King of Zipang
「懐かしい人を連れて来てくれたようだ」
「懐かしい人?」
「まぁまぁ、まずは私の自己紹介をしようかな?」
ソファーから体を起こし、座ったまま語り出す
「私の名はデイ・オール・ウェンズ。現ウェンデ国の王だ。歳は39で特技は特に無い。趣味はまぁ寝転がってぼーっとすることだな、あとは何か知りたいことあるか?」
「いや、結構ラフだな。もっと堅苦しいと思ってたぜ」
「皆そういうの、でも話してみると気楽で皆戸惑うわ」
「まぁまぁ、気楽な方がいいじゃないか?ん?そして今日はどうしたんだい?」
「あっ!実はね……」
「俺が話す、俺はこの世界とは別の世界から来た。信じるか?」
「まぁまぁ、私は疑いから入るのは好きじゃないんでね。信じるよ。異世界人君」
「もー、まずは名前でしょ?」
肘で脇腹を突かれ「あっそうか」という感じで名を告げた
「ところでウェンズ王様、さっきなんで懐かしい人って言ったの?」
「まぁまぁ、畏まってそんな風に呼ばなくてイイからさ、ウェンズでいいよ」
「じゃぁウェンズ!同じ質問するがさっきなんで……」
「君はダメ!」
今までとは違い、優しく穏やかな目は細く、研ぎ澄まされた様な視線へ変わった
「ライムはね、私が拾って育てた子だから呼び捨てでいいの。初対面の君にまで許したら王の威厳なくなっちゃうでしょ?」
「あーそうかよ、でなんで懐かしいんだ?」
「あれま!あんまりビックリしないのねぇ?既にライムから聞いたとか?」
「ううん。私もビックリすると思ってた」
「いいだろそんなの!別に気にしねぇよ!いいから話を進めろ!」
「まぁまぁ、その様子だと本当に異世界から来たんだね。王にそんな態度とる国民はいないよねぇ」
「せっかく連れてきたんだから!失礼の無い様にしてよ!」
「あっ!!そうそう、ライムの事さっきメイドのアンちゃんが呼んでたよ?中庭にいると思うから行ってあげて?」
「私に?なんだろ?ちょっと行ってくるね!リュウト!失礼の無い様にね!」
部屋から出るライム、柔らかい雰囲気はそこから消え重たい空気が流れる
「とりあえず座りなよ、山口くん」
言われるがまま、ウェンズが座る前のソファーに腰を下ろすリュウト
少し目を閉じてからウェンズは口を開いた
「君はいつこの世界に来たんだい?」
「昨日だ」
「そうか。懐かしいと言ったのはね、君が日本人だからだよ」
「日本を知ってるのか!?」
「私の日本名は海馬武人。元日本人だ」
「じゃぁ!?あんたも飛ばされて来たのか!?」
「飛ばされ?君はこの現象を飛ばされたと呼ぶのかい?私はね、転生したと思っているよ」
「転生?」
「君はこの世界に来る直前何があったか覚えているか?私はね、トラックに轢かれたよ」
「俺と一緒だ・・・!!!」
「そうか、ならこう考えなかったか?死んだって」
リュウトの脳内を走馬灯の様に駆け巡る事故の瞬間
白い視界の中を思い出す・・・
「声が聞こえたんだ、今思い返すと女の声だ、だけど、その声を俺は知らねんだ」
「声か。私は25歳の時に事故にあった。そして気が付けば前王の腕の中で赤子として抱かれていた。その時私は生まれ変わったと思ったんだ。」
「俺は俺のままこの世界に来たのに、あんたは赤ん坊になってたのか……」
「そして私がこの世界で21歳の時、ライムを拾ったんだ。」
「あんたは……あんたはこの世界に居続ける気なのか?帰ろうとは思わねぇのか?」
「言ったろ。転生したんだと。だから私はこの世界を受け入れ、そして王として生き続ける。私の新たな人生だ。」
「そうか、もし仮に転生だとしても、俺はまだ受け入れがたい」
「すまんな。帰る手段など模索した事もない。ゆえに手助けとなる様な事は何も知らない。」
ウェンズが日本から来たと知り一瞬感じた希望はすぐさま心の闇へと消えていった……
「だが、私にも声は聞こえた」
「!?」
「しかし、私の場合は声の主がすぐに判明した」
「誰だったんだ?」
「アリガトウ。そう聞こえた声は前王であり、この世界の私の父の声だった」
「てことは!?俺の聞いた声も、こっちの世界のヤツの声って事か!?」
「私と同じであれば、そーだろうな。」
「そうか。なら、その声の主をまずは探してみるわ」
闇へ消えた希望が再び見え始めた
それはまだ微かだが、ここに来るまでとは違う、まるで少年が将来の夢を語る時の様に目は輝き、飛び方を知った鳥の様に体が軽くなった
「まぁまぁ、君の生き生きした顔を初めて見たよ。さっきまでは石像の様にカチカチだったからね。いい顔するじゃないの」
「まぁな、やれる事が見つかってとりあえず目標ができた。日本にいた頃の俺には目標もやる事もなかったのに」
「そうか、それよりそろそろライムが戻ってくる。嘘って気づく頃だからな」
「嘘?なんで嘘ついてまで追い出したんだ?」
「あの子には私が日本人だって言ってないんだ。もちろん他の誰にもね。これは私と君だけの秘密だ、いいね?」
「あ、あぁ、」
ガチャンとドアが開きライムが「騙したぁ~」と言いながら入ってきた
それと同時に雰囲気はまた柔らかさに包まれた