心の弱さ 2
「美碧さん、大丈夫ですか?」
そう言った澄桃は、地味に目立つカプセルマシンの横にある細長い椅子に座る美碧の肩に包帯を巻いている。
「え、ええ。こんなのかすり傷よ」
細い肩にグルグルと巻かれて行く包帯を見て、美碧は少しながら苦笑いをした。
あの少年にやられたこの傷…
しばらくは血が止まらなかった。
熱い跡が消えなかった。
あの感覚は久しぶり…いや、味わったことないかもしれない。
包帯を巻いたのも…久しぶりだ。
「よし、出来ました!」
澄桃は笑顔で美碧に言う。
締め付けられる感覚…。
少し動きにくいな…。
美碧は肩を一回転、二回転させてみたが…
「っ…!」
傷口に激痛が走る。この分だと当分動けそうにないだろう。
何だか自分が情けなくなってくる。
自分が弱いがために。
「あの悪魔は…」
「え?」
急に俯き加減に発した言葉に、澄桃は少し驚く。
「あの悪魔は…初めて見る顔だったわよね…?」
なんでそんなことを聞くのだろう。
あんなに強いなら記憶だって残るはず。それが記憶がないのなら初めて。
そんなこと自分で考えれば分かるのに…。
そんなことも知らず澄桃は笑顔で答えた。
「はい、初めて見る顔です…とても強かったですよね!」
そう、強かった。
あんなに強いのに会うのは初めてだった。
…私は世界を知らなすぎたんだな…。
「そ、そうね…」
美碧は自分の肩を撫でながら、やがて俯いた。
その様子を見た澄桃は何とか励ましたかったのであろう、満面の笑顔で怪我してない方の美碧の肩に触れた。
「でも生徒会の皆さんならきっと大丈夫です_____」
「無理ね」
俯いていたため顔は見えなかったが、追い込まれたような、追い詰められたような声だった。




