桜花組 大谷佳織
あれは18年前―――――
時代は江戸。まだ徳川幕府が政権を握っていた頃
文久3年12月 京の都にある新選組屯所
葵たち桜花組が入って三日目のこと
未来逆賊の汚名をきせられ斬首となる桜花組局長、大谷佳織の一日
************
桜花組局長、大谷佳織の一日は彩と葵の喧嘩し、それを蛍が止めてから始まる。
佳織は着替えてすぐ新選組局長、近藤勇を起こしに行く途中
向こうからのそのそ歩いてくる黒服の長身の男性が見えた
「あ!土方さんおはようございます」
向こうから歩いてくる黒服の長身の正体は副長、土方歳三だった。
彼は低血圧なため朝にものすごく弱い。今も色男がだいなしなほど顔の色が悪い
「…ん…あぁ、大谷か、近藤さんなら五月蝿いほど大イビキで寝てるぞ。…それより紅はどこだ?」
近藤のイビキに苦笑していると質問されてしまった
紅とは桜花組副長、土村紅のことである
たしか、総長の山南に呼ばれていたような…
「紅ちゃんなら山南さんに呼ばれて部屋に行きましたよ」
言うと少し考えるそぶりをし、お礼を良いながら総長の方角へ消えていった
佳織にはしっかりと近藤を起こす仕事があった
局長室前
ゴーゴーゴー
もの凄い音がしていた
「クスクスこれじゃあ土方さんも起こされちゃうか……近藤局長、朝でございます」
中に声をかけるが動く気配が感じられない
本当に困るところである
成人男性の部屋にあまり入りたくなかった特に近藤の部屋は。
あれであるカレー臭の臭いがするのである
「大谷?」
「あれ?佳織ちゃん?」
どのくらい局長室前にいたんだろ
参謀室にいたはずの土方と紅が後ろにいた……いや、もう二人いた。
土方と紅両者に襟をもって引っ張られる一番隊組長、沖田総司と同じく桜花組一番隊組長、荻川彩だった
まぁ、ここ二日同じ光景を見てるから理由は分かった
「近藤局長朝ですよ~」
スッパーン!!
慣れたように紅の手からすり抜け大きな音を立てて局長室の障子を開けた
それから近藤は起き広間で朝食を食べまた局長の手伝いに行くのだが……一日の半分は話で終わってしまう
夕食の時間がきた
「お腹すいた~」
紅が土方と共に最後に入ってきた
いつも紅は何をやっているのか土方以外知らなかっ
全員で夕食を食べ始めた
「ギャ~!!!!!!俺のだけ蝸牛入ってんだけど!?」
虫嫌いの藤堂平助の箸につかんであるのはどう見ても蝸牛だった
たぶん飾りの紫陽花に付いていたのだろう
「葵どこかにやって……」
平助は涙目で隣で食べてる葵に蝸牛を向けたが嫌だと言われてしまった
見たくないはずなのに横にそっと置き食べ始めた
「皆食べ終わったなら部屋に帰ろ」
蛍が立ち上がるのを見て他の桜花組の面々も続いて出ていった
「今日楽しかったよね千紗」
葵と千紗は今日の出来事を楽しそうに話していた
「佳織、今日近藤さんどうだった?」
蛍と佳織もてもた楽しそうに歩いているのを藍、彩、紅は見ていた
「紅、一体土方さんの所で何やってんの?」
彩はくるりと紅の方に向きを変えて紅の目をしっかりと見つめた
「……なんのこと?」
一瞬真顔になっていたがいつも通りの笑顔で返された
紅はそのまま目線を彩から佳織に向けた
ふと目が合ったのを感じて反らそうとすると
「紅ちゃん、ちょっと二人で話さない?」
佳織が蛍と別れて紅の前に立った
桜花組の局長と副長が顔を見合わせて立っているのを遠くで見ている隊士たちは何かが起こるのかと隠す素振りもなく堂々とこちらを見ていた
「………ん~今日はもう眠いし明日にしない?」
緊張している周りと違い軽く手を振って部屋の中へ入っていってしまった
蛍と葵はそんな二人の態様に唖然としていた。
平成にいた頃はあまり関わっていなかった二人がこの時代に来て二日で関係が変わっていたのだ
周りで見ていた隊士たちも何事もないと分かるとそれぞれの部屋へと帰っていった
「紅ちゃん……歳、お前なのか?―――」
佳織の声は降り始めた雪にかき消されてしまった
後に逆賊として斬首される大谷佳織、この時14まだ四年後のことなど考えてなかっただろう
大谷佳織、彼女の本当の姿は一体何なのだろうか……
それはまだ葵たちは教えることができなかった。否、思い出すのが恐かったのかもしれない