心の弱さ 5
「ごめん…いくら紫苑にでも言えない…言っちゃいけない気がするから…」
これがもし美碧さんにバレたら、勝手な事しないで!ってすごく怒られそうだし…。
「そうですか…」
さっきの強気な眼差しとは違い、子犬みたいな眼差しで見つめてくる紫苑に、澄桃は肩をすくめる。
「ごめん……」
それを見て紫苑は今までにない位の笑顔を見せた。
「大丈夫です。でも…」
今度はさっきみたいな強気な眼差しで澄桃を見つめてくる。
一体どれだけ表情を変えるのだろうか…。
「でも…?」
澄桃はそんな移り変わって行く紫苑の表情からひと時も目を離せずにいた。
「そんな落ち込んだ顔、瀬戸さんには似合いませんから…早く元気になってください…いつもの笑顔に戻ってください」
なっ…///
いつもの引っ込み思案の紫苑からは連想できない、ストレートな言葉に澄桃はパニックになり、頬が真っ赤になった。
「う、うん、ありがと…//
し、紫苑にそう言ってもらえると…嬉しいよ…//」
何言ってんの私。
という思うくらい言葉が上手く言えていなかった。
「良かったです…それじゃあ僕は先に白馬のところに行ってますね」
またもや見たことない笑顔を見せると紫苑は【回復治療室】から出て行った。
その瞬間、澄桃は既に真っ赤に染まった自分の頬に手を当てた
「あつっ…!」
熱でもあるんじゃないか。
ここは回復治療室だ。体温計でも引っ張り出して測ってみようかな、と考えたが、測る気も起きなかった。
まったく…あのいつもなら引っ込み思案で泣きそうな子犬みたいに弱々しい紫苑が、急にあんな強気になって…
「不意打ちすぎるよ…//」




