序
異世界に転移。
私の妄想世界です。
よろしくお願いします。
理不尽だ。
この世は理不尽に満ちている。
当たり前だろうと思う気持ちもある。
誰もが幸せで、理想や目標に向かい、邁進する。そんな世界は有る訳が無い。
しかも、不幸や不遇な人たち、生きることすらままならない人たち、死にたくも無いのに死んでしまう人たちがいる事も、理解している。
自分の感じる理不尽なんて、ちっぽけな物でしかない。
怒りや憎しみ、不満、自虐、どす黒い気持ちに溢れる自分など、取るに足りない存在だと頭では分かっている。
努力はしたか?
してきたつもりだった。
誠意はあったか?
持っていたつもりだった。
それでも、今、黒い気持ちに溢れている。
自分の心にこれほど醜いものがあったとは気付かなかった。
消えてしまいたい。
そう思い、今立っているのは山のなかだ。
こんな事をしても何にもなりはしない。
けれど、もう、行く場所も思いつかない。
黒い気持ちを持て余し、それをぶつける事ができないのも分かっている。
夕暮れの山のなかを彷徨う。
何時間歩いただろう。身体は疲れを訴えている。
無駄に鍛えた身体だ。
鍛えたその先の目標はもう無い。
信頼した人たちもいない。
適当な木にもたれるように座る。
本当はもっと何処か遠い場所、海外の砂漠にでも行きたい気分だ。
でも、そこまでのお金も無い。パスポートを取るにも、未成年だ。
あの親たちが協力するはずも無い。
消えてしまいたい。
死にたいというのではない。
自分の存在が疎ましいのだ。
どす黒い心を抱えた自分を、そうなっていく自分に目を背けていただろう自分が。
目を閉じた。
頭のなかは、鬱陶しい思いばかりだ。
『その世界から消えたいか?』
頭のなかに、響く声が問う。
自問自答なのか?
「消えてしまいたい」
『なるほど、怨嗟に満ちた心…それは己にしか向かわず、己にしか晴らせぬようだ』
「…!?」
『面白い。世界を渡らせよう』
目を見開き周りを見るが、何も無い。
何も…地面も草も、木々も…何も無い。
「何!?誰なの!?」
今まで座っていた地面の感触は無く、無機質な空間に、座っている。
いや、座っているのかも分からない。
『怨嗟に満ちた人の子よ。己の知らぬ世界で生きて見せよ』
『無論、そのままとは言わぬ。それでは生きてゆくも難しく面白くも無い。力をやろう。その力、何に使うのか、見せて貰おう』
空間から、不意に現れた物が、左の手首にカチリと音をたて、はまる。
目の前の空間に浮かび上がる文字。
まるで、ゲームのステータス画面のようなそれに書かれているのは…
塔ノ沢雪乃、18歳
レベル、1
体力100
知力100
俊敏100
魔力100
スキル、【体術】【短剣】【言語理解】【文字認識】【魔法】火、水、風、土、雷、氷、
聖、闇、時空、重力、付与
『全てくれてやった。存分に使い、楽しませて貰おう』
「何を…!?あなたは誰!?」
『また会うやも知れぬが、今は、行け』
「…っ!?」
無機質な空間が歪む。
放り出されたような感覚。
意識が途切れた。
序文なので、続けて一話を投稿します。