入学式 3
ガラガラガラ、ドンッ!!
地響きのような音が広い体育館に響いた。
中にいた人達は驚いた様子で、入り口でドアに手をかけ息を切らしている虹子奈を凝視した。
「お、遅れてごめんなさい…」
虹子奈はリンゴのように顔を赤くし、おずおずと空いている席に座った。
その瞬間、少しハスキーな低音の声がマイクを通して聞こえてきた。
「これより、第50回入学式を開会します。ご起立ください」
という声とともに、ザッと椅子の音が鳴り響き、一斉に立ち上がる。
虹子奈は少し遅れ、慌てた様子で立ち上がった。
「生徒会員の言葉」
司会がこの言葉を発すると、舞台袖から女やら男やら、生徒会の人達が洗礼された歩調で出てくる。
しかし、その生徒会の人達が異常であった。
何故かというと、目立つ赤毛の人がいたり、青髪の人がいたり、紫髪の人がいたりしていたため、他の人とは違うオーラを醸し出してるような気がする。
その前に、これがこのような色が地毛ならいいが染めているのなら校則違反なのでは…?
それともう一つ、他とは違うところがあった。虹子奈達にはないチェック柄のケープを羽織っているのだ。歩くたびに風になびいていて、どこかかっこいい。
「(ケープ…? どこかで…?)」
その時、6人位の生徒会の人達に少し遅れて、白髪の少年が現れた。
「(あの…人…‼︎)」
虹子奈は目をパチパチと瞬かせる。
すると、舞台上にいる少年はそれに気づいたのか、またもやバラを思い浮かべそうな笑顔を虹子奈に向けた。
その容姿端麗といってもいい少年に、他の生徒は吸い付くように釘付けであった。
白髪の少年はマイクを手に持ち、深くお辞儀をした。
顔を上げたときには、さっきと違い鋭く、でもどこか柔らかい目付きで体育館の中にいる生徒を見渡し始める。
その眼はまるで、白髪ということもあるのか、やはり雪のように白い白馬に見える…。
虹子奈はそう思いながら少年をじーっと見つめる。
その時、鋭かった眼が一瞬で和らぎ口を開いた。
「初めまして。私は生徒会長の鬼島白馬といいます」
は…白馬…?
虹子奈はまさかの少年の名前に驚きを隠せないでいた。
「(本当に白馬だった…!!)」
と、わけの分からない事を頭の中でグルグル回転させる。今にも頭がショートしそうだった。
「みなさん、この度はご入学おめでとうございます。これから3年間私たちと一緒に心良い学校生活を送りましょう!」
白馬が言い終わると体育館中に拍手の渦が巻き起こる。白馬は照れた様子でお辞儀をした。
「それでは生徒会員のご紹介をいたします」
ハスキー声の司会がそう言うと、舞台上にいる生徒会の人達はザッと前に出る。
綺麗に動きが揃っていて自衛隊の人たちに見えた。
「生徒会長、鬼島白馬。
生徒会副会長、紅麗遠。
同じく、柊藍。
生徒会書記、瀬戸澄桃。
同じく、入山美碧。
同じく、黒川有栖。
生徒会会計、風魔紫遠。
以上男4名、女3名、計7人です」
深い沈黙の中、生徒会の人達はお辞儀をした__時だった。
「⁉︎」
虹子奈はビクッと肩を震わせ、後ろへ一歩下がった。
舞台上にいる生徒会全員が虹子奈に視線を向けたからだ。
まるで、7人の鋭い眼光がそれぞれ7色に光っているようだった。
「では、これからも入学式は続きますが頑張ってください」
白馬は笑顔でそう言って、再び洗礼された歩調で舞台袖へ向かって行った。
「(な…なんだったんだろう…今の…)」