水を汲む。
一週間は来られないから、瓶を買い足した。
瓶は全部で20本。
ペットボトルは、衛生的に不安があるけど、汲んでおいた。
それから、リーゼルに移動して、船の乗船案内まで待つ。
出航二時間前から、乗船案内が始まり、列に並ぶ。出国でもあるので、身分証明書も必要だ。
タラップで冒険者証とチケットを確認されて、上階層に案内される。
階層の入り口で、チケットはカードと交換される。
カードの違いで、利用できる設備も違うようだ。
金貨20枚の部屋とはどんなものか?
部屋に案内される。
高いわけだ。お風呂付きだった。
ベッドもふかふかだし、贅沢だ。
こんな贅沢な旅で、船酔いとか勘弁だな。
出航まで、部屋で大人しくしている。
ノックされて驚いたら、ウェルカムドリンクのサービスだった。
かなり、良い部屋かも。
船長のウェルカムディナーとか、あったらどうしよう?
ひとり旅だから、相席とか、苦手だな。
まあ、仕方ないよね。
お金は払ったから、ちゃんとしたお客だ。
正午に出航して、軽食とデザートが食べられると案内された。
念のため、着替える。
クリーム色と、黒の二着のワンピース。
昼だから、クリーム色で、靴は黒だけど花のモチーフが付いている。
アクセサリーも、花をモチーフにしている。
髪止めで、髪を緩くまとめて、鏡を見る。
こんな格好は、いつ振りだろう?
しかし、腰には皮袋。
まあ、いいでしょ、いいよね。
だって、置いて行くのは不安だし。
船は、高速なのに、揺れがあまり無い。
船酔いは、多分大丈夫だろう。
上階層の人が行くのは、専用ラウンジ。
貴族っぽい人たちがいるよ。
でも、冒険者風な人もいる。
冒険者ランクの高い人か、貴族で冒険者か、まあ関係ないか。
軽食とデザートのビュッフェスタイル。
トロピカルティーみたいな飲み物と、サンドイッチを少し。
窓際の席で頂く。
気持ち悪くなったりはしないことを確認したら、ケーキとフルーツにコーヒー。
ゆっくり食べて、部屋に戻る。
まさか、異世界で船旅とは、思いもよらなかった。
普段着に着替え直して、船内を見に行く。
高速船なので、デッキはあるけど、海をすぐ見下ろすような場所ではない。
展望デッキが、上階層にある。
さすがに寒いから、船内に戻る。
下の階層は、どんな感じか、散策する。
最低でも、金貨10枚だ。
一番下と思われるあたりは、多分10人くらいでひと部屋。
次の階層は、六人くらいかな?
その次は四人部屋だろう。
で、その次が、雪乃がいる二人部屋。
その上がまだあるけど、行けないし、関係ない。
最低でも雑魚寝ではない。
ひと巡りして、部屋に戻る。
気分的には、相部屋じゃなくて良かったと思う。
一週間、知らない人の中は、まだ怖い。
あんまり変わってないな私。
情報収集のためには、むしろいろんな人と話した方がいい。
世界を巡る能力はありそうなのに、コミュ力が足りない。
友達を作っちゃうくらいの勢いが、あれば良かったのになあ。
一週間船の中だから、ストレッチや筋トレなんかしてみるか。
狩りをしない一週間も、初めてだ。
腕が鈍らないかちょっと心配。
結局、ゴロゴロしてたら、夕食の案内がきた。
黒のワンピースに着替え、アクセサリーも着けて、ダイニングに行く。
相席とかにはならないで、一人で食べる豪華な料理。やっぱり少し寂しいな。
リンデル王国から中央大陸に行く人たちなのか、帰る人たちなのか、空室があまり無いくらいだから、旅をする人は案外多いんだ。
食後のフルーツとコーヒーを頂きながら、ぼんやりしていた。
視線の端で、何か落ちたものが見えた。
品の良い老夫婦が通り過ぎたあとだ。
咄嗟に立ち、拾う。
古びた、肖像画?小さな紙だが、大切な物だろう。老夫婦を追う。
「あの、落とされましたよ」
「えっ、あら、すみません」
「いいえ」
「大切な物なのに、うっかりしました。ありがとうございます」
「いえ、お気になさらないでください」
会釈をして、老夫婦は、ダイニングから出て行った。
フルーツの残りとコーヒーを片付けて、席を立つ。
部屋に戻ったら、お風呂に入り、部屋着に着替える。
とりあえず、眠ろう。
朝食と昼食は、ラウンジで、ビュッフェ。
夕食はダイニングで、コース料理風。
部屋で、ストレッチや筋トレをして、2日過ぎた。
老夫婦は、会えば、会釈してくれるようになった。
3日目の昼食、いつも窓際の小さな席に座るのに、空いていない。
大人数のお客が少ない階層だから、窓際は人気の席だろうな。
少し待つか。
案内係の人に、窓際の席を待つことを伝え、入り口で立っていた。
係の人が戻ってきて、相席を勧める。
「あちらの方が、ご一緒にどうかと、おっしゃっています」
目を向けると、微笑む老夫婦の姿。
「はい、ではお願いします」
「こちらへどうぞ」
案内されて、窓際の四人がけのテーブルに着く。
「こんにちは、年寄りに付き合って頂くのは申し訳ないですね。どうぞ、ビュッフェに行ってらしてください」
「いえ、ありがとうございます。では食べる物を取りに行きます」
食べ物は、サンドイッチにパスタを少しずつ。飲み物はトロピカルティー。
席に戻り、会釈して座る。
ゆっくり食べ始める。
老夫婦も、ゆっくり食べている。
話しかけてくれたのは、ご婦人だった。
「お若い娘さんが、ひとり旅で、気になってしまいました。中央大陸には帰りですか」
「いいえ、行くところです。冒険者ですから多少のことは大丈夫です。ご夫妻は、お帰りですか?」
「冒険者の方ですか。私たちは帰りです。リンデル王国を少し、旅した帰りですよ」
「そうですか。リンデル王国はどちらに行かれましたか」
「リーゼルからリンダースまで往復しましたね。これでも、私たちは冒険者をしていたことがあります」
ひと通り食べて、デザートを取りに行く。
ケーキとフルーツとコーヒー。
「申し遅れましたが、私たちはメイナードと申します。私はエルンスト•フォン•メイナード、妻はマリア•フォン•メイナードです」
「貴族の方なんですね。私はユキノと申します」
「もう、隠居して、随分経ちますからお気にせず、船旅の縁でお話しをしましょう。ユキノさんは冒険に行くんですか」
「はい、それもありますが、聖樹を見たいと思っています」
「聖樹、ですか。私たちは、リンデル王国の聖樹を見たいと思っていましたが、見ることは叶いませんでした」
「そうですね。リンデル王国の聖樹は、辿り着くには過酷ですから」
「ユキノさんは、リンデル王国の聖樹に?」
「はい、行きました」
「そうですか」
デザートも食べ終わった。
「またお話しさせて頂いてもよろしいですか?年寄りの相手ですが」
「喜んで。ひとり旅は少し寂しいですから」
部屋に戻る。
老夫婦の話相手は、ホッとする。
その日から、食事はメイナード夫妻と一緒に食べるようになった。
美味しい食事に、デザートや飲み物。
話は少しずつはずみ、親しさも増した。
メイナード夫妻は、中央大陸のただ一つの王国、サルトリア王国の王都で、神殿の街、レオルトに住んでいるそうだ。
「レオルトの神殿には、誰でも入れるものですか?」
「勿論、神殿は人を拒みませんからね」
「聖樹は、近くに行けますか?」
「初めての人は、難しいです。教会派の人が聖樹を傷つけようとしたことがありましたから」
「そんなことが、神殿と教会は共存しているのではありませんか」
「狂信的な人はたまにいるものです」
「そうですか。聖樹を巡るのが、私の今のところの目標です」
「そうですか。西の大陸にも?」
「できれば、行くつもりです」
「レオルトに来たら、是非訪ねて来てくださいね。何かお役に立てるかも知れません」
「ありがとうございます」
船旅は、少し楽しいものになっていた。
明日は、昼過ぎにはイストに着く、最後の夕食。メイナード夫妻が、少し詳しい話をしてくれた。
「私たちは、長男が後を継ぎ、時々旅をしています」
「はい」
「次男が冒険者なのです。最初に拾って頂いた肖像、あれが次男なのです」
「そうなんですか」
「次男は、聖樹を巡る旅をしていました。あなたと同じように」
「はい」
「リンデル王国で、消息が分からなくなりました。手掛かりを求めています」
「それは…」
「生きていると信じています。ユキノさん、厚かましいですが、手掛かりを、少しでも見つけて頂けませんか?」
「分かりました。どれほどのことができるか分かりませんが」
「西の大陸は、私たちには無理があります。人を雇ってはいますが、簡単ではないようです」
「私は、大陸を全て巡り、聖樹を見たいと思っています。目的は違いますが、情報は集めます」
「レオルトの、連絡先をお渡しします」
「縁があったのです。時々連絡させていただきます」
聖樹を巡る旅、また一つ目的が増えた。
何かに導かれるような感覚が、少しした。
翌日は、冒険者スタイルに戻り、朝食を食べる。
昼過ぎまでに着くので、昼食は無い。
「まあ、冒険者の服装ですか」
「はい、普段はこんな格好です」
「良かったら、レオルトまでご一緒しませんか?」
「有難いですけど、イストにも滞在して、調べ物をするつもりです」
「ああ、そうですね、レオルトでお会いできる日を楽しみにしています」
「私も、楽しみにしています」
「良い旅になるように祈っています」
「私も。ありがとうございます」
お互い、部屋に戻り、下船の準備になる。
雪乃は、準備というほどのことは無いが。
下船の案内が始まり、階層の上のお客から案内される。
下船口に並び、着岸を待つ。
着岸して、タラップが渡され、順番にカードを返しながら、下船する。
下船したところで入国になるので、冒険者証を見せる。
冒険者証は、確かに身分証明になることが分かった。まあ、疑ってはいなかったけど。
馬車乗り場に向かうのか、宿屋に行くのか、メイナード夫妻が見えたので、お互いに手を振り合った。
サルトリア王国の南東の港街イストに着いた。
街は大きく、賑わっている。
街の地図がほしい。
観光案内所があった。
行ってみる。イストの地図は、無料配布みたいだ。
図書館を探す。
大きな図書館があるようだ。
案内所で聞いてみたら、残念ながら貴族専用だった。
少し街を歩いてから、リンダースに移動する。
月曜日だから、マルト商会に行く。
いつもと時間が違うが、買い取りをしてもらう。
獲物や果実や薬草は、ストックが沢山ある。
売り物には困らない。
また、イストに移動して、宿屋を探す。
案内所で、中の上くらいを紹介してもらう。
サルトリア王国は、リンデル王国と比べると、物価が高い気がする。
宿屋は、お風呂と二食付きで、銀貨40枚だ。
暫く、イストを拠点にして、レオルトに向かいながら、狩りをしてみる。
宿屋の夕食は美味しく、部屋も良い。
部屋で落ち着いて、街の地図を眺める。
リーゼルより、大きな街だ。教会もあるし、小さな神殿もある。
神殿は、寄ってもいいかな。
イストからレオルトに行くには、やや西寄りの北へ向かう。
そろそろ冬だ。
行けるところまで行く感じになるかな。
翌日は、神殿に行ってみる。
小さな神殿だけど、神殿の総本山の国だからか、神官が二人いた。
リンデル王国の果実と、寄付をして、祭壇で祈る。
ここでも、神々に愛された人だと言われた。
街の北にある門へ向かい、冒険者証を見せて外に出る。
少し離れたら、久しぶりに地面を蹴る。
飛翔して、森を探す。
あまり魔力は濃くないが、魔力のある森に降りて、狩りや採取をする。
リンデル王国と、魔物の種類は変わらないようだ。少し色が違うし、水球を飛ばす魔物だけど。
サルトリア王国は、神殿と教会が同じくらいの力を持ち、貴族の力が強い国だそうだ。
物価も高く、貧しい庶民には、神殿と教会が救いを与える。
そんな感じで、古い昔から、国力をあまり下げずにきた、少し特別な国だ。
少しずつ北を目指しながら、狩りや採取を続ける。
リンダースに泊まってもいいけど、初めての違う国だから、暫くはイストに滞在する。
朝は、リンデル王国の聖樹に行く。
聖樹の恵みを受けて、泉の水を汲む。
それから、昨日進んだ場所に移動して、狩りや採取をしながら、北へ向かう。
もうすぐ12月だ。
ローブのおかげで、寒さは辛くない。
地図を見ると、中央大陸は、北の三分の一は人が住まない場所のようだ。
レオルトは北の端ではないから、進めるだろう。
日曜日になり、レオルトにもかなり近づいた。夕方まで狩りをしたら、リンダースに移動。二週間ぶりの転移者会だ。
タキガワに向かう。
「今晩は」
「雪乃さん、いらっしゃい」
久しぶりの和食だ。
みんなに旅の話をしながら、飲み物や料理を頂く。
「サルトリア王国は、貴族が強いので、調べ物がなかなかできません」
「いよいよ神殿ですか。何か分かるといいですね」
「はい、聖樹を巡ることが、何かに繋がるような気がします」
「無理はしないでくださいね」
沢井さんたちも、学院の図書館を、調べ直しているそうだ。
また、雑談したり、飲み物や料理を頂き、イストの宿屋に戻った。
翌朝、朝食後、宿を引き払い、聖樹に行き、恵みと泉の水を汲む。
マルト商会に買い取りに行き、また重い皮袋と、魔石を貰う。
昨日の場所から、飛翔して、レオルトを目指す。
街道は整備され、町や村が多い。
昼は、町に降りて、昼食を食べる。
また飛翔して、夕方には、レオルトだろう大きな城壁が見えた。
地上に降りて、門に並ぶ。
冒険者証を見せて通過したら、宿屋を探す。
宿屋は、門に近い下町にある。
ここでも中の上を探して、部屋があるか聞いた。
部屋はお風呂と二食付きで、銀貨50枚。
やはり、物価は高い。
神殿に行って、聖樹を見せてもらえたら、リンダースに戻って、通う方がいいかも知れないな。
真冬が厳しいなら、旅も続けられるかどうか分からない。
夕食を食べる。高いだけあって美味しい。
部屋も、ベッドは寝心地が良さそうだ。
ベッドに熱風をかけて、お風呂に入る。
明日は神殿に行こう。
狩りがあまりできていないけど、ステータスはどうだろうか。
ユキノ、19歳
職業、冒険者、ランクA
レベル、650
体力250000
知力250000
俊敏250000
魔力250000
スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】
【魔法】火、水、風、土、雷、氷、
聖、闇、無、時空、重力、付与
少しは上がった。
まだまだ、西の大陸もある。
頑張ろう。
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薄暗い、豪華な部屋。
完璧なまでの美女。
纏わりつく男たち。
「滝川、あの女はどうなった」
「旅をしているようです」
「気に入らん」
「大したことなどできないでしょう」
「ふん、お前の料理で縛り付けておけ」
「転移者会など遊びですから」
「必要な物は召喚してやる」




