幕間1 リーネの最も恥ずかしい記憶
一通り自己紹介も終わり、リーネの荷物も部屋に運び終わりしばらくたった。
「アントニオさん。」
「なにかな。」
「あの。」
「うん。」
「笑わないでくださいよ。」
「大丈夫だよ。」
「えっと。」
「なにかな。」
「その。」
「言いにくそうだね。ボクに言いにくい事ならヤマトを呼ぼうか?」
「ヤマトさんには余計に言えません。」
「そう。」
「むしろヤマトさんには内緒にしてください。」
「内緒にするよ。」
「絶対ですよ。」
「大丈夫だよ。」
「あの。トッ。」
「ト?」
「トイレの使い方を教えてください。」
「リーネは宇宙仕様のトイレは使った事無いのかな。」
「無いです。それにそろそろ我慢の限界で…」
「我慢はよくないね。ではトイレに行こう。説明するよ。」
「はい。」
「さてこのトイレだけど普通のトイレと違って吸引式になっているんだ。」
「吸引式?」
「そう。宇宙に出ると重力が非常に小さくなるのはわかるかな。」
「無重力ですね。」
「正確には微小重力というよ。さてその状態で排泄したら漂ってしまうね。」
「汚いです。」
「そうだね。そうならないように排泄した物を吸引するようになっているんだ。」
「それでどうやって使えばいいんですか?」
「真ん中にある細長いカップのようになっている部分わかるかな?」
「これですか?」
「それだね。排泄するときそこに当たるようにしてくれれば自動的に吸引するよ。」
「わかりました。」
「それと右にあるパネルは洗浄機能の操作パネルだよ。」
「はい。」
「操作はわかりそうかな。」
「大丈夫です。」
「じゃあ問題ないね。」
「はい。」
「あの。」
「なにかな。」
「アントニオさんはトイレの中も見えてるんですか。」
「ボクは船内のすべてが見えるよ。」
「見るのをやめてもらえますか?」
「それはできないよ。」
「わたし、これからトイレするんですよ。」
「そうだね。」
「見られてるのってすごく恥ずかしいんですけど。」
「そうかもしれないね。」
「わたし女の子ですよ。」
「そうだね。」
「それでも見るんですか。」
「ボクは船内を見ないことが出来ないんだ。」
「そんな…」
「ボクは気にしないから大丈夫だよ。」
「わたしが気にするんです。」
「ボクは機械だから恥ずかしがる必要はないよ。」
「でも…」
「無理な我慢はよくないよ。」
「あの。試験の掃除の時みたいに録画してたりしないですよね。」
「船内は常に録画しているよ。」
「えっ。」
「問題が無ければ消去するよ。」
「問題って。あるわけ無いじゃないですか。」
「無いとは思うけどリーネがトイレで倒れる可能性もあるし、ここに爆弾を仕掛けたりするかもしれない。」
「そんな事はしません。録画しないことは出来ませんか。」
「それも出来ないよ。」
「うぅ。」
「何も問題なければトイレから出た瞬間に動画を消すことを約束するよ。」
「絶対ですよ。」
「うん。」
こうしてリーネのもっとも恥ずかしい記憶が出来上がった。
「わたし、お嫁にいけないかも…」