欲求とチョコレート
あたしの鞄にはいつもチョコレートが入っている。
それはあたしの彼氏がチョコレート大好きだからなんだけど。
けなげでしょう??
「由紀ちゃん!!」
あ!彼だ!!
あたしはまるで飼い主に飛び付く犬のよう。
いや,猫かな??
そんなことはどっちでもいいんだけど笑
「新二ぃ…待ってたよぉ」
部活後,待ち合わせして一緒に帰るのが日課なあたしたち。
ちなみに新二はバスケ部。あたしはサッカー部のマネージャー。
お互い部活で忙しい分,共通の時間は超大切!!
新二にはファンも多いから,ギュッと抱きついてファンを威嚇する。
シャー!!!
なんちゃって。
「由紀ちゃん…恥ずかしい//」
照れてる新二,
かなり可愛いんだけど!!
さっきのあたしの渾身の威嚇でファンはいなくなっていて,待ち合わせ場所の下駄箱に02人きり…
このシチュエーションじゃあ…
あたしが新二を襲っちゃいそう///
でもそこは抑えないと★
我ながら頑張った!
あ-…あたし日々壊れていってるみたい。
昔は男の子となんかしゃべることすら無理だったのにな。
新二はそっと身体を離して,あたしの乱暴に手を握って歩き出した。
早歩きで大股でつかつかと歩く新二。
小走りでとことこついていくあたし。会話はない。
…なんか
怒ってる!?!?!?!?
シャーっていう心の雄叫びが聞こえたのかな;;
抱きついたのが悪かったのかな;;
急にしゅんとするあたし。
さっきまでのテンションの高さはどこへやら。
我慢できず,
「しん…」
「チョコレート食べたい」
声をかけようとしたあたしの声と振り向いた新二の声がかさなる。
「チョッ…チョコレート?」「うん。なんかおなかすいたから。」
立ち止まり慌ててスクールバックからチョコレートの箱を取り出す。
小さなものが小分けになっていくつか入っているタイプのもの。
味はミルクチョコレート。
小分けの袋のまま新二に渡す。
「は-い。」
「あ-んって俺の口に入れてよ。」
ん??
んん??
んんん??
あ-ん??????
まさか…
「ほら早く♪」にこにこ笑顔の新二。
なんか黒いオーラが見えますが…
あたしは包み紙をはがした小さなチョコレートを新二の口へと運ぶ。
ぱくっ
…やられた!!!
指が…
新二の口のなかに…
ゆっくりと溶けるチョコレート。
舐め回されるあたしの指。
「由紀ちゃんの指冷たい」
そりゃ冷え性ですから♪
指は返ってきても,あたしのどきどきは止まらなくて。
なんだか物足りなくて。
なんだか物足りなくて。そんな黙り込んでいるあたしを新二はじっと見つめている。
「由紀ちゃん??」
あたしの中には言葉にできない気持ち。
恥ずかしくて言えない!!
「新二…大好きだよ」
言いたかったこととは違ったけど
精一杯頑張りました。
「俺もだよ」
もう一度あたしの手を握って歩き出す新二。
ねぇ新二…
今日は言えなかったけど
今度は
その舌で
あのチョコレートみたいに
あたしを
溶かして…?