First time sleep
「そ、それじゃぁ、私の家に泊まりなよ!!!」
「はい……?」
胸の前で両手を組み顔を少し赤らめていた
おそらく必死に考えた挙句とっさに出した答えだった
「いや、そこまで世話にはなんねぇよ。それにおめぇの家族だっていきなり意味不明な奴付いて来たら困るだろ?」
「それなら大丈夫!私は一人暮らしだから!」
「それよぉ……なおさらダメだろ?いいよ、そこまでしなくて。あとは一人でなんとかなっから」
「私の家に泊まるのが嫌なら、それじゃあ宿代を私が」
「分かった分かった!!金なんか受け取らねぇぞ!俺はおめぇの周りの目を気にして言ってんだよ」
「周りの目 って……別に今だって誰も私たちの事気にしてないじゃない」
「分かったよ。じゃぁわりぃけど今日一晩泊めさせてもらうわ」
「うん!!!」
今まで友達なんか出来なかったリュウト
まして女の子と話すなんて数えるほどしか無い
緊張と恥じらいが溢れ道中の言動はたじたじ
それと同時に違う世界にいる今、現実の自分は一体どうなっているのかを考え、複雑な気持ちでいた
「ここよ!ここが私の家!」
「マジ!?一軒家かよ……金あんだなぁ」
「違うわよ、借家よ!しゃ・く・や!繁華街からも遠いし周りは全部家だから家賃も安いの!」
「へぇ~」
「ささ!玄関の前で立ち話も何だから中へどうぞどうぞ!」
レンガと木で出来た二階建ての家
玄関を開けると4人サイズのテーブルにキッチン、バスルームに大きめのクローゼット、2階へ続く階段
2階は部屋が3つあるが使ってるのは1部屋で寝室
「あなたお金が無いってことはこっち来てから何も食べてないんでしょう?」
「あぁ、そう言えばそうだな。言われてから急に腹が減ったなぁ」
「あまり得意じゃ無いけど、何か作るわ!そこで待ってて!」
「あ、あぁ。」
イスに座り、キッチンに立つライムの後ろ姿を眺めた
-友達っつうのはこういうもんか-
誰かとこんなに近くで接する事は今までじゃ考えられなかったので
そう言う意味でリュウトは、ココに来た事を少し良かったと感じた……
食事も終わり入浴を済ませ、あとは寝るだけの状態
ライムに寝巻きとしてバカデカいワンピースみたいなTシャツを借りたリュウト
タオルの様な生地の寝巻きに着替えたライムは寝床を用意すると言い2階へ上がる
「リュウトォー!あがってきてー!」
「あっ、あぁ」
初めて他人から名前を呼ばれた
喧嘩相手だった強羅から名字を呼ばれた事はあるがそれとは違い、優しく、明るい
緊張し、ぎこちないまま階段をゆっくり上がる
声のする部屋を開けるとそこにはキングサイズの大きなベッドがあり枕が2つ置いてあった
「なっ、なっ!なぜそーなる!!」
「なんでって、なにが?」
「同じベッドで寝るのかぁ!?」
「だってベットは1つしか無いもの」
「だったら俺は1階で寝る!だいたい同じ部屋って時点でヤバイだろ!?」
「なにがヤバイのよ?1階にはベット無いもの。ソファーも無いしー、床は木で固いわよ?」
「じゃっ、じゃぁ掛ける物だけくれ!ベットの横で寝る!この部屋なら床はカーペットだからそれでいい!いや!そーしてくれ!」
「そう?まぁいいけど。なにをそんなムキになってるのよ?」
枕とタオルケットを受け取り床に横になるリュウト
ベットの上で仰向けに目を瞑るライムを横目に確認し天井を見る
---いったいこの後どうなんだよ。
独り言を呟き目を閉じようとすると
ゴソゴソとシーツの動く音
ライムの方を振り向くと、同じくこちらを見つめるライムと目が合う
「いっ!?なっ、なんだよ?」
「このあと……どーしたいのよ?」
「は?え?あっ!いっ、今のは別に変な意味じゃねぇぞ!」
「変な意味ってなによ?リュウトはこの国で、ううん。この、世界でなにをしたいの?」
「あ、あぁ。とりあえず帰る方法を探さなきゃな。ココにいても俺はやることねぇし、金もねぇしな。おめぇにもこーやって迷惑かけてるしな。」
「……なまえ」
「あ?なまえ?」
「私の名前教えたんだから!名前で呼んでよ!」
「あー。えーと、ライム?」
「なんで疑問系なの?」
「わーったよ!ライム!分かりました!」
「よしよし!」
「なんなんだよまったく……」
突如飛ばされた異世界においてリュウトは
初めて眠りについた。