話してあげるよ
言い張った葵だったが・・・
「穂香ちゃん、反応薄くない?もっと驚いてくれないと悲しいんだけど」
葵は穂香の前に屈みこみながら顔をみていた
穂香はそっちの方に驚きが大きかった。ってか先ほど会った少女たちが桜花組の副長と三番隊組長だと言うことが未だに理解ができず混乱していた
そんな穂香を見かねた蛍
「葵ちゃん、穂香ちゃんは紅ちゃんと藍先輩のことでまだ混乱してるんだよ」
葵の肩に手を置き穂香の心配をしてくれた
それを見ていた義衛と五郎は苦笑をしながら見守った
それから少し待ち
「少し、頭の整理させてください。えっと、杉田さんが新選組二番隊組長永倉新八さん、藤田さんが三番隊組長斉藤一さん。そして東宮葵さんに藤田蛍さん」
そこまで言うと葵と蛍はただただ笑っているだけっで感情がつかめなかった五郎と義衛もただ首を縦に振るだけだった
「そして…私をここまで案内してくれた少女たちがここ北海道で亡くなれたという桜花組の土村紅に斎田藍」
この二人の話になると四人は悲しそうな顔になる
一体、土本紅と斎田藍とはどんな人物だったのだろうか…
先ほどもっと話しておけばよかった、そんな後悔の気持ちが自分の中からこみ上げて来るのが分かった
その感情が表情にも表れていた
それを見た四人は少し困った顔をした
「私も会いたかったな……紅の馬鹿野郎!!」
葵は吹雪の中の庭先を見つめポツリと言ったが最後だけはものすごく大きな声だった
だが、それには誰も答えない
ただ沈黙が続いた
「はぁ、穂香ちゃんごめんね?さ~て、どこから話そうか」
葵はすっと立ち上がり広間に飾られていた八振りの刀の中で鞘が鮮やかなだいだい色の刀に手をかけた
刃を抜くと手入れされていてとても誘われるような輝きを放っていた
「この刀を初めて持ったときは周りに沢山の仲間がいたな…さて、先ずは佳織ちゃんの印象を変えないとね?」
そう、あれは18年前、今でもめを閉じればあの頃のことを思い出す
「大谷佳織、桜花組の局長でありながら新選組局長近藤勇よりも権力を持って、明治新政府軍を最期まで反発し続けた女性」
穂香が今まで聞かされていた悪名高い大谷佳織の人物像
しかし、目の前にいる桜花組のものを見ているととてもそんな人について行くようには見えない
「やはり新政府はそんな風に流していたのか…」
今まで黙っていた五朗がポツリと下を向きながら言った
そんな五朗を見て
「佳織ちゃんか、懐かしい名前だな。佳織ちゃんは誰にでも優しくおっとりしているように見えて結構負けず嫌いで剣術で負けるとひたすらに素振りしてたっけ」
義衛は目を細めてどこか遠くを見ているようだった
大谷佳織、彼女の本当の姿は一体どのようなものなのだろうか――――