北へ
日曜の夜は転移者会。
月曜日は、マルト商会に、獲物を売る。
秋も終わりが近い10月の末頃。
北へ、遠征を続ける。
山越えしたから、飛翔して、森には休憩に降りて、狩りと採取をする。
三日くらいで、森の先に草原が見えた。
草原に降りて、休憩する。
この大陸でも、南北でかなり違いがあるみたいだ。
先を急ぐ。
飛翔しながら、人工的な物を探す。
草原と、時々森。
森の魔力は、薄くなってきた。
もう少しで、人が暮らす場所を見つけられそうな気がする。
夕方前に、何か見えたが、時間がないので、明日にする。
聖樹に寄ってから、王都に帰る。
宿屋暮らしは、家事をしない。
そこら辺りは、女の子として気になるが、一人暮らしの手間を考えたら、このままでいいかと思う。
聖樹の側に、家があるけど、鍵は作らなかった。もし、訪れる人がいれば、使ってもらえば良い。
お風呂に入り、快適なベッドで眠る。
翌朝、聖樹に移動して、聖樹の恵みを貰う。
昨日の場所に移動。
飛翔して、進む。
草原に、道が現れ、道沿いに飛翔する。
村が見えた。
通過して飛ぶ。
畑や町がある。
街道沿いに飛翔を続けて、昼には草原に降りる。
草原には、牧畜をしている所もあるようだ。
のどかな風景だ。
昼食休憩をしたら、また地面を蹴る。
スピードは、ローブのおかげで、かなり早くても、大丈夫だ。
町や村を通過して、夕方、城壁が見えた。
少し迷ったけど、門に向かう。
勿論、一般用の列に並ぶ。
リンダースよりは、小さな門で、人もやや少ない。
冒険者証を見せる。
「Aランクですか。カルドラには初めてですか?」
「はい、リンデル王国から来ました」
「リンデル王国からですか。ここは、カルド王国の王都カルドラです」
門を通過したら、冒険者ギルドを探す。
すぐに見つけた。
冒険者ギルドに入り、受付のお姉さんに、宿屋のある場所を聞く。
観光案内所ではないけど、教えてくれた。
カルドラの地図もくれた。
一泊くらいは、してみよう。
宿屋がある場所に行き、そこそこ良さそうな宿屋に入る。
「今晩は、部屋はありますか?」
「ありますよ。風呂付きが良いですか?」
「はい、お風呂付きでお願いします」
「食事は?食べるかな」
「夕食と、朝食をお願いします」
部屋に案内される。
ベッドに熱風をかけておく。
特に、荷物を置いたりしないから、食事をしに行く。
魚料理が出された。北の海で魚がとれるのか。
そこそこの宿屋なので、美味しい物ばかりだった。
リンダースの宿屋は、お金を多めに預けているから、一日くらい帰らなくても大丈夫だろう。
北の小国は、いくつあるのだろうか。
翌朝、朝食を食べたら、宿代を払い、宿屋を出る。通貨は共通みたいで、良かった。
銀貨15枚。安いのかは分からない。
地図を見て、図書館を見つけていた。
貴族専用かも知れないけど、行ってみる。
図書館は、あまり大きくなかったけど、誰でも入れた。
受付で、冒険者証を見せて、注意事項を聞く。貸出はない。閲覧は自由。書き写しも自由だ。ありがたい。
勿論、本は高価だ。汚したり破損したら、かなりの罰金が取られる。
今日は一日、図書館で過ごすことになりそうだな。
地理、歴史の本を探す。
地理は、このカルド王国を詳しく、この大陸全体は、大まかなものだ。
それでも、情報はありがたい。
メモ帳は、新しく文房具屋で買った物を使う。
大陸の山は、山脈と言えるほど、高く連なり、東西に渡っている。
山脈の東西それぞれの端が、低くなり、海沿いは平地になっている。
山脈の位置は、大陸の北から三分の一辺りにある。
山脈の北には、小国が三国、西から、アンカ王国、カルド王国、ティード王国。
雪乃は、山脈の真ん中辺りを飛んで来たようだ。
三国は、北の海で魚をとり、畑や果樹園を作り、三国の間の草原では、牧畜もしている。
小さいが、魅力的な国だ。
山脈の南は、リンデル王国。
北の三国とは、行き来が難しく、リンデル王国の南の港街リーゼルから、海沿いの小さな町を経由して、わずかに交易がある。
昔は、海沿いの陸路もあったそうだが、今は使われていない。
三国も、リンデル王国も、100年くらいの昔には、今より国力があった。
西の中央大陸との交易も、盛んだった。
また100年前、キーワードだな。
歴史の方は、やはり、100年前の辺りは詳しくない。
カルド王国でも、疫病は時々あるようだ。
違う観点で見てみるか。
魔法の歴史とか、無いかな。
小さな図書館だから、あまり専門的な本は無い。魔法入門ならあった。
パラパラと見てみる。
魔法は、魔力のある人なら、誰でも使える。
訓練すれば、個人差はあるが、ある程度上達する。
ちょっと疑問に思う。
この世界には、ステータスがあり、他人のステータスは知らないけど、魔力ゼロな人はいない気がする。
理論上、みんな魔法が使えることになる。
そうなんだろうか?
みんな魔法が使えるのかな?
でも、私のステータスは高過ぎるらしいから、普通に魔法が使えるくらいでは、魔物に対抗できないのか。
国民全員魔法使いとかじゃなさそうだし。
なんか、疑問が増えただけか。
本を棚に戻す。
今度は、古そうな本を探す。
絵本…はやめて、神話…うーん。
建築の歴史…これもなあ。
やはり、大きな図書館に行けるようになるか、本を買うかだな。
図書館を出る。
カルド王国には、いつでも来れる。
東に飛んで、ティード王国を目指すかな。
街の門を通過して、東の方へ、ちょっと歩いて、地面を蹴る。
おお、放牧してるね。
スピードを上げて、飛ぶ。
さすがに半日じゃ行けないか。
昼、食べてなかったし。
覚えやすい木の側に降りる。
覚えたら、聖樹に寄って、リンダースに。
宿屋で夕食を食べる。お腹空いてた。
部屋でお風呂。
北の三国を巡ったら、中央大陸を目指すか。
軍の物資を返すのも、手詰まりだし、先にこの世界を巡って、ヒントを探す。
師匠も許してくれるはずだ。
師匠の生きた時代を知り、そこから何か答えを見つける。
狩りと獲物を売るのは、お金を得るために必要だし、転移者会も、情報交換の場だ。
神殿にも、顔を出そう。中央大陸の神殿は、聖樹があるらしいから、詳しく聞きたい。
また、翌日、聖樹に行き、恵みを受ける。
そこから、昨日の場所に移動。
地面を蹴り、飛翔する。
畑や村、町を通過して、昼には降りて休憩。
更に飛翔して、夕方、城壁が見えた。
城壁の手前に降りて、今日はリンダースに帰ろうと思う。
リンダースに戻り、宿屋で休む。
明日はティード王国だ。
翌朝、聖樹経由で、北の森で少し狩りをする。腕が鈍らないようにと、獲物集めのためだ。
ティード王国に移動。
城壁の門に並ぶ。カルドラと同じくらいの街に見える。
冒険者証を見せて、門を通る。
冒険者ギルドを探して、また街のことを聞く。
ここは、ティード王国の王都テトスだそうだ。
テトスの地図をくれる。親切だな。
図書館を探す。
見つけて、行ってみたら、また誰でも入れることが分かる。
北の三国は、王国だから、王家があり、貴族もいるはずだ。
でも、リンデル王国より、庶民的な気がする。お国柄か。
図書館は、カルドラと同じような規模で、規則も同じ。
地理の本をざっと見る。
カルドラで見たのと、あまり変わらない。
珍しい本を探して、本棚を見ていくが、そう簡単にはいかない。
図書館があることはありがたいけど。
テトスにも、いつでも来られるようになった。
後は、西のアンカ王国だ。
アンカ王国に行けるようになったら、南を目指し、港街リーゼルに行こう。
聖樹経由で、リンダースに戻る。
宿屋で休みながら、神殿のことや、転移者がいないか探すのは、難しいなと思う。
リンダースには、タキガワがあり、転移者は把握できる。
北の三国は、それぞれ、暫く暮らさないと、分からない。
今は、聖樹のある、中央大陸が気になる。
神殿もあるから、何か新しいことが、分かるような気がする。
翌日は、日曜日だった。
朝、聖樹に行き、恵みを受けて、カルドラの前に移動する。
今度は西に、飛翔する。
冬の前の放牧が、のどかだ。
昼には、降りて、休憩する。
休憩したら、また西へ向かう。
畑や村が、少しずつ増える。
夕方まで飛翔して、覚えられそうな場所に降りる。
聖樹に寄って、リンダースに戻る。
タキガワに行く日だ。
閉店した店に入る。
「今晩は」
「雪乃さん、いらっしゃい」
いつもの顔ぶれだ。
橋本さんに、聖樹の果実を渡す。
美味しい料理や飲み物を頂きながら、雑談する。
暫くして、橋本さんが、話す。
「今日は、僕が来た時の話をするよ」
みんな、静かになる。
橋本さんが来たのは、七年前。
大学の院生だった時、飲み会の帰りに、光に包まれた。
気がついたら、城壁が見えた。
死んだのかと思ったのも、言葉が分からないのも、タキガワに来たのも、首から下がるプレートも同じ。
異世界転生ものは知っていた。
自分の身に、本当に起きたことは、信じ難いが、どうやら夢ではない。
滝川さんに言葉と文字を習い、沢井さんの勧めで魔法学院に入り、一緒に研究をするようになった。
専門は、物理学で、講義を頼まれたこともあるが、理解できる生徒がいないので、研究室にこもるようになった。
簡単な理科の講義も頼まれて、週に一度は講義をする。この世界向けの理科なので、苦労はした。
夢中になると、寝食を忘れてしまうので、三年くらい、外に出ていなかった。
滝川さんが言うには、
「私の知る限りでは、沢井さん、鈴木さん、橋本さん、川本君、木下さん、高木さんの順に、来たね」
川本さんが話す。
「じゃあ、次は俺かな」
高卒のフリーター、適当な日々を送っていた時、バイト仲間とカラオケ帰りに、ひとりになったところで、光に包まれた。
気がつくと、ゲームの中みたいな城壁があった。ゲームの世界に転生とかの小説も知っていたが、まさかと思いながら、タキガワに連れて来られた。
首から下がる、プレートを触り、ステータスを見て笑った。
翌日目が覚めても夢ではない。
特技など無いから、タキガワで働きながら、言葉と文字を習い、そのまま働いている。
みんな、こんな話にも、慣れてきた。
滝川さんの存在が、大きな支えだ。
滝川さんの話は、高木さんの話と一緒に、次回にする。
また、雑談をして、料理や飲み物をいただく。
雪乃はちょっとモヤモヤした気分になる。
明らかに、自分はイレギュラーだ。
沢井さんと鈴木さんの間は二年開いている。
でも、毎年リンダースに転移者が現れたら、それはそれで、大問題な気もする。
師匠の話で、召喚されたのは子供だ。
リンダース付近に現れた転移者は、子供という年齢ではない。
まだまだ、何も掴めない。
宿屋に戻り、お風呂に入って、気持ちを切り替える。
自分に与えられた能力を使い、情報を集める。明日は、マルト商会に行ってから、アンカ王国を目指そう。
翌日、マルト商会で獲物を売る。
魔石が溜まるなあ。
マルト商会を出たら、聖樹に移動。
最近、門を通らないな。
そこから、昨日の場所に移動する。
移動したら、すぐに飛翔して、西へ。
スピード全開で飛ぶ。
何か、かなり人外な生き物になってきた気がする。
町や村を通過して、夕方には、城壁が見えた。城壁の近くに着地。
中央大陸に近いからか、少し大きな街に見える。
明日に期待して、リンダースに戻る。
宿屋で、夕食を食べ、部屋でお風呂に入る。
最近は、服は全部ユーコ製だ。
冒険者スタイルは、注文して作って貰った。
優子さんが、この世界では貴重な、伸縮性のある生地を手に入れて、ジーンズ風なものや可愛いブラウスを作ってくれた。
凄く嬉しい。
師匠の服は、大切に仕舞ってある。
まあ、何を着ても、大きなローブで隠れちゃうけど、気に入った服を着るのは嬉しい。
翌朝は、朝食後、冒険者ギルドを覗いて、門を通る。
聖樹に移動して、恵みを受け、泉の水を汲む。
アンカ王国の街の前まで移動。
門を通る。
冒険者ギルドを探して、観光案内所代わりにして、地図を貰った。
ここは、アンカ王国の王都アントスらしい。
図書館を探す。
かなり立派な図書館で、残念ながら貴族専用だった。
仕方ないから、港を見に行く。
船がある。帆船に見えるが、魔法のある世界だから、魔法は使わないのか、気になる。
港の近くの、夜は酒場になりそうなお店に入る。カウンターに座り、食事を注文して、退屈そうな、お店の人に話しかける。
「リンデル王国のリンダースから来たんですけど、船が沢山あって凄いですね」
「そりゃそうさ。この大陸の北じゃ、一番大きな港だからな」
「私は、船に乗ったことがないんですけど、船は何で動かすものですか」
「帆があったから不思議だろう。帆も使うが魔力も使う。でかい魔石があるのさ」
「凄いですね。乗組員は魔力があるわけですか」
「そうだ。中央大陸なんか遠いからな」
食事は、やはり海の幸。
「美味しいですね。北の海は魚も豊富でしょうし、放牧も見ました。豊かな土地なのですね」
「まあな、昔はもっと栄えてたらしいがな」
ご馳走さまと言って、支払いをする。
店を出たら、街を観察しながら、門へ向かう。北の三国は、いつでも来られるようになった。
門を出たら、北の森で、狩りや採取をする。
夕方、聖樹に寄ってから、リンダース前に移動。門を通過して、宿屋に戻る。
夕食を食べて、お風呂に入る。
ユーコ製のスウェットを着て、寛ぐ。
最近は戦闘が少ないけど、ステータスはどうなってるかな。
ユキノ、19歳
職業、冒険者、ランクA
レベル、450
体力160000
知力160000
俊敏160000
魔力160000
スキル、【体術】【短剣】【剣】【槍】【言語理解】【文字認識】
【魔法】火、水、風、土、雷、氷、
聖、闇、無、時空、重力、付与
微妙に上がってるな。
中央大陸を目指すために、頑張ろう。
▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶▶
薄い灯りがともる、部屋の中、美しい黒髪に黒い瞳。
この世の者とは思えない美女が、豪華な装飾の部屋にいる。
歳の頃は分からない。
豪華なベッドに横たわり、数人の男たちが纏わりつく。
意にも介せず、冷たい声音が響く。
「滝川、その女は危険ではないのか」
「いえ、馴染んだ衣服、料理。他の者と変わりはありません。満足の中に埋もれるでしょう」
「ふん、つまらん。私の欲望を満たす者は現れんのか」
「ここにいる皆、あなたの下僕です」
「一時の快楽にも飽きるものだ」
「我々も尽くします故、どうか、お腹立ちなさいませんように…」




