ラカス vs リュウト - magician vs human -
リュウトはいつもの様に拳と蹴りを酷使して突っ込んで行く
しかし相手は兵士として戦いを仕事にし、門番まで務めるプロ
胴体から腕にかけては鉄の鎧を身に着けダメージを与えられる場所はピンポイントで顔面のみ
ラカスはそれを知ってか知らずが殆どの攻撃を避ける
偶にガードで受けるがすぐにカウンターの拳を腹部に入れよろけるリュウト
「鎧を脱いでやろうか?少しはハンデが必要みたいだからな」
「やかましい!そんなもん来てようが関係ねえんだよ!」
ひたすら突っ込み今までの経験を生かした喧嘩を披露するリュウト
それを見ているライムとウェンズだが
ライムは胸の前で手を組み不安げな表情で見つめる
「ウェンズ、あれはちょっとリュウトが不利なんじゃ……?」
「いやぁ~リュウト君カッコいいねぇ!脱げとは言わずに着けてていいなんて」
「ウェンズ!そんなこと言ってたって、リュウトがやられっぱなしよ!?」
「ん?リュウト君が不安かい?でも彼は戦いに慣れてるみたいだし、どんでん返しが来るかもよぉ?」
「リュウト……」
ひたすら拳を振り回しラカスに向かっていく
ラカスはそれをかわし、反撃する。そんな攻防が繰り返されていた
そしてリュウトが左手を思いっきり引き強く前に出す
その腕を掴みラカスは自分の方に引きリュウトの顔面を一発殴る
リュウトは後ろに体を反る様に倒れ勝負は決まった・・・
---舐めんなよ---
微かに聞こえる声で呟くとリュウトは倒れる直前、片腕を地面に着き
そのまま伸ばした足をラカスの足目がけ振り回す
足を掛けられたラカスは仰向けに倒れ込みそれと同時にリュウトが馬乗りになる
「歯を食いしばれ」
「なっ!?」
ドッ!ドッ!と鈍い音と共にリュウトはラカスの顔面に拳を何発も叩き込む
「ははっ!どうしたぁ?そんもんか!」
リュウトは笑いながらその拳を休める事無くラカスの顔面をひたすら殴る
「クソガキガァ!」
そう言うとラカスの周りの芝生が伸びリュウトの体を締め付け投げ飛ばした
「いってぇなぁ、なんだよ今のは!?」
「はいはぁ~い!そこまでだよお二人さん」
ウェンズが止めに入りラカスの元へ歩み寄る
起き上がり顔を抑えるラカス
その顔は目に痣が出来ており鼻から血が流れ、歯も2本ほど折れていた
ライムはリュウトの元へ駆け寄った
「リュウト!大丈夫?怪我はない?」
「あぁ?俺よりアイツの方だろ?歯も折ってやったしな。はは、ざまぁみろ」
笑いながら左の手を広げるとそこにはラカスの歯が2本あった
「きゃぁっ!!!」
軽く悲鳴を上げ仰け反るライム
「ん?おい大丈夫か?」
「はっはっはぁ。リュウト君、なかなかいい動きをするねぇ。プロ相手に魔法を使わせるなんてねぇ」
「魔法?今の芝生が伸びたやつが魔法なのか?」
「彼はねぇ、木の魔法使いで草や花も操ることが出来るんだよ」
「そんなのありかよ。まぁそれがなきゃ勝てたけどな」
「これまたあまり驚かないねぇ?」
「この世界に飛ばされた時点である程度は呑み込む準備は出来てんだよ」
「なるほどぉ。で、だ。今回君と彼をいきなり戦わせたのは君にも魔法を覚えてもらいたくてね」
ウェンズは魔法についてある程度を説明した
人間には誰しも気力があり聖気と魔気の2種類に別けられる
聖気は太陽の下で強く、魔気は月の下で強い。それ以外の違いは無い
人間は魔法使いとなり火、水、土、木を操る事が出来る
魔人は魂憑依となり動物の魂を憑依させ同じ様な身体能力を身に着ける
魔人は2種類に分けられる事無く気力事態が体力|(生気)と連動し、
命の危険が近くなると使えなくなる
「この気力を測るには心の底から絶望や恐怖、罪悪感や失望などの負の感情を出さなければならない。そしてそれを見定める方法はその物に初めての魔法をぶつける事だ」
「待てよ。俺は今の喧嘩で何も感じてないぞ」
「お前じゃない。俺が感じた」
さっきまでただ話を聞いていたラカスが話に入ってきた
「気力を測られる側だけでなく、測る側が負の感情を感じた場合でも成立する」
「ほぉ、いったい何を感じたんだ?」
人を馬鹿にしたような薄笑いを浮かべリュウトは聞いた
「落胆だ。お前の様なガキに殴られた俺自身に対して落胆した。だから魔法を使った」
「ちっ。つまんねぇな。そんな事かよ」
「それで?リュウトは魔法が使えるのかしら?」
同じく今までただ話を聞いていたライムが話に入ってきた
「無理だ。普通なら最初に受ける魔法に対し、どんな強力な魔法だろうと無条件で無効化する。普通に攻撃を受けたお前は魔法が使えない」
「そっ、そんなぁ!?」
ライムはそんなはず無いとウェンズにもラカスにも言うが
当の本人であるリュウトはさほどショックを受けていなかった
それどころか……
「それならそれでいい。使えないまま、お前をもう一度ボッコボコにしてやんぜ」
そろそろ新章の準備です