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幕間3 思索

 ふと気付けば口うるさい古老達が周りから消えていた。

 もっとも私は周囲で最も若い存在だった。

 したがって私の周りにいた者達はすべて古老といえる。

 突然今まで存在していた者が消えるという現象があるとは知識としてあった。

 しかし周りに存在していた者全員が消えるというのは初めて知る現象だ。

 彼らからしたら私の方が消えたのかもしれない。

 しかし私から見れば彼らの方が消えたのだ。

 私は気難しい上に短気な古老達は好きではなかった。

 彼らは重力に魂を惹かれている。

 重力の謎を解き明かすことに時を重ねてきたのだ。

 質量が時空を歪める現象それが重力だ。

 なぜ質量が存在するのか。

 質量がなぜ時空に影響するのか。

 確かに難しい問題だ。

 しかし私はそんなものに興味は無い。

 彼らの騒がしい議論に辟易していたところだ。

 古老達が消えて静かになった。

 この環境は非常に過ごしやすい。

 私の邪魔をする者は誰もいない。

 もっとも彼らが消えた事を気にしていないわけではない。

 私とて心無い存在ではない。

 今も呼びかけを続けている。

 返事を返す存在は近隣にはいないようだ。

 彼らと違い私の興味はもっぱら我々の存在そのものにある。

 我々はどうして意思を持ちえたのだろうか。

 我々を構成する要素はわずかに三つ。

 星辰も砂礫も要素に変わりは無い。

 三つの要素の数と組み合わせが異なるだけだ。

 その昔長老が斃れた時の事を思い返す。

 徐々に反応が鈍くなりやがて何の反応も無くなった。

 ある時を境に生ある者が命なき物になったのだ。

 長老の形をした物はやがて朽ちていった。

 塵芥と我々を分けるのは一体何なのだろうか。

 我々はどうして生まれてきたのだろうか。

 我々とは何なのだろう。

 静かな時の中で思索を重ねる。

 答えは無いのかもしれない。

 しかしこの思考こそが我々と他とを区別しているのだ。

 闇の世界に存在する唯一の知性が我々だ。

 知の輝きを消すわけにはいかないのだ。

 たとえ古老が死に絶えていたとしても。

 私が思索を続けている限り知は絶える事が無い。

 


★★★


「おはようございます。クロシェットさん。」


★★★


 ああ、本当に静だ。



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