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辺境の将

 人影は十人程である。皆、乗馬し遠くルピナス王都を見つめている。


 ここは辺境の地。


 一年前アリッサムの護衛を任されていた隊の長ガロは、この地に追いやられていた。王都の状況を人づてに耳にすることが出来たのは、追放されてすぐのこと。圧政の噂がすぐに辺境の地まで及んだのは、それほどにブリアの横暴が酷かったからだ。


 だが、アリッサムの生死はわからなかった。聞こえてくるは圧政に苦しむ声のみ。


「アリッサム様……」


 呟いた声は風に流される。


「ガロ様、やはりこれだけのようです」


 ガロは集まった将を見渡す。先程と変わらず十人程。戦が始まったと同時に、アリッサムの守護隊であった者たちに招集をかけたのだが、三十程いた隊の内、集まったのは十人程である。


「遠方は間に合わないだろう。それに新任八人は諦めている。潜入までに後十人は合流出来よう。


我らは瑠璃隊だ。イキシア王が自ら選別した隊だ。皆、その想いは継いでいるはず」


 ガロは一人一人に視線を投げる。集結した者たちは頷いて応えた。


「……ガロ様……様」


 小さく聞こえた声の方に皆が視線を移す。土煙が上がる。すぐにそれらはガロの元に到着した。


「遅れました!」


 ガロはピクリと眉を上げた。ついさっき諦めていると言った新任たちが、三人もそこにいた。新任と言っても、一年前瑠璃隊二十に新たに配属された八人の者。着任一週間後にイキシア王は急逝し、解散となった者たちである。そのため、ガロは新任八人の集結は諦めていた。


「お前たち……」


 続く言葉は出てこない。


「残り五人は小国五ヵ国に潜入しています。伝達はシキ鳥です」


 ガロはさらに言葉が出てこない。まさか新任八人がすでに集結し、なおも動いていた。それも気がかりであった小国に潜入していると言うのだ。


「ガロ様、さすがイキシア王が選んだ者たちですな」


 古株の瑠璃隊の一人が愉快に発した。


「よし! お前たちは本陣に入れ。その代わり……」


「我らが行きましょうぞ」


 先ほど声を発した古株が前に出た。その脇に一人ずつ。正に三人の古だぬき。


「我らは第一線より、後方が良いでしょう。ブリアの死に体をしかと見届けましょう」


 そう言ってすぐに三人は駆け出した。ガロは口角を上げて見送った。


 そう死に体だ。


 ガロは信じている、アリッサムを。例え生死がわからずとも信じているのだ。


『瑠璃の女神を』


 遠く離れた辺境の地、動き出した将たち。その瞳が見つめるはルピナスにあらず。小国、ブリア、そしてネリア。もちろんグラジオラスもである。


 将はどこに向かうのか?


 一年前それはすでに決まっていた。

次話更新明日予定です。

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