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港街リーゼル

とりあえず、北の三国を、巡った。


次は、リンデル王国の南を目指す。


いずれ、中央大陸や、西の大陸も行くつもりだ。


お金を貯めておいた方が良い。

知らない土地で、獲物を売るのは難しいかも知れないから。


冒険者ギルドには、週に三回ほど顔を出している。

受けられそうな依頼があれば、受けるが、ランクの高い依頼は少ない。


護衛の依頼なら、結構ある。

でも、時間がかかるし、拘束されるから、申し訳ないけど受けない。


朝、聖樹に行き、恵みを受け、泉の水を汲む。

北の山の、南側か、北側で、狩りをする。


この辺りは、魔力が濃い。

珍しい果実もあるし、魔物も強く、訓練と稼ぎになる。


昼の休憩をしたら、リンダースから南へ向かう。

南の港街リーゼルは、北の国とも中央大陸とも、船の行き来がある。


リンダースからは、街道も整備されている。

途中、貴族の領地があったりするが、それほど安全な道程ではないそうだ。


夕方まで、飛翔しながら、時々森に入り、狩りをしてみる。


北ほどではないが、魔力のある森が多く、果実が珍しい。

南国のフルーツだろう。

美味しい果実が多い。


夕方降りた場所を覚えたら、リンダースに戻る。


そんな感じに、少しずつ進み、一週間が経った。


時間をかけているのは、中央大陸に渡るかも知れないから、稼げるうちに稼ぐためだ。


ただ、初めての冬がくる。

冬の海は荒れないだろうか?

そもそも、この世界の冬は厳しいだろうか。


海路を使わずに、飛翔することも考えたが、空中で休憩とか、現実的ではない。

しかも、初めて行く国に、空からなんて不都合過ぎる。



日曜日、タキガワに向かう。

リンダースの転移者たちの、拠り所。


「今晩は」

「雪乃さん、いらっしゃい」


滝川さんが迎えてくれる。

椅子に座り、お茶を飲む。

料理も和食に近い。頂きます。


暫く雑談したら、高木さんが話す。


「今日は俺の話だな」


みんな、静かになる。


高木さんが転移したのは、三年前。

大学の院生だった。

専攻は、歴史、日本史が好きで、戦国時代をテーマに研究して、論文を書いていた。


やはり、家への帰り道で、光に包まれた。


見たことのない城壁、言葉が分からない。

理解できないまま、タキガワに連れて来られた。


滝川さんと川本さんがいた。

話を聞いても、納得などできない。

首から下がるプレート。ステータス。

魔力?ふざけた話だと思った。


滝川さんに言葉と文字を習う。

転移者会が開かれていたので、みんなと知り合う。


沢井さんが推薦して、魔法学院に入る。

専門が日本史で、役に立たない自分に腹立ちをおぼえた。


沢井さんと橋本さんの帰還の研究を手伝うようになり、学院の寮で暮らしている。


「みんなと知り合い、俺はまだ三年だと思うようにした。でも、焦りばかりだ」


高木さんは、チラッと雪乃を見た。


次は滝川さんだ。

滝川さんは、言葉や文字が分かったと言っていた。

そして、このなかでは、一番前に来た。


「私の話は、皆さん食べたり飲んだりしながら聞いてください」


滝川さんは、姿の無い声を聞いた。

若くして、個人経営の小さな居酒屋を開いていた。

経営不振になり、資金繰りに悩み、妻子は実家に帰ってしまった。


閉店して、誰もいない店の中、頭の中に、声が聞こえた。


気がついたら、見たことの無い街の前だった。首から下がるプレート。

日本人ではない人たち。


言葉は、不思議に分かった。

プレートを見せて、街に入る。文字も読める。


声が、世界を渡ると言っていたので、知らない土地だが、ここで生きるのかと思った。


お金をどうするかが問題だった。

料理屋を回り、雇ってくれる店を探した。

善良な人が多いようで、住み込みで働く店が見つかり、この国の料理を習いながらお金を貯めた。


転移したのは15年前。三年で小さな店を出せた。和食の包丁使いは丁寧だ。

お客がつき、店を大きくできた。



みんな、ため息をつく。

15年、沢井さんが来るまで5年、ひとりで生きてきたのか。



「皆さん、プレートなんですね。私だけ腕輪なのは、何が違うのでしょうか」


雪乃が呟く。


腕輪の方が、昔の物のはずだ。


高木さんが来てから、三年近く、転移者は現れていない。


雪乃だけが、リンダースではなく、空中に放り出された。



疑問は多いが、少なくとも仲間がいるのは大きなことだ。

この世界を巡りながら、情報を集める。

それだけは変わらない。


雪乃には、それができそうな能力がある。


神殿で聞いた、使命という言葉を思い出す。


また来週からは、みんな普通に雑談して、楽しむ。みんなの話を聞いたから、すぐに何か分かるわけがない。


時間がかかる。

みんな、それが一番辛いだろうけど。


タキガワを出て、宿屋に帰る。


お風呂もある。快適なベッド。転移者が作る服や料理。


それなりに快適な生活。


何か不思議な気がする。


いつの間にか眠っていた。



翌日は、マルト商会に行く日だ。

種類の増えた果実と獲物を買い取って貰い、先週の魔石を受け取る。


魔石は、恐ろしいほど溜まっている。

恐ろしいほど魔物を倒したことになる。

雪乃怖い娘。


南へ向かうか考えて、ふと、神殿に行こうと思った。


中央大陸の話を聞いておきたい。


街外れの神殿に、歩いて行く。


「こんにちはー、ファリアさーん」


門を入り、呼びかける。


「あら、ユキノさんこんにちは」


どこからともなく現れるファリアさん。


神殿に来たから、祭壇に行き、祈る。

それから、ファリアさんの生活する部屋に通される。


お茶のポットと、手作りのお菓子を出され、手土産くらい持って来たら良かったと反省する。


南のフルーツを少し出してみる。

ファリアさんは、嬉しそうに、祭壇に供える。それならばと、北の果実も出したりして、供える。


「後でファリアさんが食べてくれますよね」

「ええ、後で頂きますよ」

「ファリアさん、ひとりでここに…どのくらい暮らしてるんですか?」

「10年くらいかしら」

「10年…街に出たりしますよね」


ファリアさんは、若く見えるが…


「勿論、生活のための物は買いに行きます」

「神殿暮らしって…すみません、詮索してしまいました」


お金とか、どうしてるんだろう。


「構いませんよ。ユキノさんは、今日は何かお話しでもありますか」

「はい、今南に向かってます。港街に着いたら中央大陸に行こうかと思ってます」

「神殿に行かれますか」

「行きたいと思います。冬の海は渡れますか?」

「勿論寒いですが、船は出ますね」

「そうですか。神殿は、誰でも行けますか」

「祈りには行けます。神殿は人を拒みませんから。ただ、中央大陸の聖樹の神殿は、大きなところで、総本山みたいなものです」

「聖樹には、近づけるのでしょうか」

「本来なら、誰でも。今は分かりません」

「そうですか。聖樹ですからね」

「私が手紙を書きます」

「えっ、私なんかのために良いんですか」

「ユキノさんは、神々に愛されています。あちらの神殿でも、すぐに分かるはずです」

「怖いほど魔物を倒していますけど、神々には愛されるんですね」

「そうですね、神々の祝福は、この世界では生まれ持ったものです。ユキノさんは転移した時から、変わらないと思います」

「何か、色々不思議です」

「手紙は書いておきますから、また来てくださいね」

「はい、必ず来ます」


門で見送られ、街に戻る。

夕方までにはまだ時間がある。

北の山の側で、少し狩りをした。



翌日は、冒険者ギルドに顔を出す。

ドルトスさんが、久しぶりに手招きしてきた。

一階の応接室に行く。


「久しぶりだな」

「はい、お久しぶりです」

「魔術ギルドから、魔石の買い取りの要望がきている」

「では、今日でも構いませんか」

「大丈夫だろう」

「じゃあ、向かいます」

「冒険者ギルドの依頼は程々でいいからな」

「ありがとうございます」


魔石が売れるのは助かる。


冒険者ギルドを出て、魔術ギルドに移動。

玄関を入り、受付で魔石を売るために来たことを告げ、ロードさんを呼んでもらう。


ロードさんが現れ、また近くの部屋に入る。


「こんにちは、お久しぶりです」

「お久しぶりですね、ユキノさん」

「早速ですが、魔石はいくつくらい必要でしょうか?」

「また100個、買い取ります」

「分かりました」


厚い布が敷かれたテーブルに、魔石を出す。

分かりやすく、10個ずつにして出した。

確認しながら、仕舞うロードさん。


「確かに、受け取りました」


皮袋を渡される。やっぱり重い。


「ユキノさんの魔力は、リンダースでも噂になっています」

「そうですか」

「魔法学院や、魔術ギルドでも注目され始めていますね」

「それは」

「そのうち、何かの話があるかも知れませんよ」

「そうですか、その時に考えます」


魔術ギルドに関われば、何か進展はあるだろう。

自由がなくなる可能性もあるが。


やはり、旅を優先する方が良さそうだ。


魔術ギルドを出た。


聖樹に寄り、昼食を食べる。

前回の場所に移動して、南へ向かう。


町や村を通過して、全力で飛ぶ。


街道が広くなり、リーゼルが近いように思う。


大きな町を通過して、視界が広がる。

草原の先に、街があり、海が見えた。


街の側に降りる。


城壁は高い。門も大きい。

一般用の列に並ぶ。

冒険者証を見せて、問題なく通過する。


門から、海に向かって、緩やかに下る街。


港は遠いが、船が見える。


暫く眺めた後、冒険者ギルドに寄り、本屋を探し、地図を買う。

港街リーゼルの地図と、船が出ているだけあって、中央大陸の簡単な地図もある。


リーゼルには、図書館はあるだろうか?


地図を見る。

学校が少ないのは、王都にあるからだろう。

図書館はあった。

貴族専用でなければいいけど。


もうそろそろ夕方だ。

リンダースに戻るかどうか悩む。


戻って、明日出直すことにした。


聖樹経由で、宿屋に戻り、夕食を食べる。


部屋でベッドに寝転んで、考える。


この大陸の、主要な街はこれだけだろうか?

リーゼルで何か分かればいいけど。


また明日、期待し過ぎないようにと思いながら眠った。



翌朝、朝食を食べたら、リーゼルに移動する。南だからか、冬を前にしてそれほど寒くはない。


図書館を目指す。

やや大きな図書館だ。

貴族専用ではなさそうな雰囲気。


受付で、冒険者証を見せて、注意事項を聞く。今までと変わらない。


何から探そうか?

歴史の本にしよう。

リンデル王国の歴史、港街リーゼルの歴史。


リンデル王国は、五千年前に、神の手により聖なる木が植えられ、聖樹と呼ばれる木を中心に、神殿が建ち、それより前の争いの中、残った王家と貴族たちが復興した。


神殿で聞いた神話の世界だな。


小さな国が多く、争いや、疫病などで、国は形を変えていく。


500年ほど前、神はひとりであり、救いは差し伸べられるものという、教会が現れ、聖樹から南に離れた街、リンダースに勢力を置いた。


争いや疫病から、救いを求める人たちの信仰を集め、王国は、王都をリンダースに移した。


リンデル王国は、栄えた。

南は港街リーゼル。リンダースとリーゼルを結ぶ町も栄え、西と東にも大きな街ができた。


西と東の街からは、北の小国と馬車が行き交い。リーゼルからは、中央大陸や、北の小国へも船が行き交っていた。


100年に一度くらいは、疫病に苦しむこともあったが、リンデル王国は、大陸の南を治める大国であることは変わらなかった。



ここまでだ。

その先が書かれた本は、ないのか?


リーゼルは、500年前は小さな国だった。

300年ほど前に、リンデル王国に併合されたらしい。


何か分かりそうで分からない。


本を棚に返し、また探す。

魔法の本を数冊、古そうな本もある。


古い本をそっとめくる。


魔法は生まれ持った祝福であり、神殿の祭壇で、確認される。

それぞれの神々に祈り、聖樹の加護を受け、自ら研鑽して成すものである。


神殿の話だな。


それぞれの魔法を司る神々がいる。

聖樹の加護は、求める者に与えられる。


それも知っている。


神々の話が書かれた神話みたいな本だ。


ふと、気がついたら、夕方を過ぎていた。

お昼忘れてた。橋本さんみたいだな。


図書館を出て、急いでリンダースに移動。

夕食に間に合った。


お風呂に入り、浴槽で手足を伸ばす。

座りっぱなしだったから、背中が痛い。


明日も、今日読めなかった本を読もう。


ベッドに横になったら、すぐ眠った。



翌朝、朝食を食べたら、リーゼルの図書館へ行く。

瞬間移動って便利だな。


魔法の本を持って来る。


新しい本を開く。


魔法は、生まれつきのものだ。

才能を持つ者は少ない。

才能は自然と現れるもので、それを訓練して伸ばすが、限界はその個人により違う。


あれ?ちょっと違うな。


昨日の古い本を探す。

ああ、書いた人が違うのか。


古い本は、神殿が編纂したようだ。

新しい本は、魔術ギルド編纂だ。


神殿の方は、求めて、研鑽したら無限ともとれる。


生まれつきとは言いながら、ちょっと考え方が違うな。


私は生まれじゃなく、転移した時からだけど、神殿の方に近いかな。


転移者のみんなも、ステータスは見てないけど、魔力はあるし、魔法も使えるから、神殿方式なら、無限になる。


転移者しか知らないから、他の魔法を使う人はどうなのか、分からないな。


やっぱり、人との繋がりを作っていかないと、難しいな。


昼食を食べに、図書館を出て、なんとなく港の方に向かう。

港の近くの小さなお店に入る。


「こんにちは」

「いらっしゃい」

「軽い食事はありますか?」

「魚のサンドイッチがあるよ」

「お願いします。飲み物も何か」

「お茶でいいかい?」

「はい」


窓から港が見える。

大きな船や、中くらい、小型まで、さまざまな船が停泊している。


魚のサンドイッチは、美味しい。

お茶も、フルーツティーみたいだ。


「中央大陸に行くには、どれくらいかかりますか?」

「普通なら二週間だな。速いのもある。一週間で着く」

「速い船は、値段が高いですよね」

「ああ、魔石が多いし、魔法使いの乗組員が多いからな」

「なるほど。ありがとうございます」

「港の案内所に行けば書いてある」

「行ってみます。ご馳走さまでした」


支払いをして、店を出た。

港の案内所に行く。

高い値段とは、どれくらいだろう。


中央大陸の港の名前、知らないや。

航路図がある。

中央大陸の東の港街イスト。


リーゼル、イスト間、金貨4枚〜。普通便。

高速便、金貨10枚〜。


なるほど、高い。


でも、魔石や獲物を売って、貯金はある。


今日が11月12日。

次の高速便は、11月16日の昼か。


毎週月曜日に出ている。

これを逃すと23日か。


マルト商会に言って、日曜日に買い取りして貰うか。


ぐずぐずする理由は無い。

ファリアさんにも、ああ、着いたら瞬間移動できるか。


とりあえずは、行こう。

窓口に向かう。


「来週の16日の高速便イスト行きは、空いてますか?」

「金貨20枚か30枚の部屋なら空きがあります」

「それでは、金貨20枚でひとり、お願いします」


支払う。チケットを渡される。


「正午に出航しますので、お早めにお越しください」

「はい、ありがとうございます」


チケットは、腕輪に仕舞う。


贅沢そうな船だな。

こんな格好で大丈夫かな?

ローブだからいいか。


北の森に移動して、狩りをする。

中央大陸の魔物はどんなものか分からない。

直前まで訓練と稼ぎだ。


まあ、一度行ったら、聖樹とリンダースに戻りながら進むけどね。


土曜日までは、狩りと採取を続け、日曜日の朝に、マルト商会に買い取りをしてもらう。


不安だったから、念のために、ユーコで綺麗なワンピースと、靴も買う。

船の部屋が高いから、と言うと、アクセサリーや、髪止めなんかも合わせてくれた。


貴族じゃないから毎日着替えるほどのことはないと思うけど、ワンピース二着とストールなんかも買う。


ファリアさんのところには、日持ちのするお菓子を手土産に行き、手紙を貰った。


日曜日の夕方、タキガワに行く。


「今晩は」

「雪乃さん、いらっしゃい」


いつも通りだ。

橋本さんは、果実はもういらない。

ちゃんと食べて寝てると言う。

大丈夫かな?


雑談しながら、飲んだり食べたり。


「来週は、来られないかも知れません。中央大陸に行きますから」

「えっ、もう行くんですか?」

「はい、一度行けば、すぐ帰れますから」

「ああ、そうだったね」

「一週間の船旅です」

「気をつけて行ってください」

「船酔いが心配ですけどね」


それからは、また雑談して、美味しい料理を頂く。


宿屋に戻り、明日から一週間旅に出ることを告げる。

預けたお金から、余った分を返してくれた。


お風呂に入り、ベッドに寝転ぶ。


中央大陸、どんな所だろう。

ステータス、確認しようかな。



ユキノ、19歳

職業、冒険者、ランクA

レベル、600

体力200000

知力200000

俊敏200000

魔力200000

スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】

【魔法】火、水、風、土、雷、氷、

聖、闇、無、時空、重力、付与


上がったね。中央大陸でも頑張ろう。

























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