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ダニー・G  作者: 井上陽介
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目を覚ましたとき、どこか不思議な感じがした。

もの凄く寝坊したみたいな、そんな感じ。


「ああ、気が付いたみたいですね。ガーランドさん」


白衣を着た天使がそこに立っていた。金髪の若い美人看護師。

俺の好みだ。胸のふくらみがたまらない。


「何? 俺ってもしかして助かっちゃった?」


その看護師は何か納得したような表情をして、二度三度、頷いた。


「今、担当の医師を呼びますので。少しだけ、お待ちくださいね」


医者より君がそばにいてくれた方がいいんだけどなあ。

自動ドアが開いて消えていく看護師のヒップに目をやりながら俺はそんなことを思う。

俺の体には何本かの管が通されていて、その先で電子音が聞こえる。

何かのモニターでもあるのだろう。体を起こしてそれを見てみる。

確かに見慣れた脈などの線がそこには見えた。

しかし、モニターが無かった。それは空中に浮かぶ画面に線を描いていた。

何だ、こりゃ。


そしてその隣には銀色の丸い頭に目のようなものが2つ、口のような物が1つついた出来損ないのロボットみたいなものがあった。体の部分は細いが、人間のように手足が2本ずつある。その先には指らしきものもあった。

試しにその銀色の頭を指で突いてみた。


「何のご用でしょうか? 現在、脈拍等の全ての状態は正常です」


うおっ、こいつしゃべりやがった。しゃべると目の部分が黄色く光っていた。

知らないうちにロボットとかは実用化されていたらしい。

空中ディスプレイみたいなものも。

周りを見渡してみると、どれも今まで見たことの無いような物ばかりだった。

最新技術の結晶って感じだ。

どうやら俺を生かすために、随分と金を使ったらしい。


俺ってそんなに重要な人物だったっけ? いや、まあ家は金持ちだけどさ。

きっと親父か祖父ちゃんか手を回したんだろう。

その時、妙な電子音がして、ほとんど無音でドアが開いた。

50代くらいの医師と思われる男が立っている。

その後ろにはさっきの金髪巨乳の看護師では無く、メガネをかけたインテリそうな女が立っていた。


「ダニエル・ガーランドさん。わたしは医師のフレッチャーといいます。お体の具合はどうですか?」


「ダニーでいいよ。体は……よくわかんねえ。俺、撃たれたよな。それにしちゃあどこも痛くないんだけど」


「それはもう大丈夫です。とっくに治っていますよ」


そんなに眠っていたのか、俺は。

急に小便などのことが気になった。誰が処理してくれてたんだろう?

あの金髪であることを祈ろう。

男の看護師とかで無いことを祈ろう。


「それはそうと先生。妻は来てないのか? 親父や母ちゃんは? ってかここどこの病院?」


フレッチャー先生は少し困った顔をしたが、すぐに後ろに立っていたインテリメガネがタブレットのようなものを取り出しながら顔を向けてきた。


「ガーランドさん。わたしはこの病院に勤めているものでルイスといいます。今から確認事項がありますので、お付き合いいただけますか? その過程でご質問にもお答えできると思います」


「構わないよ。別に忙しいわけじゃないしね。それと、さっきも言ったがダニーでいい」


「それではわたしのことはアンバーとお呼びください。それでは始めますね。まず、あなたの名前はダニエル・ガーランド。2025年3月3日生まれ。年齢は27歳。職業はアメリカ合衆国海兵隊員。ここまではよろしいですか?」


「うん。間違いないよ、アンバーさん。それよりさっきの質問だ。妻や家族は?」


「大変、申し上げにくいのですが、奥様やご両親はすでにお亡くなりになっています」


今、何て言った? この女。

ジュリアや親父たちが死んでるって? 

一体、俺が寝ている間に何が起こったんだ?

いや、これはおかしい。どう考えてもおかしい。

もしかして俺は死んだのかもしれない。

ここは地獄かなんかで、こいつらは俺に嫌がらせをしにきているのかも。


「おいおい、アンバーさんよ。冗談はやめてくれ。死にかけてたのは俺だろ」


「はい、それは間違いないのですが。残念ながら冗談ではありません」


「じゃあ、死因は? 何でみんな死んでるんだよ」


俺はこの時点でこのアンバー・ルイスという女を嫌いになることを決めていた。

さっさとさっきの金髪に代わってほしい。


「お父上と奥様は病死です。お母様は老衰ですね」


「ふーん」


この女。リアルな理由にすれば信じるとでもおもっているのだろうか。

大体、母ちゃんはまだ50代だ。50代で老衰っていつの時代だよ。


「まずこちらをご覧ください」


そう言ってアンバーがタブレットを操作すると、妙なものが目の前に現れた。

親父が目の前に立っていた。正確にはハーフサイズの親父だ。


「記録ホログラムです。お父様がお残しになったものです。他の方のもありますよ」


冗談にしては手が込みすぎている。目の前の親父はこちらに向かって笑いかけてる。本物じゃ無いのはわかっているが、俺もつい笑い返してしまう。


「ダニー。ひどく驚いているだろうね。生きているうちに会えればよかったのだが、わたしも体を壊してしまった。わたしはもうすぐ死ぬだろう。お前はわたしの宝物だった。今となってはわたしのした選択が正しかったかはわからない。でもね、どうしても諦められなかったのだよ。こんな結果になってしまって残念だ。お前にもう一度、会いたかった」


何が何だかわからなかったが、気が付いたことが一つある。

この親父は、年を取り過ぎてる。さすがに自分の父親の顔くらいはわかる。間違いなく親父だが、年齢がおかしい。


「どういうことだ? これは。ドッキリか何かならもうやめてくれよ。この親父っぽいのも消してくれ」


アンバーが言われたとおりに親父の姿を消した。


「ガーランドさん。いや、ダニーさんでしたね。あなたはずっと眠っていたのです。とても長く」


「長いってどれくらいさ? まさか10年、20年ってことはないだろ?」


「そのまさかです。今年は2252年です。あなたは200年ほど眠っていたのですよ」




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