入学式 2
現在の時刻…8時25分。
虹子奈と白髪の少年は、滑り込むように校門を通過した。
道中、あまり遠いわけではないのだが、急な坂道があるため2人ともヘトヘトだ。
白髪の少年は息を切らしながら虹子奈に笑顔を見せた。
その笑顔はバラを背負っていそうな、異国の王子様のような可憐な笑顔だった。
「じゃあ俺は行くね。入学式、あと10分で始まるから君も早く行った方がいいよ」
少年は学校の方へとまた走り出した。
その姿はまるで、風の如く駆け抜ける白馬のようだった。
虹子奈はそんな白馬を見送った後、とてつもなく広い校庭を歩いた。今の季節は桜も咲いていて風が吹く度、シャワーのように散る。
「綺麗だなぁ…」
虹子奈は校庭の中心に立ち、周りを見渡してみると、一面が淡いピンクの桜に覆われていて、風に揺られて踊っているように見えた。
ああ…いっそ…このままずっといた___
「ああっ⁉︎ 入学式遅れる‼︎」
虹子奈は校庭の真ん中を突っ走った。
さっきの少年とは違い、迫力が増しているせいか、猛獣のように思える。
散った花びらも虹子奈が通過するによって起こった風により竜巻のように巻き上がる。
…桜吹雪のようで幻想的だったが、その雰囲気とはぶち壊しに、虹子奈は顔面崩壊といってもいいような形相で走り続けた。